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記憶
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幼少の頃レオンハルトは、絵姿のオフィーリアを一目見るや、否やそのあまりの美しさと衝撃で、その夜には寝込んでしまった。
まさに絵姿に一目惚れだった。しかし肖像画など、かなり美化して描かれている事が通説である。または腕のいい画家の力作のため、実物と懸け離れていたなどという事も珍しくはない。
オフィーリアの美しさは、隣国であるこの国でも噂が流れてきた。確かに美しい可能性は高い。それでもあまりのレオンハルトの期待しように「絵姿なんて当てになりませんよ」と言ったニュアンスの事を周りがからやんわり言ってた。現実と違っていた時の保険である。
それでもレオンハルトは全く聞く耳を持つ事なく、毎日毎晩眠る時はオフィーリアの肖像画を横手に置いて眠るのだった。
そして忘れもしない、毎日毎日オフィーリアの事を思い続けてようやく初めて生オフィーリアに会えたその日。
13歳のオフィーリアは薄桃色のドレスに、絹の薔薇飾り、後ろは大きな大きなバックリボン。
そしてスカートの裾下からは星屑みたく散りばめられた石が縫い付けられていた。
レオンハルトはオフィーリアが可愛すぎて、心臓が止まるかと思った。
そんなレオンハルトであったが、幼少の頃から外面が良い。オフィーリアとの交流の際は、セレスティアの王子として、恥じる事のない王子様ぶりを発揮した。オフィーリアに、少しでも良い印象を持ってもらう為頑張った。
その甲斐あって、オフィーリアはレオンハルトに沢山微笑んでくれた。その結果、初めて会った日の夜からは三日三晩寝込み寝台の上で「絵姿の100倍美しい」とうわ言のように呟いていたらしい。
オフィーリア姫がいかに美しい令嬢といえど、一目見て寝込んだ人間など、レオンハルト以外に存在しない。レオンハルトには何らかのフィルターが掛かっているのではないかと思われた。
元々婚約者候補として、オフィーリアの名は上がっていた。レオンハルトはオフィーリアと結婚出来なければ、ショックで衰弱してしまうのではと危ぶまれ、セレスティア側は正式に婚約を申し込む事となった。
そしてセレスティア国側が頼み込んで、正式に婚約が決まったのだった。
当時をよく知る者は新たな婚約者を決めて、オフィーリアとの婚約が白紙になってしまうと、レオンハルトが倒れてしまうのではないかと大いに懸念していた。
◇
未だ固まったまま、魂が空いた口から飛び出したのではないかと思われるくらい、微動だにしないレオンハルト。
そんなレオンハルトの代わりにケントは簡潔に説明をする。
「オフィーリア様。確かにレオンハルト様はオフィーリア様の幼少のみぎりに婚約を結ばれた、婚約者であらせられるのです」
「そんな事言われても知らないし……そもそも私はオフィーリアではないわ」
「え……?」
にべもなく否定するオフィーリア。レオンハルトは、恋人であるオフィーリアの言っている意味が全く理解出来なかった。
そんな王子のために黒髪の魔術師は、起きてから今に至るまでのオフィーリアの言動を統括して、簡潔に説明をする事にした。
「殿下、実はオフィーリア様は記憶を無くされているようなのです。ですので、殿下との婚約以前に、殿下の事など微塵も、一ミリも、この部屋の埃ほどの記憶も持っていらっしゃらない」
「何だってーーー!!?」
その日の夜、レオンハルトは久々に寝込む事になった。
まさに絵姿に一目惚れだった。しかし肖像画など、かなり美化して描かれている事が通説である。または腕のいい画家の力作のため、実物と懸け離れていたなどという事も珍しくはない。
オフィーリアの美しさは、隣国であるこの国でも噂が流れてきた。確かに美しい可能性は高い。それでもあまりのレオンハルトの期待しように「絵姿なんて当てになりませんよ」と言ったニュアンスの事を周りがからやんわり言ってた。現実と違っていた時の保険である。
それでもレオンハルトは全く聞く耳を持つ事なく、毎日毎晩眠る時はオフィーリアの肖像画を横手に置いて眠るのだった。
そして忘れもしない、毎日毎日オフィーリアの事を思い続けてようやく初めて生オフィーリアに会えたその日。
13歳のオフィーリアは薄桃色のドレスに、絹の薔薇飾り、後ろは大きな大きなバックリボン。
そしてスカートの裾下からは星屑みたく散りばめられた石が縫い付けられていた。
レオンハルトはオフィーリアが可愛すぎて、心臓が止まるかと思った。
そんなレオンハルトであったが、幼少の頃から外面が良い。オフィーリアとの交流の際は、セレスティアの王子として、恥じる事のない王子様ぶりを発揮した。オフィーリアに、少しでも良い印象を持ってもらう為頑張った。
その甲斐あって、オフィーリアはレオンハルトに沢山微笑んでくれた。その結果、初めて会った日の夜からは三日三晩寝込み寝台の上で「絵姿の100倍美しい」とうわ言のように呟いていたらしい。
オフィーリア姫がいかに美しい令嬢といえど、一目見て寝込んだ人間など、レオンハルト以外に存在しない。レオンハルトには何らかのフィルターが掛かっているのではないかと思われた。
元々婚約者候補として、オフィーリアの名は上がっていた。レオンハルトはオフィーリアと結婚出来なければ、ショックで衰弱してしまうのではと危ぶまれ、セレスティア側は正式に婚約を申し込む事となった。
そしてセレスティア国側が頼み込んで、正式に婚約が決まったのだった。
当時をよく知る者は新たな婚約者を決めて、オフィーリアとの婚約が白紙になってしまうと、レオンハルトが倒れてしまうのではないかと大いに懸念していた。
◇
未だ固まったまま、魂が空いた口から飛び出したのではないかと思われるくらい、微動だにしないレオンハルト。
そんなレオンハルトの代わりにケントは簡潔に説明をする。
「オフィーリア様。確かにレオンハルト様はオフィーリア様の幼少のみぎりに婚約を結ばれた、婚約者であらせられるのです」
「そんな事言われても知らないし……そもそも私はオフィーリアではないわ」
「え……?」
にべもなく否定するオフィーリア。レオンハルトは、恋人であるオフィーリアの言っている意味が全く理解出来なかった。
そんな王子のために黒髪の魔術師は、起きてから今に至るまでのオフィーリアの言動を統括して、簡潔に説明をする事にした。
「殿下、実はオフィーリア様は記憶を無くされているようなのです。ですので、殿下との婚約以前に、殿下の事など微塵も、一ミリも、この部屋の埃ほどの記憶も持っていらっしゃらない」
「何だってーーー!!?」
その日の夜、レオンハルトは久々に寝込む事になった。
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