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なんでこう毎日、忙しいかな……。10

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 目論見通り、クラスの全員がぞろぞろと私達についてきた。

 私をいじめた男子たちは、入学してから初めての決闘の観戦ということに沸いており、やいのやいのと騒ぎながらついてきて、女性陣はやや控えめにコソコソと話し合いをしている。コーディのチームは、一応見物といった感じに後ろへと続いた。

 「受けます」そう答えたのはシンシアだった。チェルシーは状況を飲み込むのが遅く「え?え?」と盛り上がる男性陣に驚き、私の申込書の内容を見てさらに混乱を極めていた。

 私と決闘をするシンシアは、颯爽と私の隣を歩き、手早く女性がよく使う片手剣を練習場の武器庫から選び、既にあるコートに二人して向かい合った。

 あっという間に、すぐにでも試合を開始できる状況になり、クラスのギャラリー達は、それぞれ私達の一挙手一投足を見逃すまいと、あまりお喋りもせずにこちらを見守っている。オスカーとディックはまだ魔力が回復していないのか、観戦しているクラスの中には居ない。

 クラスの人たちとは少し離れた位置で、私たちのチームのうち、観戦に回っているヴィンスとチェルシーが見ている。チェルシーは未だに、自分が何をしたらいいのか分からないようで、手を口に当てながら、心配そうにこちらを見ていた。

 一番、嫌そうな顔をしているのはサディアスだ、私たちの中心に立ち、いち早く魔法玉を起動して、眉間に皺を寄せている。

「クレア……」

 彼の心配で仕方がない様子の、私を呼ぶ声に笑顔で答える。するとシンシアがスっと剣を向けた。

「クレア・カトラス!決闘と言う、正当な勝敗をつけられる場を設けたこと、見直しました。これでやっと、正式に貴方が学園に不相応だと証明することができる」
「……」
「空欄の勝敗決定、意味が分からなかったなどとは言わせませんよ」
「えぇ」

 ……もちろん……そんな言い訳をするつもりは無い。でも、死ぬ気なんてもっと無い。私の毅然とした態度に、シンシアはグッと厳しい表情になる。

「どんな勝算があって、この試合を望むのですか……クレア」
「……」

 私は答えずに彼女を見据える。クラスの一同が聞いている中で迂闊な発言をするつもりは無い。私は、このクラスに残るために自ら決闘を申し込んだのだ。
 それを忘れずに、ちゃんと話さなければ。

 一度、縦長のコートのサイドに並んでいるクラスメイトに目を向ける。彼らの多くは、私の言葉を聞き取ろうとこちらをしっかりと見ていた。

 ……やっぱり……正解だったな。

 こういう状態でも作らない限りは、私は弁解の余地も与えられずに、このクラスの居場所は完全に無くなっていただろう。

 ふー、と細く息を吐き出す。

「……まずは、クラスの人にも反感を買うような言動、問題を起こした事を謝罪します。本当に……ごめんさない」

 頭は下げないが、皆が私がこの学園に相応しくないと思うような態度をとったことは自覚がある。それをシンシア、チェルシー、クラスの人を眺めながら言う。

「でも、私はこの学園を辞めるつもりはありません。今日は、その覚悟を示すために決闘を申し込みました。……勝算なんて考えていません、ただこれは私の誠意」
「誠意で……命をかけるなんて、どうせ見せ掛けなんじゃないですか?!」
 
 私の返答にシンシアが声をあげる。
 クラスの人の反応は様々だが、全員から否定の声が上がらなかっただけ、良かったということにしよう。

「今からそれが試されるんでしょ?サディアス合図を」
「っ!!どうなっても知りません!私はっ!魔法使いになるんです!その過程に貴方という障害がいるのなら排除するまで」

 シンシアは剣を強く握り、魔法玉を起動する。私もそれに呼応するように剣を抜いた。

 初めて、試合をした時を思い出す。力いっぱい剣を握りしめて震えを殺す。

 先程雑貨店で購入したボロボロの簡易魔法玉と共に、自分の魔法玉を取り出した。
 これを買うためだけに見つける事が出来た大金貨をすべて使ってしまった。

「魔法玉の重複使用?……そんなもの、簡易魔法玉時代のお遊びでやる行為ですよ!!」
「少し、事情があるんです。公式のルールにも問題ないはず」
「……それは!…………わかりました。勝敗は変わらないと思いますけど」

 精一杯魔力を込めて、二つの魔法玉を起動する。ふわっと光が灯って、シンシアと睨み合う。


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