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武具大会

予選開始

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クラースさんが持ってきてくれた料理を食べているとユキさんとグリムルドさんがやって来た。

「お疲れ様ユキさん。打ち合わせは終わったの?」
「はい。お待たせしてすみません。」
「全然大丈夫だよ。ソラちゃんとリオさんはどこかに行っちゃったし。お腹いっぱいになったら帰って来ると思うけど。」
「ユキ様もどうぞ。」

クラースさんは手際良く料理を運んで来てくれている。

「それじゃ、俺は兄貴の所に顔を出してくるからな。明日は宜しく頼む。」
「はい。こちらこそ宜しくお願いします。」

グリムルドさんはグレードンさんのいる所に歩いていった。

「さっきから色んな人に声を掛けられて大変だったよ。ユキさんも気を付けてね。」
「はい。」
「ウルよ。何をやっているのだ。ミナ様に近付く輩など全て排除してしまえ。」
「オル君ダメだからね。話せばわかる人の方が多いんだから。」

さっきの人は話しても分からなさそうだったけど。

「お、戻ってきたぞ。」

ソラちゃんとリオさんが戻ってきた。大きなお皿に料理を満載して。

「戦利品~。」
「取り過ぎじゃない?こんなに食べられないよ。」
「大丈夫。全部食べる。」

相変わらずの食欲だね。

「ミナ、例の王太子を見つけたわよ。ここのギルマスと一緒にいた。」
「見つかる前に帰りましょうか。」

ここで絡まれたら困る。あちらもお忍びらしいから堂々と接触してくる事はないかも知れないけど。

「どうやら出場者の関係者という形でここにいるらしいわ。出場者は中々のイケメンだったわよ。興味ないけど。」
「ん。食べ物の方が大事。」

リオさんは筋肉質の年上好みだし、ソラちゃんは他人に目もくれないからね。
ルーティアさんに言って早めに帰らせてもらおう。

夜。私達の部屋に集まって話をする。ルーティアさんはまだ帰ってきていない。

「もしあなた達が対戦になったらどうするの?」
「全力で戦うだけですよ?」
「ん。大怪我させない様に勝つ。」
「そうですね。手を抜くのは失礼ですからね。」
「オレ、ねーちゃん達に攻撃なんて出来るかな…。」
「今更何言ってんのよ。第一この中で一番弱いのはテュケなんだから、遠慮なんかしてたら絶対勝てないわよ?」
「お、おう!」
「それにこの大会に来たのはテュケの実力を確認する為なんだから、もし簡単に負ける様なら一緒に冒険には連れて行けないわ。」
「そうだった!本気でやるよ!」

その意気だよテュケ君!

ーーーー

翌朝。
ご飯を食べて支度を終えたらみんなで会場へ出発!ルーティアさんの姿が見えないけど、先に行ってるのかな?

ゼルグランにはかなり大きな闘技場がある。武具大会は年に一回だけど、それ以外にも大会が開かれていて、かなりの集客らしい。

予選は8~9人でのバトルロイヤル。
ブロックは全部で16あって、最後の一人が決勝トーナメントに進める形式だ。
予選ブロックの対戦表が掲示してあったので見てみると、テュケ君がE、ソラちゃんがF私がG、ユキさんはAブロックだった。

「予選ブロックが一緒にならなくて良かったね!」
「本当に良かったです。」
「決勝トーナメントで会おう。」
「緊張してきた…。」

テュケ君、今から緊張していたらもたないよ?

バトルロイヤルは闘技場を4分割して一度に4つのブロックが対戦するそう。順番はAからだけど、私達は次の組なので観客席でユキさんの応援はできない。
装備を整えて闘技場のアリーナに入ると歓声が聞こえる。

「間に合ったみたいだな!」
「やほー!応援に来たよー!」
「実力を発揮できれば勝てる。」

ダキアさん、アリソンさん、クロウさんが観客席にいる!すぐそばにはルーティアさんも一緒だ。迎えに行っていたのかな。手を振って返事をする。

「それでは予選を開始する!AからDブロックの者はバトルフィールドに。尚、気絶、降参、武具2点の破壊、魔法の使用以外にフィールドから出たものも失格となるから注意してくれ。」

そういえばこの大会は武具の大会だったね。魔法禁止なのは当たり前か。
バトルフィールドは直径20メートル程の真円。50センチ程隆起しているのでそこから落ちたら失格という事だね。フィールドのすぐ外には4人の審判がいて、失格したものに退場を宣告するようになっているみたい。

次の出番の私達はバトルフィールドの側で待機になっているので間近で戦いが見れてちょっとおトクだった。

Aブロックのユキさんは、長剣に軽鎧、大盾に両腕にアームガードという装備だ。短槍だったら良かったのにね。
対戦相手はみんな屈強な男の一人ばかり。ニヤニヤと品定めする様にユキさんをみている人もいる。人見知りするタイプだし大丈夫かな?
ユキさんは目を閉じて集中しているみたいだ。

巨大な銅羅が打ち鳴らされて戦闘が開始される。

ユキさんの所に4人が殺到する。大剣持ちの人間、長剣二刀の人間、槍持ちの人間、大斧持ちのドワーフ。
えぇ…ズルくない!?

ユキさんは少しずつ下がりながら次々と襲い掛かる攻撃を大盾で受け止めていく。死角を作らない様にジリジリと下がって間合いを取っているんだ。

でもこのままじゃ追い詰められちゃうよ。

と、二刀の男と槍使いの攻撃が重なって互いに衝突する。

「邪魔するんじゃねーよ!」
「なんだと!テメェの方だろーが!」

2人で戦い始める。これなら残りの2人対1だ。

大剣の男が鋭い振り下ろしを見舞う。
ユキさんは盾を構えて突進して男の懐に入ると盾を振り抜いた。
カウンターチャージが決まって、男は弾丸の様に場外に飛んで行った。

「何だ今の!?」「スゲェ…」

観客もユキさんに釘付けだ。
大斧のドワーフが右側面から間合いを詰めてくる。斧を水平に構えてフルスイングする気だ。一方ユキさんは大盾を振り抜いてしまっている為防御が間に合わない。
ユキさんが視線をドワーフに向けるとスイングをやめて後ろに下がった。あれだけの威力を見せつけられた後だから警戒も強めるよね。簡単に目で去す事ができた。

警戒するのは大事だけど今に限っては悪手だ。万全の体制のユキさんが今度は逆に突進する。ドワーフは大斧を振り下ろしてぶつけるけど、それくらいでユキさんが止まる筈もなく。大きく跳ね飛ばされて場外に落ちていった。

「うおぉぉぉっっ!!スゲェ!!」
「あの子何者だよ!?」
「ありえねーだろ!!」

観客の盛り上がりが最高潮だ。ユキさんは特に気にするでもなく次々と残りの対戦相手を弾き飛ばしていく。

Aブロックのユキさんが一番初めに決勝進出を決めた。
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