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アンリ様に連れられ、応接間に入る。
席に着くと、すぐにメイドさんが紅茶を持ってきてくれた。アンリ様が飲むのを確認して、俺も紅茶を口にする。
上品な香りがふわっと香り、暖かいストレートティーがじんわりと体に染み込んでくる。
まったりした気分になっていると、アンリ様が「さて」と呟き、こちらに目を向けた。
「リョウさんって、男なんだよね?」
突拍子もなく飛んできた質問に驚き、飲んでいた紅茶にむせそうになる。
「んん゛っ、えっと、はい。隠してた訳じゃないですけど、アンリ様は知ってたんですね」
「この前ランさんに会って話したんだよ。僕も初めて会った時は女の子だと思ってたから驚いたよ」
「ですよね……すみません」
やはり兄が男を口説こうとしているなんて、あまり快く思わないのかもしれない。それに相手が女装してるなんて、嫌に決まっている。
「どうして謝るの?」
「いや、だって気持ち悪くないですか?」
「別に、むしろ女装してそこまで可愛くなれるなら、その格好で正解だと思うけど」
まさか、そこまで認められるとは思わず目を見開く。
同性婚が認められていることもあるのか、この国の人は、女装している俺を軽蔑せずに受け入れてくれる人が多い。
「ねえ、どうやってレオ兄様を落としたの?」
いい国だなあ、なんてしんみりしていた俺に、アンリ様はまたもや突拍子もなく質問する。
「いや、それは俺もよく分からなくて……こっちが聞きたいくらいです」
「そうなの? ふーん……」
考える素振りを見せたアンリ様は、俺の顔をじっと見ていた。
レオとは違うタイプだが、アンリ様もまたイケメンだなあ、なんて呑気なことを思う。
「レオ兄様ってさ、今まで色んな人と縁談話があったんだけど全部断ってるんだ。だから、リョウさんを抱き締めてるの見たときはびっくりしたよ」
「……ほんと、なんで俺なんですかね。俺男なのに」
「僕もレオ兄様が男もいけるとは知らなかったけど、性別はそこまで関係ないんじゃない? レオ兄様があれだけ惚れ込んでるんだもん。きっと君にそれだけ魅力があるんだよ」
「そう、なんですかね……」
自分ではあまりピンとこない話に首をかしげる。
「君はレオ兄様のこと、好きじゃないの?」
「えっと……」
レオの弟であるアンリ様に、俺の気持ちを赤裸々に言ってしまうのは少々気が引けるが、俺の答えを待っているアンリ様の視線を感じ、覚悟を決める。
「正直、よく分からないです」
「分からない?」
「レオといるとドキドキしたり、ふわふわしたりして、自分でもよく分からない感情がたくさん生まれて、これがなんなのかよく分からなくて……。俺を好きだって言ってくれるのは、嬉しいんです。でも……」
ハッキリとしない俺の話を、アンリ様は静かに聞いてくれる。
「これからもずっと一緒にいたり、付き合ったり、その……触れ合ったり、そういうのは全然想像できなくて……」
きっと、これが俺が答えに迷ってしまう一番の理由だ。レオの気持ちを受け入れ、恋人になったり、レオの言うように結婚したり……そうなった時の想像が出来なくて怖いのだ。
「中途半端な気持ちで答えを出すのは、ダメだと思うし……」
俺がそう言うと、アンリ様は紅茶を一口飲み、改めてこちらを見て口を開く。
「うーん……そういうのってさ、やってみなきゃ分からないんじゃない?」
「やってみなきゃ……?」
「そう。チャレンジあるのみ! ってね」
そう言ってアンリ様が笑う。
(チャレンジあるのみ、か)
アンリ様に言われた言葉を噛み締めながら、今後のことを考えていると、後ろからガチャリ、と扉の開く音が聞こえた。
席に着くと、すぐにメイドさんが紅茶を持ってきてくれた。アンリ様が飲むのを確認して、俺も紅茶を口にする。
上品な香りがふわっと香り、暖かいストレートティーがじんわりと体に染み込んでくる。
まったりした気分になっていると、アンリ様が「さて」と呟き、こちらに目を向けた。
「リョウさんって、男なんだよね?」
突拍子もなく飛んできた質問に驚き、飲んでいた紅茶にむせそうになる。
「んん゛っ、えっと、はい。隠してた訳じゃないですけど、アンリ様は知ってたんですね」
「この前ランさんに会って話したんだよ。僕も初めて会った時は女の子だと思ってたから驚いたよ」
「ですよね……すみません」
やはり兄が男を口説こうとしているなんて、あまり快く思わないのかもしれない。それに相手が女装してるなんて、嫌に決まっている。
「どうして謝るの?」
「いや、だって気持ち悪くないですか?」
「別に、むしろ女装してそこまで可愛くなれるなら、その格好で正解だと思うけど」
まさか、そこまで認められるとは思わず目を見開く。
同性婚が認められていることもあるのか、この国の人は、女装している俺を軽蔑せずに受け入れてくれる人が多い。
「ねえ、どうやってレオ兄様を落としたの?」
いい国だなあ、なんてしんみりしていた俺に、アンリ様はまたもや突拍子もなく質問する。
「いや、それは俺もよく分からなくて……こっちが聞きたいくらいです」
「そうなの? ふーん……」
考える素振りを見せたアンリ様は、俺の顔をじっと見ていた。
レオとは違うタイプだが、アンリ様もまたイケメンだなあ、なんて呑気なことを思う。
「レオ兄様ってさ、今まで色んな人と縁談話があったんだけど全部断ってるんだ。だから、リョウさんを抱き締めてるの見たときはびっくりしたよ」
「……ほんと、なんで俺なんですかね。俺男なのに」
「僕もレオ兄様が男もいけるとは知らなかったけど、性別はそこまで関係ないんじゃない? レオ兄様があれだけ惚れ込んでるんだもん。きっと君にそれだけ魅力があるんだよ」
「そう、なんですかね……」
自分ではあまりピンとこない話に首をかしげる。
「君はレオ兄様のこと、好きじゃないの?」
「えっと……」
レオの弟であるアンリ様に、俺の気持ちを赤裸々に言ってしまうのは少々気が引けるが、俺の答えを待っているアンリ様の視線を感じ、覚悟を決める。
「正直、よく分からないです」
「分からない?」
「レオといるとドキドキしたり、ふわふわしたりして、自分でもよく分からない感情がたくさん生まれて、これがなんなのかよく分からなくて……。俺を好きだって言ってくれるのは、嬉しいんです。でも……」
ハッキリとしない俺の話を、アンリ様は静かに聞いてくれる。
「これからもずっと一緒にいたり、付き合ったり、その……触れ合ったり、そういうのは全然想像できなくて……」
きっと、これが俺が答えに迷ってしまう一番の理由だ。レオの気持ちを受け入れ、恋人になったり、レオの言うように結婚したり……そうなった時の想像が出来なくて怖いのだ。
「中途半端な気持ちで答えを出すのは、ダメだと思うし……」
俺がそう言うと、アンリ様は紅茶を一口飲み、改めてこちらを見て口を開く。
「うーん……そういうのってさ、やってみなきゃ分からないんじゃない?」
「やってみなきゃ……?」
「そう。チャレンジあるのみ! ってね」
そう言ってアンリ様が笑う。
(チャレンジあるのみ、か)
アンリ様に言われた言葉を噛み締めながら、今後のことを考えていると、後ろからガチャリ、と扉の開く音が聞こえた。
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