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40、いつもの光景
しおりを挟むそんなこんなで更に忙しい日々を送り、気が付けばミレーユ初登城から半年。
兄上の元婚約者の令嬢は、出産後ミレーユの店で働くことになった。
令嬢と言われて、優雅にお茶会を開きキャッキャウフフしているだけだと思っていたらそんなことはなかった。色々と思うことがあり、ミレーユが試験をしたところ、令嬢にあるまじき優秀さだったってわけだ。
「子供は当初の予定通り神殿に預ける予定でおります。後々身元の判明を防ぐ為、私の部下の子として一度届けを出し神殿へと連れて行く手筈です」
何でもない事のようにつらつらと話すトマスとそれに頷くミレーユ。
立太子式を数日前に行うまで目まぐるしい日々を送っていた俺を蚊帳の外にして、二人であっという間に色々決めてしまった。
俺、必要なくない??
なんて思いながら、相も変わらず無心に書類へのサインを続ける。
ちなみに……先月トマスとミレーユに相談の上、財務省に『そろばん』を配布した。
もちろん、指導もしたよ。なんてったって俺、一応珠算検定一級持ってたからね。
今の俺からするとだいぶだいぶ昔の ”昔取った杵柄” ってやつで、昔過ぎて簡単な計算しか教えられなかった…まぁ、足し算と引き算くらいできれば、この世界では十分だとは思うけど。
「殿下……殿下?聞いていますか?」
「あっ…ああ……」
怪訝な顔をして俺を覗き込むミレーユに驚いて、思わず上の空な返事をしてしまったけど、なんの話しだった?
「陛下……もう少し書類をきちんと見て頂かないと……」
相変わらずのトマスのお小言付きだけど、まぁそれはいつもの事なのでスルーだ。
「それはそうと…殿下。ミレーユ様の件ですが……」
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