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第3章
第104話 魔法生物学
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(かわいいっ!!!! なにこれなにこれ!!!!! 全部かわいい!!!)
バスケットの蓋の隙間から小さくてふわふわした小動物が顔をのぞかせている。
今日は初めての魔法生物の実習授業。魔法生物学の担当はおじいちゃん先生のスピカ先生。先生は小さくて可愛い生物が好きでたくさん集めているのだって。
「ほい、それじゃぁのう、このばーすけっとぅの中を見てみぃ! とってもきゅーとじゃろ? これが魔法生物じゃ。この子達は今まで教科書で学んできた通り、魔力を餌に生活しておる。まずはこの子達に餌をあげて、仲良くならんと始まらん」
は~い!! 早くこの子達と仲良くなりたい! 餌あげたい!
「この子達は体が小さいからの、餌になる魔力の量は小さじ一杯ほどで良い。集めた魔力を指先に載せてあげてみぃ。嫌がる様なら無理せずその子のペースに合わせてゆっくりと、じゃ。さあ、君たち、好きなとこへ行ってらっしゃい~」
スピカ先生がバスケットの蓋を取ると魔法生物がふわふわと飛び出して行った。
(ほぇ? この子たち飛べるんだ!! すご~い。)
と僕が感心していると。
もこ、ふわ、もこもこふわふわ。もこもこもこふわっふわ。もこもこもこもこふわふわふわふわ。もこもこもこもこもこもこもこ!!!
(って!? なになに!? なんでみんなこっちに来るのぉ!!?)
あっと言う間に僕はふわもこの魔法生物たちに囲まれて埋もれてしまった。
「おやおや。みんなキルナくんのところに行ってしもうたか。よほど君の魔力はおいしいのじゃろうな。この子達は嗅覚が優れているから質の良い魔力を嗅ぎ分けられるのじゃ」
(質の良い魔力? へぇ~魔力に質なんてあるんだ。)
「でもこれでは他の生徒の訓練にならんのう。ほほほ、じゃあ、キルナくんはこの子に餌をあげて。ほい他の子達は違うところに散って散って~」
そう言ってスピカ先生は僕に一匹だけ選ぶと他のふわもこたちを違う生徒たちに振り分けてくれた。黒いふわふわな生き物がつぶらな瞳でこちらを見上げている。これは黒い、猫?
「黒猫だぁ。かわいっ!!」
僕が可愛い可愛いと猫をよしよししていると、
「その魔法生物はムベルだ。猫じゃない」
と横からクライスが教えてくれた。うーん、どこからどうみても猫なんだけどな。(動物園のふれあい広場にいた猫とどう違うのかわからない。)
指先に魔力を集める。
(う~~~ん。はい、できた!)
指先に小さじ一杯分の魔力の水完成!!
今回は魔法基礎学の授業の時みたいに、妖精が飲んじゃわないよう充分注意している。妖精たちの視線は感じるものの、僕が警戒しているからか、飲むのを我慢してるみたい。えらい!
「これを飲ませてあげるといいんだね」
「にゃぁ」
ってやっぱり猫!! にゃあって鳴いたよこの子。口元に魔力の雫の載った指を持っていくと、鼻をくんくんさせた後、おいしそうにぺろぺろと舐め出した。
「かわいすぎ!! ん、でもくすぐったぃ」
「みんな、餌をあげることができたじゃろうか? そうしたら彼らに何でも良いから初級魔法を使う様に言ってみるのじゃ。」
ふむふむ。あれ? でも猫に言葉って通じるのかしら。わかんないけど、やってみよ。
「えと、じゃあ、水のお花を作ってみて」
僕がお願いすると、ぽんっと目の前に水の花が浮かんだ。
「お、キルナくんはもうできたのか。上手じゃのう。君はどうやら魔法生物を使役する才能があるらしい。頑張って勉強するのじゃぞ」
ほっほっほ、と言って去っていくスピカ先生。
やった!! 今まで何をやってもどん底の悪役ステータス。うまくいくことなんて滅多となかったのに、褒められた!!
「すごいじゃないか」
隣にいたクライスがわしゃわしゃと僕の頭を撫でて褒めてくれる。ふふ、うれしい。僕の頭の上でお昼寝していた妖精がクライスのよしよしする手の動きに合わせてコロコロ転がっている。
「いってぇ!! こいつ噛みつきやがった!!!」
「熱っ!! こっちに火魔法向けるな!!」
周りを見てみると、クライスとその学友たちは難なくクリアしたみたいだけど、その他のクラスメイトたちは魔法生物に逃げられたり、威嚇されて噛みつかれたり、自分に向けて火を吐かれたりと、結構苦戦しているようだ。
「最初は出来んでもよろしい。生き物相手じゃからの、ゆっくり慣らしていくしかないのじゃ」
みんなが魔法生物に手を焼いてひぃひぃ言ってる中、スピカ先生はほっほっほと楽しげに笑いながら見て回っている。
(よぉし。せっかくだしもっともっと練習しよう!)
人差し指の上に僕の水の魔力、あつまれ~~~!!! 僕は目を瞑って体中の魔力を指先に集めた。餌をたくさんあげてもっと黒猫と仲良くなろ。と思っていたんだけど……。
「おいし~もっとちょうだい!!」
「ぼくもぼくも~」
あ、しまった。妖精に気をつけるのを忘れていた。せっかく集めた魔力の水がどんどん消えて無くなっていく。
(ちょっと! 飲んじゃダメだよ。これは黒猫にあげるやつなんだってばぁ!!)
「にゃぁ~にゃぁ」
黒猫はオロオロする僕を見て、また可愛らしく鳴いた。もっと餌が欲しいのかもしれない。
「ふぇ、ごめん。もう魔力の水なくなっちゃったの……」
よしよしともふもふの頭を撫でながら、次はもっと気をつけようと僕は心に誓った。
バスケットの蓋の隙間から小さくてふわふわした小動物が顔をのぞかせている。
今日は初めての魔法生物の実習授業。魔法生物学の担当はおじいちゃん先生のスピカ先生。先生は小さくて可愛い生物が好きでたくさん集めているのだって。
「ほい、それじゃぁのう、このばーすけっとぅの中を見てみぃ! とってもきゅーとじゃろ? これが魔法生物じゃ。この子達は今まで教科書で学んできた通り、魔力を餌に生活しておる。まずはこの子達に餌をあげて、仲良くならんと始まらん」
は~い!! 早くこの子達と仲良くなりたい! 餌あげたい!
「この子達は体が小さいからの、餌になる魔力の量は小さじ一杯ほどで良い。集めた魔力を指先に載せてあげてみぃ。嫌がる様なら無理せずその子のペースに合わせてゆっくりと、じゃ。さあ、君たち、好きなとこへ行ってらっしゃい~」
スピカ先生がバスケットの蓋を取ると魔法生物がふわふわと飛び出して行った。
(ほぇ? この子たち飛べるんだ!! すご~い。)
と僕が感心していると。
もこ、ふわ、もこもこふわふわ。もこもこもこふわっふわ。もこもこもこもこふわふわふわふわ。もこもこもこもこもこもこもこ!!!
(って!? なになに!? なんでみんなこっちに来るのぉ!!?)
あっと言う間に僕はふわもこの魔法生物たちに囲まれて埋もれてしまった。
「おやおや。みんなキルナくんのところに行ってしもうたか。よほど君の魔力はおいしいのじゃろうな。この子達は嗅覚が優れているから質の良い魔力を嗅ぎ分けられるのじゃ」
(質の良い魔力? へぇ~魔力に質なんてあるんだ。)
「でもこれでは他の生徒の訓練にならんのう。ほほほ、じゃあ、キルナくんはこの子に餌をあげて。ほい他の子達は違うところに散って散って~」
そう言ってスピカ先生は僕に一匹だけ選ぶと他のふわもこたちを違う生徒たちに振り分けてくれた。黒いふわふわな生き物がつぶらな瞳でこちらを見上げている。これは黒い、猫?
「黒猫だぁ。かわいっ!!」
僕が可愛い可愛いと猫をよしよししていると、
「その魔法生物はムベルだ。猫じゃない」
と横からクライスが教えてくれた。うーん、どこからどうみても猫なんだけどな。(動物園のふれあい広場にいた猫とどう違うのかわからない。)
指先に魔力を集める。
(う~~~ん。はい、できた!)
指先に小さじ一杯分の魔力の水完成!!
今回は魔法基礎学の授業の時みたいに、妖精が飲んじゃわないよう充分注意している。妖精たちの視線は感じるものの、僕が警戒しているからか、飲むのを我慢してるみたい。えらい!
「これを飲ませてあげるといいんだね」
「にゃぁ」
ってやっぱり猫!! にゃあって鳴いたよこの子。口元に魔力の雫の載った指を持っていくと、鼻をくんくんさせた後、おいしそうにぺろぺろと舐め出した。
「かわいすぎ!! ん、でもくすぐったぃ」
「みんな、餌をあげることができたじゃろうか? そうしたら彼らに何でも良いから初級魔法を使う様に言ってみるのじゃ。」
ふむふむ。あれ? でも猫に言葉って通じるのかしら。わかんないけど、やってみよ。
「えと、じゃあ、水のお花を作ってみて」
僕がお願いすると、ぽんっと目の前に水の花が浮かんだ。
「お、キルナくんはもうできたのか。上手じゃのう。君はどうやら魔法生物を使役する才能があるらしい。頑張って勉強するのじゃぞ」
ほっほっほ、と言って去っていくスピカ先生。
やった!! 今まで何をやってもどん底の悪役ステータス。うまくいくことなんて滅多となかったのに、褒められた!!
「すごいじゃないか」
隣にいたクライスがわしゃわしゃと僕の頭を撫でて褒めてくれる。ふふ、うれしい。僕の頭の上でお昼寝していた妖精がクライスのよしよしする手の動きに合わせてコロコロ転がっている。
「いってぇ!! こいつ噛みつきやがった!!!」
「熱っ!! こっちに火魔法向けるな!!」
周りを見てみると、クライスとその学友たちは難なくクリアしたみたいだけど、その他のクラスメイトたちは魔法生物に逃げられたり、威嚇されて噛みつかれたり、自分に向けて火を吐かれたりと、結構苦戦しているようだ。
「最初は出来んでもよろしい。生き物相手じゃからの、ゆっくり慣らしていくしかないのじゃ」
みんなが魔法生物に手を焼いてひぃひぃ言ってる中、スピカ先生はほっほっほと楽しげに笑いながら見て回っている。
(よぉし。せっかくだしもっともっと練習しよう!)
人差し指の上に僕の水の魔力、あつまれ~~~!!! 僕は目を瞑って体中の魔力を指先に集めた。餌をたくさんあげてもっと黒猫と仲良くなろ。と思っていたんだけど……。
「おいし~もっとちょうだい!!」
「ぼくもぼくも~」
あ、しまった。妖精に気をつけるのを忘れていた。せっかく集めた魔力の水がどんどん消えて無くなっていく。
(ちょっと! 飲んじゃダメだよ。これは黒猫にあげるやつなんだってばぁ!!)
「にゃぁ~にゃぁ」
黒猫はオロオロする僕を見て、また可愛らしく鳴いた。もっと餌が欲しいのかもしれない。
「ふぇ、ごめん。もう魔力の水なくなっちゃったの……」
よしよしともふもふの頭を撫でながら、次はもっと気をつけようと僕は心に誓った。
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