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事故物件2
大岡裁き
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一通り話し終えてから、樒はさっき悪霊を封印した瓶を僕に向かって差し出した。
「そんなわけで、今回カタログギフトから選んだアイテムがこの悪霊回収瓶ってわけ」
死神アイテムだったのか。
「この瓶一つで、最大二十体の悪霊を封印できるのよ。それで、毎月十日の「逝けない霊の日」に玄関前にこの瓶を置いておくと、死神が中身だけ回収して行ってくれるの」
「逝けない霊の日? そんな日あったっけ?」
「1逝けない。0霊の日」
なるほど。それで1と0で10日か。
とりあえず、今の話でタンハーのスマホを樒が持っていた理由は分かったけど……
そのスマホを使ってタンハーを罠にかけるように、死神に依頼されていたのは分かったけど……
「樒……なんで、今まで言ってくれなかったの?」
「そりゃあ、昔から言うじゃない。敵を欺くにはまず味方からって」
え? 樒は何を言っているんだ?
「そりゃあ、優樹だって口は固いと思うけど、この事を知っていたら、タンハーにあっさりスマホを渡しそうじゃない。そんな事をしたら、タンハーが罠に気が付くかもしれないし……」
いや、僕はそんな事を聞きたいのじゃなくて……
「樒のお母さんとお父さんって……その……亡くなっていたの?」
「え? 優樹、知らなかったの?」
「初めて聞いたよ」
ていうか、五年前って事は小学生の時に……
「なあんだ、優樹知らなかったのか。協会の人達もあんたのお母さんも知っていたし、てっきりあんたも知っているものと思っていたわ」
知らなかったよ。まだ小学生の時に、樒が両親と死に別れていたなんて……
「優樹……変な同情しないでよね」
え?
「私は別に……親がいないからって平気だから……」
そうかな? 樒、無理していないかな?
もし、僕の母さんと父さんが小学生の時に亡くなっていたら……
やば! 考えただけで涙が……
「ちょっ! 涙なんか流さないでよ! 私は平気だって言っているでしょ!」
「い……いや……これは……」
「先生まで、何涙なんか流しているんですか! 私は平気だって言っているでしょ!」
見ると、氷室先生も瞳が潤んでいた。
「いや、神森さん。これは、目にゴミが入ったから……」
「そうだよ。僕も目にゴミが入っただけだから……」
「そっか! この部屋って、埃っぽいし、早く出ましょ」
「そうだね。先生、僕はもう大丈夫ですから、降ろして下さい」
「え! いや、遠慮なんかしなくていいのだぞ! 私はこれでも鍛えているから、このまま君の家のベッドまで……」
ベッドまでって! いけない! 変な想像しては! 消えろ! 僕の中の汚れ!
「先生! 本当にいいです! 降ろして下さい! 僕よりも魔入さんの方を……」
なんか忘れられているみたいだけど、魔入さんも悪霊が離れた後、床に倒れ込んでいる。
「いや、そっちは神森さんに運んでもらおう」
「先生。か弱い私に、魔入さんは重すぎます。私が優樹を運ぶから、先生は魔入さんを運んで下さい」
「いや、私だってか弱いぞ」
「今、鍛えていると言ったじゃないですか」
「う! とにかく私はこっちがいい」
「私だって、そっちがいいです」
ちょっ! 二人して僕を引っ張らないで!
「痛い! 痛い! 放して!」
「「は! いけない!」」
先生と樒が同時に僕を手放した。
僕はそのまま床に落下。
腰を打つ。
痛い! 今日はもう踏んだり蹴ったりだよ。
「今、社君が痛がるのを見て私は手を離した。よって社君を運ぶ権利は私にある」
あの? なんの話ですか?
「何言っているんです。私だって優樹が痛がっているので、手を離しました」
「私は神森さんより〇・一秒早く手放した。大岡裁きなら私の勝ちだ」
「いいえ、私の方が早かったです」
あの……どうでも良いですけど……魔入さんを運んでほしいのですが……
「そんなわけで、今回カタログギフトから選んだアイテムがこの悪霊回収瓶ってわけ」
死神アイテムだったのか。
「この瓶一つで、最大二十体の悪霊を封印できるのよ。それで、毎月十日の「逝けない霊の日」に玄関前にこの瓶を置いておくと、死神が中身だけ回収して行ってくれるの」
「逝けない霊の日? そんな日あったっけ?」
「1逝けない。0霊の日」
なるほど。それで1と0で10日か。
とりあえず、今の話でタンハーのスマホを樒が持っていた理由は分かったけど……
そのスマホを使ってタンハーを罠にかけるように、死神に依頼されていたのは分かったけど……
「樒……なんで、今まで言ってくれなかったの?」
「そりゃあ、昔から言うじゃない。敵を欺くにはまず味方からって」
え? 樒は何を言っているんだ?
「そりゃあ、優樹だって口は固いと思うけど、この事を知っていたら、タンハーにあっさりスマホを渡しそうじゃない。そんな事をしたら、タンハーが罠に気が付くかもしれないし……」
いや、僕はそんな事を聞きたいのじゃなくて……
「樒のお母さんとお父さんって……その……亡くなっていたの?」
「え? 優樹、知らなかったの?」
「初めて聞いたよ」
ていうか、五年前って事は小学生の時に……
「なあんだ、優樹知らなかったのか。協会の人達もあんたのお母さんも知っていたし、てっきりあんたも知っているものと思っていたわ」
知らなかったよ。まだ小学生の時に、樒が両親と死に別れていたなんて……
「優樹……変な同情しないでよね」
え?
「私は別に……親がいないからって平気だから……」
そうかな? 樒、無理していないかな?
もし、僕の母さんと父さんが小学生の時に亡くなっていたら……
やば! 考えただけで涙が……
「ちょっ! 涙なんか流さないでよ! 私は平気だって言っているでしょ!」
「い……いや……これは……」
「先生まで、何涙なんか流しているんですか! 私は平気だって言っているでしょ!」
見ると、氷室先生も瞳が潤んでいた。
「いや、神森さん。これは、目にゴミが入ったから……」
「そうだよ。僕も目にゴミが入っただけだから……」
「そっか! この部屋って、埃っぽいし、早く出ましょ」
「そうだね。先生、僕はもう大丈夫ですから、降ろして下さい」
「え! いや、遠慮なんかしなくていいのだぞ! 私はこれでも鍛えているから、このまま君の家のベッドまで……」
ベッドまでって! いけない! 変な想像しては! 消えろ! 僕の中の汚れ!
「先生! 本当にいいです! 降ろして下さい! 僕よりも魔入さんの方を……」
なんか忘れられているみたいだけど、魔入さんも悪霊が離れた後、床に倒れ込んでいる。
「いや、そっちは神森さんに運んでもらおう」
「先生。か弱い私に、魔入さんは重すぎます。私が優樹を運ぶから、先生は魔入さんを運んで下さい」
「いや、私だってか弱いぞ」
「今、鍛えていると言ったじゃないですか」
「う! とにかく私はこっちがいい」
「私だって、そっちがいいです」
ちょっ! 二人して僕を引っ張らないで!
「痛い! 痛い! 放して!」
「「は! いけない!」」
先生と樒が同時に僕を手放した。
僕はそのまま床に落下。
腰を打つ。
痛い! 今日はもう踏んだり蹴ったりだよ。
「今、社君が痛がるのを見て私は手を離した。よって社君を運ぶ権利は私にある」
あの? なんの話ですか?
「何言っているんです。私だって優樹が痛がっているので、手を離しました」
「私は神森さんより〇・一秒早く手放した。大岡裁きなら私の勝ちだ」
「いいえ、私の方が早かったです」
あの……どうでも良いですけど……魔入さんを運んでほしいのですが……
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