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Ⅱ-160 ネフロス国4
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■ネフロス国 密林
猿人たちは“命令”を先送りすることが出来ないと身をもって理解した。首筋に刻まれているネフロスの紋章が焼けるときの痛みは、生きていることを放棄したくなるほどだった。あの緑の箱に乗っている人間達を敵に回せば死ぬことは確実だったが、紋章の痛みを感じて生き続けるぐらいなら・・・、死んだほうがましだ。
多くの猿人の考えが一致したところで、全員で一斉に襲い掛かることになった。他に大した作戦も無かったし、ひょっとすると何匹かは相手にたどり着くことが出来るかもしれない。猿人たちでさえその可能性が高いとは思っていなかったが・・・。
不思議なことに地上に溢れていた死神竜を見ることが無くなった密林を木と地面を使い分けながら素早く移動して、獲物が居るあたりに近づいたところで新たな気配に気がついた。
-おい! 何か来るぞ!
-強い奴だ!
-危ないぞ! どうする!?
-どうするって、行くしかないだろう?
-そうだ、どうせ死ぬんだ! 行くしかない!
猿人たちが感じた気配は今まで戦ったどんな相手よりも強い気配だったが、不思議なことに怖さ以外の力強さを感じた。
「なあ、メイ。シンディの仲間、猿人は他にいないんじゃないのか?」
「仲間は神殿に捕まっちゃった。外にいるのはシンディだけだって」
捕まったはずの猿人が俺達を囲んでいると言う事は、猿人もネフロスの仲間と言う事か、少し可哀想だが、敵ならば容赦なく殺すしかないな。
「ミーシャ、猿人を見かけたら撃ってくれ」
「殺して良いのか?」
「構わない。だけど、シンディと他は見分けがつくかな?」
「ああ、私は大丈夫だ」
俺には見分けがつくとは思えなかったが、ミーシャ様がそういうなら大丈夫なのでしょう。
シンディはシルバーの後を追って走り始めたが、すぐに追いつけなくなった。神殿で捕らわれている仲間たちは何かの術で逆らえないようになっている。仲間を森の中でめったに見かけることは無いし、シンディは見つからないように出来るだけ洞窟の外に出ないようにしていた。猿人の種族は昔からこの森を縄張りとしている。地上には危険な敵が多かったが、樹々を渡り歩くことが出来る猿人は地上の獣と上手く折り合いをつけて暮らしていた。だが、神殿が突然現れてから、この森のすべてが変わった。死神竜が密林の生存環境を激変させて仲間の多くが命を失い。さらに空飛ぶ亀からしびれ矢や網が飛んで来て、生きたまま連れて行かれた。
残った仲間たちは大きな洞窟を見つけて隠れて暮らしていたが、そこも安全では無かった。シンディが夜中に洞窟から出て果物を取りに行くと、戻った時には神殿の兵士達が入り口を囲んでいたのだ。木の上で息をひそめて眺めていると、洞窟の外から煙を送り込んで出て来た仲間たちを網で捕らえて、次々に檻の中へと入れて行った。シンディは震えながら黙ってその光景を見るしかなかった。
メイが農場から連れ出されるときに、助け出せたのは本当に偶然だった。兵士達が少女を亀の上に乗せて飛び去るのを眺めていたが、亀に縛り付けた檻がバランスを崩して落ち始めたのだ。乗っていた兵士達は亀を地上に降ろすと、メイを檻から出して檻を安定させるために亀の上で作業をし始めた。檻の外にいる少女を見て無意識のうちに体が動いていた。木の上から近づいて、地上にいたメイを抱きかかえると一目散に逃げ出した。密林が濃いところを選んで、走り、飛び、無我夢中で隠れ家にした洞窟へと駆け戻った。
メイは猿人に連れ去られても泣くことも無かった。シンディが話しかけると、ちゃんと答えてくれたし、シンディがという名前もメイがつけてくれたものだった。食事は果実と木の実ぐらいしか用意してやれなかったが、夜は二人で抱き合って眠り、それなりに二人だけの生活で満足していた。
ストック達が森に入って来た時は森全体が騒ぎになっていた。シンディは出来るだけ近寄らないようにしていたが、人間の悲鳴が少なくなってきたところで様子を見に行くとストックが死神竜に追われて走って来た。助けてやろうと思ったのは、メイと暮らしていたからだ。自分には仲間がいないが、メイには同じ人間の仲間がいた方が良いと思った。実際に洞窟で3人が暮らしていると、メイとストックで話をすることが多くなり、メイの目に生気が戻って来たから、シンディもうれしく思っていた。
そして今、得体のしれない人間が洞窟に入って来た。食べるものもくれたし、メイとストックに優しくしてくれている。だけど・・・、神殿に捕らわれた仲間は敵だと思っているようだった。仲間もあの人間を敵だと思っているなら戦いになる。戦いになると仲間は死ぬだろう、シンディは本能で新しい人間達の強さを感じ取っていた。それにあの狼・・・。
-仲間には戦う事を思いとどまって欲しい。
あの狼は仲間を殺しに行ったのだろう。人間達の仲間だから当然だと思う。なんとか仲間を殺さないようにしてもらうためにシンディは必死で追いかけたが、巨大な銀狼が走って言った方角から凄まじい咆哮が密林全体に響き渡り、シンディはその場で立ちすくんでしまった。
-ダメだ、間に合わなかった・・・。
猿人たちも巨大な銀狼を木の上から見ている事しかできなかった。囲んで上から飛びかかるのが狩りの基本だが、誰も行動を起こせない。銀狼は大きく美しかった。猿人が手出しをできるようなもので無いことは一目でわかる。だが、何もしなければ紋章の呪いが・・・。
-グゥォォーーーン!
猿人の悩みは銀狼の咆哮で吹き飛ばされた。金縛りにあったように体が動かなくなって、全員が木から地面へと落ちて行った。地上に落ちても体がピクリとも動かない。それに、首筋の紋章から痺れるような感触が伝わってくる。
-このまま死ぬのだろう・・・
猿人たちは横たわってそう思っていたが、しばらくすると痺れが収まり、体が動くようになった。起き上がった時には銀狼がゆっくりと来た方向へ戻って行くところだった。
-おい、何があった?
-あの狼は俺達を殺さないのか?
-判らない・・・
-首の紋章が変になったが・・・
-俺もだ! 痺れたみたいになったぞ!
-一体何が・・・、おい! お前の首の紋章が消えているぞ!
-何? 本当か?・・・お前のも消えている!
-もう、あの痛みが無いのか!
猿人たちは交互に首の紋章が消えていることを確認すると地上で飛びはねて喜びを表した。
-あの狼の・・・、いや、狼様のおかげかな?
-そうだろう、そうとしか思えない。
-おい! あいつは!
飛びはねている仲間の所へシンディがやって来た。途中でシルバーとすれ違ったが、シルバーは何事も無かったようにサトル達が居る方向へと去って行った。
-みんな! 大丈夫か!? あの狼はお前達を襲わなかったのか?
-ああ、無事だ! それどころか、俺達を縛っていた紋章を消してくれたんだ!
-紋章?
猿人たちはこれまでの事をお互いに説明し、これからどうするかを相談した。
-神殿から出来るだけ遠くへ行くか?
-だが、この森から離れて生きていけるだろうか?
-・・・。
この森以外で暮らしたことの無い猿人たちは他へ行くことが怖かった。しかし、密林で暮らすと言う事は神殿の兵に怯えて暮らさなければならない。
-あの、狼様はどうだろう?
-狼様? どうするんだ?
-ついて行けば、神殿に襲われることも無いんじゃないか?
-いや、あの狼の仲間は神殿と戦おうとしているぞ。
シンディはサトル達の話を仲間に伝えた。
-そうか、狼様は戦うのか・・・。だが、その方が良いのでは無いか?
-どうしてだ?
-こいつの話では、狼様とその仲間は強いのだろう? ひょっとすると神殿の奴らを・・・。
-神殿の奴らに勝てるもんか! あいつ等は飛べるんだぞ! 変な術もあるし!
-狼様の仲間も術を使えるぞ、それに美味い物を出してくれる。
-美味い物!? それは何だ? 肉なのか?
-ああ、肉も入っているが、今までで一番おいしい食い物だった。
-本当か!? じゃあ、狼様の所へ行こう! 手下にしてもらえば、美味い物が食えるかも!
-美味い物か! 神殿に仕返しもしたいし、狼様の所へ行こう!
話し合いの結果、猿人たちはシンディに連れられてサトル達のいるベースキャンプへと向かった。
「おい、サトル。猿人たちがこっちへ来たぞ」
「そうか、俺も撃てるように準備するよ」
「いや、様子が変だな。殺気も感じられないし、シンディが先頭で後ろにぞろぞろと・・・」
「うん?」
双眼鏡でミーシャが見ている方向を確認すると、猿人たちが地面を小走りにかけてくるのが見えたが、キャンプ手前で一旦止ると1匹だけが走って来る。たぶん、シンディだ。
「メイ、シンディが仲間と一緒に戻って来た。何があったのか聞いてくれるか?」
「うん」
ハンバーガーを食べると眠そうにしていたメイが目をこすりながら、俺の横に来ると同時にシンディが目の前にたどり着いた。
-キィ、キヤィ、キイーッウ! ・・・
「狼が仲間を助けてくれたから、みんなは狼の言う事に従うって」
「・・・シルバー。お前が助けてきたのか?」
先に戻って来て寝そべっていたシルバーは尻尾を軽く振って“YES”の返事をした。どんな風に助けたんだろう?まあ、シルバーの様子を見ると猿人たちは敵ではないだろうが、シルバーが猿人に指示を出すとは思えない。
「俺の言う事が聞けるなら、こっちに来ても良いぞ。だけど、俺達は神殿と戦うからな。それに協力することが条件だ」
-キッ! キャィ!
「わかったって言ってるよ」
「よし、じゃあ。せっかくだから食べ物を出してやるか」
猿人の知能がどれだけか判らないが、魔法が使えないこの場所で戦力が増えるなら使わない手は無いだろう。俺は猿人たちの使い道を考えながら、大量のハンバーガーを用意してやった。
猿人たちは“命令”を先送りすることが出来ないと身をもって理解した。首筋に刻まれているネフロスの紋章が焼けるときの痛みは、生きていることを放棄したくなるほどだった。あの緑の箱に乗っている人間達を敵に回せば死ぬことは確実だったが、紋章の痛みを感じて生き続けるぐらいなら・・・、死んだほうがましだ。
多くの猿人の考えが一致したところで、全員で一斉に襲い掛かることになった。他に大した作戦も無かったし、ひょっとすると何匹かは相手にたどり着くことが出来るかもしれない。猿人たちでさえその可能性が高いとは思っていなかったが・・・。
不思議なことに地上に溢れていた死神竜を見ることが無くなった密林を木と地面を使い分けながら素早く移動して、獲物が居るあたりに近づいたところで新たな気配に気がついた。
-おい! 何か来るぞ!
-強い奴だ!
-危ないぞ! どうする!?
-どうするって、行くしかないだろう?
-そうだ、どうせ死ぬんだ! 行くしかない!
猿人たちが感じた気配は今まで戦ったどんな相手よりも強い気配だったが、不思議なことに怖さ以外の力強さを感じた。
「なあ、メイ。シンディの仲間、猿人は他にいないんじゃないのか?」
「仲間は神殿に捕まっちゃった。外にいるのはシンディだけだって」
捕まったはずの猿人が俺達を囲んでいると言う事は、猿人もネフロスの仲間と言う事か、少し可哀想だが、敵ならば容赦なく殺すしかないな。
「ミーシャ、猿人を見かけたら撃ってくれ」
「殺して良いのか?」
「構わない。だけど、シンディと他は見分けがつくかな?」
「ああ、私は大丈夫だ」
俺には見分けがつくとは思えなかったが、ミーシャ様がそういうなら大丈夫なのでしょう。
シンディはシルバーの後を追って走り始めたが、すぐに追いつけなくなった。神殿で捕らわれている仲間たちは何かの術で逆らえないようになっている。仲間を森の中でめったに見かけることは無いし、シンディは見つからないように出来るだけ洞窟の外に出ないようにしていた。猿人の種族は昔からこの森を縄張りとしている。地上には危険な敵が多かったが、樹々を渡り歩くことが出来る猿人は地上の獣と上手く折り合いをつけて暮らしていた。だが、神殿が突然現れてから、この森のすべてが変わった。死神竜が密林の生存環境を激変させて仲間の多くが命を失い。さらに空飛ぶ亀からしびれ矢や網が飛んで来て、生きたまま連れて行かれた。
残った仲間たちは大きな洞窟を見つけて隠れて暮らしていたが、そこも安全では無かった。シンディが夜中に洞窟から出て果物を取りに行くと、戻った時には神殿の兵士達が入り口を囲んでいたのだ。木の上で息をひそめて眺めていると、洞窟の外から煙を送り込んで出て来た仲間たちを網で捕らえて、次々に檻の中へと入れて行った。シンディは震えながら黙ってその光景を見るしかなかった。
メイが農場から連れ出されるときに、助け出せたのは本当に偶然だった。兵士達が少女を亀の上に乗せて飛び去るのを眺めていたが、亀に縛り付けた檻がバランスを崩して落ち始めたのだ。乗っていた兵士達は亀を地上に降ろすと、メイを檻から出して檻を安定させるために亀の上で作業をし始めた。檻の外にいる少女を見て無意識のうちに体が動いていた。木の上から近づいて、地上にいたメイを抱きかかえると一目散に逃げ出した。密林が濃いところを選んで、走り、飛び、無我夢中で隠れ家にした洞窟へと駆け戻った。
メイは猿人に連れ去られても泣くことも無かった。シンディが話しかけると、ちゃんと答えてくれたし、シンディがという名前もメイがつけてくれたものだった。食事は果実と木の実ぐらいしか用意してやれなかったが、夜は二人で抱き合って眠り、それなりに二人だけの生活で満足していた。
ストック達が森に入って来た時は森全体が騒ぎになっていた。シンディは出来るだけ近寄らないようにしていたが、人間の悲鳴が少なくなってきたところで様子を見に行くとストックが死神竜に追われて走って来た。助けてやろうと思ったのは、メイと暮らしていたからだ。自分には仲間がいないが、メイには同じ人間の仲間がいた方が良いと思った。実際に洞窟で3人が暮らしていると、メイとストックで話をすることが多くなり、メイの目に生気が戻って来たから、シンディもうれしく思っていた。
そして今、得体のしれない人間が洞窟に入って来た。食べるものもくれたし、メイとストックに優しくしてくれている。だけど・・・、神殿に捕らわれた仲間は敵だと思っているようだった。仲間もあの人間を敵だと思っているなら戦いになる。戦いになると仲間は死ぬだろう、シンディは本能で新しい人間達の強さを感じ取っていた。それにあの狼・・・。
-仲間には戦う事を思いとどまって欲しい。
あの狼は仲間を殺しに行ったのだろう。人間達の仲間だから当然だと思う。なんとか仲間を殺さないようにしてもらうためにシンディは必死で追いかけたが、巨大な銀狼が走って言った方角から凄まじい咆哮が密林全体に響き渡り、シンディはその場で立ちすくんでしまった。
-ダメだ、間に合わなかった・・・。
猿人たちも巨大な銀狼を木の上から見ている事しかできなかった。囲んで上から飛びかかるのが狩りの基本だが、誰も行動を起こせない。銀狼は大きく美しかった。猿人が手出しをできるようなもので無いことは一目でわかる。だが、何もしなければ紋章の呪いが・・・。
-グゥォォーーーン!
猿人の悩みは銀狼の咆哮で吹き飛ばされた。金縛りにあったように体が動かなくなって、全員が木から地面へと落ちて行った。地上に落ちても体がピクリとも動かない。それに、首筋の紋章から痺れるような感触が伝わってくる。
-このまま死ぬのだろう・・・
猿人たちは横たわってそう思っていたが、しばらくすると痺れが収まり、体が動くようになった。起き上がった時には銀狼がゆっくりと来た方向へ戻って行くところだった。
-おい、何があった?
-あの狼は俺達を殺さないのか?
-判らない・・・
-首の紋章が変になったが・・・
-俺もだ! 痺れたみたいになったぞ!
-一体何が・・・、おい! お前の首の紋章が消えているぞ!
-何? 本当か?・・・お前のも消えている!
-もう、あの痛みが無いのか!
猿人たちは交互に首の紋章が消えていることを確認すると地上で飛びはねて喜びを表した。
-あの狼の・・・、いや、狼様のおかげかな?
-そうだろう、そうとしか思えない。
-おい! あいつは!
飛びはねている仲間の所へシンディがやって来た。途中でシルバーとすれ違ったが、シルバーは何事も無かったようにサトル達が居る方向へと去って行った。
-みんな! 大丈夫か!? あの狼はお前達を襲わなかったのか?
-ああ、無事だ! それどころか、俺達を縛っていた紋章を消してくれたんだ!
-紋章?
猿人たちはこれまでの事をお互いに説明し、これからどうするかを相談した。
-神殿から出来るだけ遠くへ行くか?
-だが、この森から離れて生きていけるだろうか?
-・・・。
この森以外で暮らしたことの無い猿人たちは他へ行くことが怖かった。しかし、密林で暮らすと言う事は神殿の兵に怯えて暮らさなければならない。
-あの、狼様はどうだろう?
-狼様? どうするんだ?
-ついて行けば、神殿に襲われることも無いんじゃないか?
-いや、あの狼の仲間は神殿と戦おうとしているぞ。
シンディはサトル達の話を仲間に伝えた。
-そうか、狼様は戦うのか・・・。だが、その方が良いのでは無いか?
-どうしてだ?
-こいつの話では、狼様とその仲間は強いのだろう? ひょっとすると神殿の奴らを・・・。
-神殿の奴らに勝てるもんか! あいつ等は飛べるんだぞ! 変な術もあるし!
-狼様の仲間も術を使えるぞ、それに美味い物を出してくれる。
-美味い物!? それは何だ? 肉なのか?
-ああ、肉も入っているが、今までで一番おいしい食い物だった。
-本当か!? じゃあ、狼様の所へ行こう! 手下にしてもらえば、美味い物が食えるかも!
-美味い物か! 神殿に仕返しもしたいし、狼様の所へ行こう!
話し合いの結果、猿人たちはシンディに連れられてサトル達のいるベースキャンプへと向かった。
「おい、サトル。猿人たちがこっちへ来たぞ」
「そうか、俺も撃てるように準備するよ」
「いや、様子が変だな。殺気も感じられないし、シンディが先頭で後ろにぞろぞろと・・・」
「うん?」
双眼鏡でミーシャが見ている方向を確認すると、猿人たちが地面を小走りにかけてくるのが見えたが、キャンプ手前で一旦止ると1匹だけが走って来る。たぶん、シンディだ。
「メイ、シンディが仲間と一緒に戻って来た。何があったのか聞いてくれるか?」
「うん」
ハンバーガーを食べると眠そうにしていたメイが目をこすりながら、俺の横に来ると同時にシンディが目の前にたどり着いた。
-キィ、キヤィ、キイーッウ! ・・・
「狼が仲間を助けてくれたから、みんなは狼の言う事に従うって」
「・・・シルバー。お前が助けてきたのか?」
先に戻って来て寝そべっていたシルバーは尻尾を軽く振って“YES”の返事をした。どんな風に助けたんだろう?まあ、シルバーの様子を見ると猿人たちは敵ではないだろうが、シルバーが猿人に指示を出すとは思えない。
「俺の言う事が聞けるなら、こっちに来ても良いぞ。だけど、俺達は神殿と戦うからな。それに協力することが条件だ」
-キッ! キャィ!
「わかったって言ってるよ」
「よし、じゃあ。せっかくだから食べ物を出してやるか」
猿人の知能がどれだけか判らないが、魔法が使えないこの場所で戦力が増えるなら使わない手は無いだろう。俺は猿人たちの使い道を考えながら、大量のハンバーガーを用意してやった。
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