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私の部屋にきたエドワード様はいつもと同じ笑みを浮かべていた。誰もが安心するような優しげな笑み。

「エドワード様。体調に変わりはありませんわ。」

「そうか、よかった。」

エドワード様は私の長い髪を手で解かしながら優しく微笑んだ。
いつもと同じ笑みなのに、どこか疑ってしまう私がいる。
身体が固くなったのがわかったのか、エドワード様はどこか心配するような眼差しで私を見つめてきた。
なので、私はゆっくりと頭を横に振る。「なんでもありません。」という意味を込めて。

「では、レイチェル様。私はこれで失礼いたします。」

エドワード様が来たのでマコト様が部屋から出ていこうと声をかけてきた。
そのとき、初めて部屋にマコト様がいることに気づいたのかエドワード様がちらりとマコト様に視線を向けた。

「ああ。マコト、先ほどは面白い話をありがとう。」

「いえ・・・。」

にっこりと笑みを崩さないままエドワード様はいう。
マコト様とユキ様とどんな話をしたのだろうか。きっと、ユキ様の発言が元となっている話だとは思うのだけれども。
マコト様の表情はさっきと違って硬い。

「失礼します。」

「あっ・・・。」

マコト様は挨拶もそこそこに部屋から退出した。思わず「待って。」と声をかけそうになる。
でも、隣にエドワード様がいることに気づき、呼び止めるのをやめる。
マコト様にはまだまだ聞きたいことがいっぱいある。ユキ様にも。
でも、エドワード様の前で聞くには抵抗がある。
夢の中の冷めた目で私を見るエドワード様のこと。そんなこと、エドワード様の前では聞くことはできない。
マコト様はしばらく皇太子宮で働くことになっているから、そのうち話す機会もあるだろう。そう思って自分を納得させる。

「レイ?何を考えているの?」

「いえ。なんでもありません。あの・・・マコト様たちとはどんなお話を?」

単刀直入に聞いてみる。
答えてくれればいいけれども・・・。

「マコトたちがいた世界のことをきいた。なかなかに興味深い話だったよ。」

「まあ。私も知りたいです。どのような世界だったのですか?」

ユキ様はゲームとやらの話をしたのだろうか。ゲームの中のエドワード様の話をユキ様はしたのだろうか。

「今度、ゆっくりマコトとユキに説明してもらおう。レイはゆっくり休んで。本当は調子が悪いのだろう?」

「いいえ。調子は悪くありません。私は大丈夫ですわ。」

「眉間にシワが寄っているよ?無理はよくない。」

エドワード様は私の眉間にそっと手をあてて、シワが寄っているだろうところをそっと優しく撫でた。
本当に私を心配してくれて話を後日にしようと言っているのかもしれない。
だけれども、話をはぐらかされているようにも感じてしまう。
ユキ様とマコト様の話は私に不利になるような話だった?
それとも、エドワード様が私を絶望させたいという話が本当だったから私に言えない?

「レイチェルはなにも心配することはない。ゆっくり休んでくれ。」

エドワード様の手によってベッドに横にされた私は、エドワード様の優しい手で何度も頭を撫でられる。
そのままその手つきの気持ちよさに気づけば眠ってしまっていた。
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