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27、徐行運転開始
しおりを挟む「トマス…もう一度確認させて欲しいんだけど。彼女は前世をどの程度覚えている?」
立太子が決まった途端にどっと増えた公務をしながら、トマス以外いないのを確認して話しをする。迂闊に話しをして、余計なことをされるのが一番始末が悪い上に最悪な結果になりうるから、ことは慎重に…だ。
「そうですね…私が確認したところでは、以前も申し上げた通り、言葉は覚えているようです。あちらの記憶も多少…ここに比べたら比較しようもなくなった安全だったとか…生前のご自分のお仕事の事はうっすらと覚えておいでのようです」
淡々と話すことを聞きつつ、書類にサインしつつ今後のことを考える。とりあえず、至急ミレーユの安全確保が最優先だ。
「ミレーユの後ろ盾としても、俺の味方という意味でも都合の良い、力のある貴族など都合よくいるか?」
そんな都合の良くいないだろうと思っていたらどうやらいるらしい。手元の書類から何枚か引き抜き机に乗せた。
「人が良い…とは違いますが、見ていられなくて手を出してしまう…そんな方です。今回の廃嫡の件については賛成ですが、殿下の立太子については静観…といった感じです」
父上のご母堂の生家、この国の武の要のヴァレリー辺境伯家。そして次に出して来たのは、現在の宰相であり国の四大公爵とはまた違った力がある…貴族としては伯爵位にあるサルバドール・ザーレ。最後に、俺の母の生家、前王陛下(俺のおじい様ってやつだ)の弟…大公の流れをくむミッテラン侯爵家。
トマスの調べでは、過去・現在と各それぞれ特に不振な動きはなく、各家も今は今は静観しているとの事。
まぁ理由は兄上が王位につくのは反対だが、俺の人となりがいまだ掴めないかららしい。
それに関しては、俺の失態…ではないと思う。この場合も兄上が悪い。
俺は王位にも権力にも興味が無いので、近寄らない・口にしない・邪魔をしない…を徹底していただけだ。その変わり味方という味方もいないけれど。
「じゃぁそうだな…母上の生家のヴァレリー辺境伯にミレーユを養女として迎えられないか打診して…ダメなら、宰相に後見に立ってもらうか」
その後、数個案を出して手回しはトマスに任せ再び執務に集中する。
それにしても……この書類、計算が間違いだらけなんだがどうしたものか……今更知識チートなんてゴメンだし、暗部にあんだけ転生者や転移者がいるっつーのに。
思わず頭を抱え…学生時代以来の筆算でひたすら計算しまくった。言うまでもなく、その筆算した紙は捨てたがな……。
新しい計算方法だなんだと騒がれるのは嫌だからな。
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