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41、先走りの婚約指輪
しおりを挟むミレーユが部屋を退出したのを見届け、先ほど話しかけたことを話し始めた。
「国王様の許可は出ているのですよ。いつミレーユ様にプロポーズされるのですか?」
呆れた声で話すトマスは、ホント嫌そうだ。
まぁ、ヘタレな俺が悪いんだけどな。
「ミレーユ様の義父となられた辺境伯からも承諾の親書を頂いております。プロ―ポーズできないのなら何も無理をせず、国王様より辺境伯家へ申し入れて頂ければ済むことかと思うのですが…」
どうにもこうにも前に進めない俺に発破をかけてくれているのは分かるんだけれど…なかなかタイミングが…。
「タイミングなんて考えているとミレーユ様を誰かに攫われてしまうかもしれませんよ。今はまだ登城して間もないことから、様子見の貴族も多いですが…ミレーユ様の商才と美貌、今となっては辺境伯家のご令嬢という身分もございます。いくら殿下の傍付きとして置いていても、もたもたしていると早々にどこぞの奥様になってしまいますよ」
ここ最近の定番と化したトマスの説教を受けながら、今日も安定の書類仕事をこなす。
「いま、宝石商に指輪を作らせている。求めている色の石が見つからなくてな……」
一応プロポーズをできない理由はあるんだ。俺なりに。
前世、結婚を申し込んだ際に作った婚約指輪。あれをもう一度彼女に贈りたい。
「前世で贈られた指輪をお作りですか?石なら後日、部下に準備させますので早々に腹をくくってください」
そう言って執務室を出て行った。
●○●○
宣言通り、トマスは縁のある宝石商に色とりどりの石を揃えて持ってきた。
ついでに俺が頼んで作っていた指輪の台座も。手元に準備済みという用意周到さだった。
「この中に希望する色の石はございますか?」
石の入ったアタッシュケースのような物を広げ、中に入っている石を一つ取り、俺に渡してきた。
「これは宝石ではなく魔石と呼ばれるものです。一般には出回っては居りません。通常は魔力が入っていない状態で発掘されることが多いので、魔力のある物が魔力を充填して王宮や貴族に売り払われます。このままで使用してもよろしいかと思いますが、殿下の魔力を充填して贈られたらいかがでしょうか?」
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