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第八十五話.エアシルの町 13 進軍 サイクロピス 3

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   メルケルンが地上に降り立ち走っていく。

 ずっと空歩をし続けるのは消費が激しいらしい。

 城門を攻撃しているサイクロピスの集団に接近すると、ミスリルの剣を振り上げオーラを纏う。

 その剣を高速で振り下ろす!

――ブオンッ!

大気斬タイキザン!」

 メルケルンから巨大な真空破が飛び出しサイクロピスに直撃した!

――ドバーーーン!

『ギャーーーー!』

 サイクロピスの背中から青い血が噴き出し後ろを向く。怒りに燃える目が妖しく光っている。

『ブォオオオオオ!!』

 他のサイクロピス達も怒りに目を光らせてメルケルンに向かって走っていく。


 完全に標的となったメルケルンが、それらを引き付け空歩でこっちに飛んできた。

 サイクロピス達が一斉に走ってやってくる。もの凄い迫力だ! 辺りに揺れるほどに地響きがする。

「よし、さすがメルケルンだ。シル、補助を頼む!」

「うん。風呼びウインドコール! 風の強化ウインドハイブースト!」

 俺が構える投大弓兵器バリスタの、聖魔の大槍の穂先に強烈な風が舞う。

 これでも食らえ。

「ここだぁあ!」

――ボブュンッ!


 バリスタから放たれた大槍が空に直線を描いて飛んでいく。


――ズバンッ!

『ギャーーーーーー!』

「よっしゃああ!」 

 サイクロピスの目に大槍が突き刺さり、もんどりうって前に倒れた。

 倒れた拍子に大槍が地面に当たり、ブシャっとサイクロピスの頭を貫通する。倒れて串刺しになった魔物が魔石になった。

「よしっ一点ゲット!」

「さすがエル! シルフィー俺も頼む」

 ウエスタンが催促する。

「もう、私が撃てないじゃない。しょうがないわね、風呼びウインドコール! 風の強化ウインドハイブースト!」

 ウエスタンの構えるミスリル大槍の穂先に強烈な風が舞う。

「ここだ!」

――ボブヒュンッ ズバン!

『ギャーーー!』

 サイクロピスの目に大槍が刺さりサイクロピスが前に倒れた。倒れた拍子に大槍が地面に当たると、串刺しなり魔石になった。

「やった! 俺も一点」

 ウエスタンが喜ぶ。

「あいつらアホだな、なんで前に倒れるんだ」

「本当、そうだよな」

 まぁ前に倒れなくても、刺さった時点で終わりかも知れないが……。

「次だ! シル、頼む」

「もう! ちょっと待ってよ! 私もやらせてよ、風呼びウインドコール! 風の強化ウインドハイブースト!」

「ここよ!」

――ボブヒュンッ ズバン!

『ギャーーー!』

 サイクロピスの目に大槍が刺さりサイクロピスが前に倒れた。倒れた拍子に大槍が地面に当たると、串刺しなり魔石になった。

「やったわ! 本当ね、なんで前に倒れるのかしら」


 そんな事を俺達がしゃべっているうちにもアルフィー、オスマン、メルケルンもどんどん大槍を飛ばしていく。

 次々と大槍を食らい、サイクロピスが魔石になっていく。

 しかし残ったサイクロピス達は、さらに怒って迫ってくる。

 大分壁に近づいて来た。

「ヤバいぞ、間に合わん!」

「シルフィー頼む!」

 ウエスタンが催促する。

「もう! オスマンにやってもらって!」

「やっ、とりゃー! 武器強化ウエポンハイブースト!」

――ボブヒュンッ! ズバーン!

『ギャーーー!』

 サイクロピスの目に、オスマンの放った大槍が刺さりサイクロピスが前に倒れた。倒れた拍子に大槍が地面に当たり、串刺しなると魔石になった。

「ふふふ、あたし三点目よ」

 オスマンは大槍は強化出来ないが、持っているバリスタ自体は強化出来るのだ。

「オスマンは自分のしか出来ないんだよ、頼むよシルフィー」

 ウエスタンが懇願するが俺が先だ。

「駄目だウエス! シル、俺のだ!」

「はいエル! 風呼びウインドコール! 風の強化ウインドハイブースト!」
 
――ボブヒュンッ ズバン!

『ギャーーー!』

「よし、二点目だ」

「ぬおおおお武器強化ウエポンハイブースト!」

――ボブヒュンッ ズバーン!

『ギャーーー!』

「やりました! 二点目です」

 メルケルンもバリスタの武器強化に成功している。こいつは本当にすごいやつだな。

 だが顔が勝ち誇っているのでちょっとむかつく。


天使の祝福エンジェルブレス!」

 アルフィーに補助された聖魔の大槍が光輝く。
 
――ボブヒュンッ!

 光を帯びた聖魔の大槍が、吸い込まれるようにサイクロピスに到達する。


――ズバーン!

『ギャーーー!』

「やった! 私も二点です!」

 凄いぜアルフィー。


 残りは一回りでかいリーダー四体だ。体がでかい分少し遅れて走って来た。

「後はリーダーだけだ! シルフィー頼むよ」

 ウエスタンがまたシルフィーにお願いする。

「しょうがないわねぇ、ウエスは。風呼びウインドコール! 風の強化ウインドハイブースト!」

「サンキュー! おっしゃ行けー!」

――ボブヒュンッ ズバーン!

『ギャーーー!』

 サイクロピスリーダーの目に大槍が刺さりサイクロピスリーダーが前に倒れた。倒れた拍子に大槍が地面に当たり串刺しなり魔石になった。

「よっしゃーこれで四点だ。リーダーでも一緒じゃん」

「ウエス! これ頂戴。とりゃー武器強化ウエポンハイブースト!」 

  オスマンがウエスタンのバリスタを横取りする。

 
――ボブヒュンッ ズバーン!

『ギャーーーー!』

「やったー! 六点だー! あたしの勝ちー」

「ずるいぞオスマン」

「シル! 早く」

「はいエル! 風呼びウインドコール! 風の強化ウインドハイブースト!」

「ここだ!」

――ボブヒュンッ ヒューン ザン。

 俺の放った聖魔の大槍が到達する前に、光る聖魔の大槍がすでにサイクロピスリーダーを貫いていた。


 一瞬早く魔石になってしまった。


「ああー、間に合わんかったかぁー」

「やったー! 私が五点です」

 アルフィーが喜んだ。

「ふっ私も五点です」

 メルケルンも喜ぶ。

「ちっ俺は二点かぁ」

「俺四点、オスマンに取られなきゃなー」

 ウエスタンが悔しがる。

「あたしが優勝ねー」

 四匹倒したオスマンが喜んだ。

「私一回しか撃てなかったわ」

 悔しがるシルフィー。

「オスマンは反則だ。シルは俺達の分まで強化してくれたからな。ウエス、お前は甘えすぎだ。シルは俺のだぞ」

 それを聞いたシルフィーがニヤっとする。

「ごめん、ありがとう。シルフィー」

 ウエスタンが手を合わせて素直に謝る。

「まあいいわ。でも良かったわね、エル。結局落とし穴はいらなかったわね」

「結果はそうだけど、これがあったからこそ皆リラックスして出来たはずだ」

「確かにそうですね、さすがエルさんです」

 皆もそれには大いにうなずく。

「ではメルケルン、魔石と大槍の回収を頼む。このマジックバッグに入れて来てくれ」

「はっ」

 メルケルンが空歩で飛び出した。 

 その間に俺はバリスタを回収して、砦の足場を元の高さまで戻した。

 落とし穴が目の前にある。

「この落とし穴、間違えて落ちたら確実に死ぬな」

「そうね、落ちるところ見たかったけど、危ないから戻したほうがいいわね」

「そうですね、ほっといたら危険ですよね」

「えい!」
 
 その時オスマンがウエスタンを押した。

「おい!? 押すなよオスマン! ちょっと洒落になんねーぞ」

 少し離れているので落ちることはないが、さすがにビックリはするよな。

「皆が期待してる。えい!」

 オスマンがさらにウエスタンを押す。

「こらっ!? 押すな、押すなよ!」

 押すなと言われると押したくなるな。

 そうだ! ジャン・・・・・・。

「ウエス、短い付き合いだったな。えい!」

「ちょっエル!? 本気はやめろ!」

 ウエスタンが泣きそうな顔をする。

「そうね、ウエス。えい!」

「まっシルフィー!? まじか!」

「ウエスさん、えい!」

「アルフィーまで!? ちょちょちょちょうおおおおおお防御力向上ザ・ガード!」

 大盾を持って踏ん張るウエスタン。

天使の翼エンジェルウイング! えい!」

 白い翼と輪を出して本気で押すアルフィー。

「とりゃー!」

 本気で押すオスマン。

「何してんだ!? 待った! おいマジ! 落ちる、落ちるって!」

 ズルズル押されるウエスタン。

「ちょっと落ちるわよ、いいの?」

  シルフィーが心配する。

「大丈夫だ」

 オスマンとアルフィーとシルフィーに耳打ちする。三人が嬉しそうにうなずいた。

「とりゃーーーーーー!」

「えーーーーーい!」

「よいしょー!」

「うわぁあああああああああ!!?」

 ウエスタンが布の上でゴロンと転んだ。

「あぁああああ!! ……あれっ?」

 寝転がるが落ちないので不思議がるウエスタン。

 そう、すでに穴は埋めたのだ。

 泣きそうな顔からほっとして一転怒り出す。
 
「なんだよーもう、死ぬかと思ったじゃないか! ひどいなぁ、もーオスマン。いくらなんでもちょっとひどすぎるぞ!」

「ごめんねウエス、ゆるしてー、ちゅ」

 オスマンが抱きついてキスした。とたんにデレっとするウエスタン。

「しょうがないなあオスマンは……」

 オスマンがこっちを向いてVサインをする。


 ……安い男だな、ウエスタン。


 もちろん穴の中の大槍は回収し、元通り穴を固めた。


 その頃にメルケルンが魔石と大槍を回収して戻ってきた。
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