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第39話 2番目

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 お昼の時間は、デザートとしてフルーツがサービスで付くとのこと。季節を感じる梨がカウンターの上に置かれた。
 その皿の隣に、僕はそっとスマホを乗せる。映されてる画像は、例の集合写真だ。

「へえ。本当に元気そうだね。僕は屋内専門だから、九条さんのこういうワイルドなところは憧れるよ」

 そうなんだ。確かに九条さんと神崎さんは黒と白、動と静って感じだな。アライジャとナギもそんな感じだ。

「で? この写真がどうかした? 現地のメンバーと上手くいってそうで何よりなんじゃ?」

 何気ないその言葉に、僕は自分でも驚くほど安堵した。そうだよね。この写真、みんなと上手くやってるアピールであって、おかしな感情を持つ類のものじゃないよね?

「あ、はい。僕もそう思います」

「なんてね。わかってるよ。彼だろ?」

 その僕の安堵を鼻で笑うように、神崎さんは青い目の青年をトントンと弾き、ご丁寧に大きくした。僕は反射的に画像から目を逸らす。

「大丈夫だよ。鮎川さんの方が数倍可愛い」
「そ、そうでしょうか」

 あ、素で応じちゃった。

「少なくとも私はそう思う。恐らく、九条さんも同じだと思うよ」
「それなら……いいんですけど」
「ただ……」

 再び僕が胸を撫でおろしたところで、不穏な接続語を神崎さんは口にした。

「ただ、なんですか……?」
「うーん、いや、やめておくよ」

 なにを今更勿体ぶってんだよ。

「途中でやめるとか、人が悪いですよ……」

 それが彼の計算だったのかどうか、その時の僕は気付くこともない。

「そうだねえ。何事も途中は駄目だよね?」

 にやあとスケベそうな笑い方をする。思わず引いてしまった。そういうこと言ってるわけではないんだけど。

「まあね。別に2番目だって構わない時もあるかなって思ってさ。いや、それは私の話だから、気にしなくていいよ」

 九条さんはそんなことないんだろうから。と、付け加え、和風のフォークで刺した梨をポイっと口に放り込んだ。

 ――――2番目だって構わない……。つまり浮気ってことだ。

『二股とかかけられるの許さんから。自分も相手も』

 初めて九条さんにシャワールームで抱かれた日、そう言ってた。僕に彼氏がいないかと聞いて。その時は、九条さんもフリーだと。それは絶対嘘じゃないって信じることができる。

 ――――けど、今こうして僕と地理的に離れてる。九条さんが2番目でもいいやって思っても、不思議じゃないよね。

 同じように、新鮮で艶めかしく光る梨を口に入れる。シャキシャキ音とともに、甘い果汁が口いっぱいに広がっていった。






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