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武具大会
夜の出来事
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今日の試合が全て終了したのでみんなで宿屋に帰る事になった。
2回戦の試合がかなり早く終わってしまったので予定よりも早く帰れるみたい。
まだ夜まで随分と時間がある。
また夜にはパーティがあるみたいだけど。
折角なので帰り道にある雰囲気の良いカフェに寄ってのんびりする事になった。
「成る程ね。で、その《パーフェクトディティクト》ってどんな魔法なの?」
「ええと、《鑑定》とほぼ同じって聞いたんですけど。」
受けた魔法は覚えているのでこの場で確認してみる。
【パーフェクトディティクト】
あらゆる隠蔽を看破して対象の情報を閲覧する。
物凄い魔法だ。みんなに効果を伝えた。
「しかし何であのドワーフがそんな物を持っている?大会では魔法は禁止だ。それを破ってまでという事は…。」
クロウさんの言う通り、魔法も禁止だし付与魔法も発動させれば魔法に変わりはないのだから反則だ。しかも分からないように仕掛けてきたということは間違いなく意図的にやっている。
対戦相手全員にやっている可能性は?
[その他の試合では当該魔法を検出しませんでした。]
つまり私をピンポイントで狙ったって事だよね…。
「どこかの間者かも知れないね。」
ルーティアさんはそう結論付けた。全員同じ意見だ。
「ミナの警備を強化しようか。」
「これ以上何を増やすんだ?今でも十分だろ。」
「エリストのAランク冒険者3人にSランク冒険者1人、邪竜に聖竜、チートレベルの転生者が3人。これ以上に強化するってダンジョンマスターとか竜王を集めるー?」
「これ以上は必要ないですよ!何と戦うつもりですか!?」
十分ですよ。私だって戦えるんだから!
「まあ確かに、ここは敵地という訳ではないのだし警戒し過ぎもいかんかもしれないな。だが油断はするなよ。ダキア、クロウ、アリソンはミナの側から離れるな。私はグレードンに話して今日の対戦相手のドワーフを探してもらうよう言ってくる。それが済んだら直ぐに宿に戻るからそれまでは外出はするな。いいな。」
「分かりました。」
「おう。」「了解。」「任せてよー。」
のんびりお茶するつもりが暗い話になっちゃったかな。何か申し訳ない。
ーーーー
夕方。
困った事が起こっていた。
どこで知られたのか私たちの泊まる宿屋にいろんな人が詰めかけていた。
主にはこの大会で私達の活躍を見て会いに来てくれた人、つまりはファンの人だ。
ユキさんに会いにきた人は種族は幅広く男女問わず、ソラちゃんはティターニアとドワーフの若い男性、テュケ君は主に人間の女性、私には人間の男性とドワーフの鍛治師達。
特にドワーフの鍛治師達からは「あの装備の製法を教えてくれ」とか「うちの工房で働いてくれ」「うちの工房で鍛治師達を指導してくれ」等と熱烈な申し出があった。
あと一部の鍛治師から「結婚してくれ」とか言われているらしい。鍛治の腕で結婚したいとか言われるのがドワーフの社会なのかな?
…ん?
私はティターニアじゃないからね!
宿屋に詰めかけた多くの人達は外でダキアさん達が何とか跳ね返してくれている。
宿屋の人には迷惑を掛けちゃうし何か申し訳ない。
「こりゃ随分と賑やかになったねぇ。」
お城から戻って来たルーティアさんが呆れ顔で言っている。
「こんな事ってあるんですか?」
「前例が無いとは言い切れないが、私が知る限りでは初めてじゃないかね?」
「ベスト4をエリストの冒険者で総ナメだからね。しかも同じパーティ。私も鼻が高いわ。」
リオさんは嬉しそう。
「グレードンに話をしたら、『警備を強化するなら城に泊まった方がいい』って言ってくれてな、今からみんなで城に移ろうと思うんだが。」
「こんな騒ぎの中を出歩くんですか?」
「《テレポート》を使えばいいだろう。」
「そうでした。」
「一応馬車の手配はしておいた。この宿から移動したと分かるようにする為にな。その馬車は空で城に言ってもらう事になるが。」
「お腹空いた。」
「もうすぐ夜ですからね。夕飯をこちらでいただいてしまいましょうか。」
「そうね。今回はパーティに出るのはやめておきましょう。」
「ん。早くご飯~。」
「オレも腹減ったよ。」
「じゃあご飯にしよう。」
全員で食堂に降りていく。ダキアさん達のお陰で食堂にファンが詰め掛けているという事は無かった。
「お騒がせしてすみません。」
「いやいや、いい宣伝になりそうですよ。今泊まっている人達にはご迷惑をお掛けしてしまっていますが。」
「迷惑料として皆さんの宿代をこちらでお支払いします。」
それくらいさせてもらおう。
「宜しいのですか?」
「はい。それと国王陛下のお計らいでお城に移る事になりましたので、申し訳ないのですが精算をお願いします。」
「分かりました。」
「ならここは私が払うよ。」
「いえ!私が払いますから大丈夫です。」
「じゃあ折半しようか。これでも結構お金は持ってるんだよ?」
「分かりました、それじゃあお願いします。」
支払いの関係を打ち合わせてようやくご飯だ。注文をする頃にはダキアさん達が戻ってきた。
「外は兵士が替わってくれた。今からメシか?」
「皆さんありがとうございました。」
ルーティアさんが3人にお城に移る事を伝えてくれた。
「あのー。」
話をしていたら男の人が声を掛けてきた。一般的な服装、腰には護身用の短剣が下げられているだけ。旅人さんか商人さんかな?
「先程お話を聞いてしまったのですが、宿代を支払っていただけるとか…。」
「はい。ご迷惑をお掛けしてしまいましたので。」
「そうですか…しかし外は凄い騒ぎですなぁ。大会ベスト4が全員ここにおられるので仕方の無い事かも知れませんが。ところで貴女がミナ様ですか?」
「はい。私です。」
「そう…ですか。」
「!?ミナさん!」
ユキさんが叫ぶとほぼ同時に喉がカッと熱くなる。
目の前にはさっきの男の人。
手には短剣、血で濡れている。
飛び散る鮮血。何が起こったの…?
服の中、胸元でパキンと何かが砕ける音がした。
[護身のアミュレットが効果を発揮。致命傷を修復しました。]
致命傷…?私が?
慌てて席を立って椅子を蹴り飛び退く。
喉の辺りに血が付いてる。今の一瞬で斬られたの…?
「アミュレットかよ。運の良いガキだ。」
「テメェ!」
ダキアさんが男に掴みかかる。クロウさんとアリソンさんも剣を抜いて斬り込んでいる。が、そこには既に男は居ない。
「遅せぇな。…一撃は耐えたがもうアミュレットは持って無いだろう?」
その声は私の耳元で聞こえた。
この人…敏捷特化だ。
お腹の辺りが熱くなる。次いで来るのは激しい痛み。
刺された。
ポタポタと血が流れる音がする。今の一瞬で何回刺されたの…?
「残念だったなぁ!これでお前もお終いだ。」
な、んで……。
気が遠くなり力も入らない。
[緊急対応措置…私の指示に従ってください。]
ヘルプさん…ごめん…よく聞こえない…。
2回戦の試合がかなり早く終わってしまったので予定よりも早く帰れるみたい。
まだ夜まで随分と時間がある。
また夜にはパーティがあるみたいだけど。
折角なので帰り道にある雰囲気の良いカフェに寄ってのんびりする事になった。
「成る程ね。で、その《パーフェクトディティクト》ってどんな魔法なの?」
「ええと、《鑑定》とほぼ同じって聞いたんですけど。」
受けた魔法は覚えているのでこの場で確認してみる。
【パーフェクトディティクト】
あらゆる隠蔽を看破して対象の情報を閲覧する。
物凄い魔法だ。みんなに効果を伝えた。
「しかし何であのドワーフがそんな物を持っている?大会では魔法は禁止だ。それを破ってまでという事は…。」
クロウさんの言う通り、魔法も禁止だし付与魔法も発動させれば魔法に変わりはないのだから反則だ。しかも分からないように仕掛けてきたということは間違いなく意図的にやっている。
対戦相手全員にやっている可能性は?
[その他の試合では当該魔法を検出しませんでした。]
つまり私をピンポイントで狙ったって事だよね…。
「どこかの間者かも知れないね。」
ルーティアさんはそう結論付けた。全員同じ意見だ。
「ミナの警備を強化しようか。」
「これ以上何を増やすんだ?今でも十分だろ。」
「エリストのAランク冒険者3人にSランク冒険者1人、邪竜に聖竜、チートレベルの転生者が3人。これ以上に強化するってダンジョンマスターとか竜王を集めるー?」
「これ以上は必要ないですよ!何と戦うつもりですか!?」
十分ですよ。私だって戦えるんだから!
「まあ確かに、ここは敵地という訳ではないのだし警戒し過ぎもいかんかもしれないな。だが油断はするなよ。ダキア、クロウ、アリソンはミナの側から離れるな。私はグレードンに話して今日の対戦相手のドワーフを探してもらうよう言ってくる。それが済んだら直ぐに宿に戻るからそれまでは外出はするな。いいな。」
「分かりました。」
「おう。」「了解。」「任せてよー。」
のんびりお茶するつもりが暗い話になっちゃったかな。何か申し訳ない。
ーーーー
夕方。
困った事が起こっていた。
どこで知られたのか私たちの泊まる宿屋にいろんな人が詰めかけていた。
主にはこの大会で私達の活躍を見て会いに来てくれた人、つまりはファンの人だ。
ユキさんに会いにきた人は種族は幅広く男女問わず、ソラちゃんはティターニアとドワーフの若い男性、テュケ君は主に人間の女性、私には人間の男性とドワーフの鍛治師達。
特にドワーフの鍛治師達からは「あの装備の製法を教えてくれ」とか「うちの工房で働いてくれ」「うちの工房で鍛治師達を指導してくれ」等と熱烈な申し出があった。
あと一部の鍛治師から「結婚してくれ」とか言われているらしい。鍛治の腕で結婚したいとか言われるのがドワーフの社会なのかな?
…ん?
私はティターニアじゃないからね!
宿屋に詰めかけた多くの人達は外でダキアさん達が何とか跳ね返してくれている。
宿屋の人には迷惑を掛けちゃうし何か申し訳ない。
「こりゃ随分と賑やかになったねぇ。」
お城から戻って来たルーティアさんが呆れ顔で言っている。
「こんな事ってあるんですか?」
「前例が無いとは言い切れないが、私が知る限りでは初めてじゃないかね?」
「ベスト4をエリストの冒険者で総ナメだからね。しかも同じパーティ。私も鼻が高いわ。」
リオさんは嬉しそう。
「グレードンに話をしたら、『警備を強化するなら城に泊まった方がいい』って言ってくれてな、今からみんなで城に移ろうと思うんだが。」
「こんな騒ぎの中を出歩くんですか?」
「《テレポート》を使えばいいだろう。」
「そうでした。」
「一応馬車の手配はしておいた。この宿から移動したと分かるようにする為にな。その馬車は空で城に言ってもらう事になるが。」
「お腹空いた。」
「もうすぐ夜ですからね。夕飯をこちらでいただいてしまいましょうか。」
「そうね。今回はパーティに出るのはやめておきましょう。」
「ん。早くご飯~。」
「オレも腹減ったよ。」
「じゃあご飯にしよう。」
全員で食堂に降りていく。ダキアさん達のお陰で食堂にファンが詰め掛けているという事は無かった。
「お騒がせしてすみません。」
「いやいや、いい宣伝になりそうですよ。今泊まっている人達にはご迷惑をお掛けしてしまっていますが。」
「迷惑料として皆さんの宿代をこちらでお支払いします。」
それくらいさせてもらおう。
「宜しいのですか?」
「はい。それと国王陛下のお計らいでお城に移る事になりましたので、申し訳ないのですが精算をお願いします。」
「分かりました。」
「ならここは私が払うよ。」
「いえ!私が払いますから大丈夫です。」
「じゃあ折半しようか。これでも結構お金は持ってるんだよ?」
「分かりました、それじゃあお願いします。」
支払いの関係を打ち合わせてようやくご飯だ。注文をする頃にはダキアさん達が戻ってきた。
「外は兵士が替わってくれた。今からメシか?」
「皆さんありがとうございました。」
ルーティアさんが3人にお城に移る事を伝えてくれた。
「あのー。」
話をしていたら男の人が声を掛けてきた。一般的な服装、腰には護身用の短剣が下げられているだけ。旅人さんか商人さんかな?
「先程お話を聞いてしまったのですが、宿代を支払っていただけるとか…。」
「はい。ご迷惑をお掛けしてしまいましたので。」
「そうですか…しかし外は凄い騒ぎですなぁ。大会ベスト4が全員ここにおられるので仕方の無い事かも知れませんが。ところで貴女がミナ様ですか?」
「はい。私です。」
「そう…ですか。」
「!?ミナさん!」
ユキさんが叫ぶとほぼ同時に喉がカッと熱くなる。
目の前にはさっきの男の人。
手には短剣、血で濡れている。
飛び散る鮮血。何が起こったの…?
服の中、胸元でパキンと何かが砕ける音がした。
[護身のアミュレットが効果を発揮。致命傷を修復しました。]
致命傷…?私が?
慌てて席を立って椅子を蹴り飛び退く。
喉の辺りに血が付いてる。今の一瞬で斬られたの…?
「アミュレットかよ。運の良いガキだ。」
「テメェ!」
ダキアさんが男に掴みかかる。クロウさんとアリソンさんも剣を抜いて斬り込んでいる。が、そこには既に男は居ない。
「遅せぇな。…一撃は耐えたがもうアミュレットは持って無いだろう?」
その声は私の耳元で聞こえた。
この人…敏捷特化だ。
お腹の辺りが熱くなる。次いで来るのは激しい痛み。
刺された。
ポタポタと血が流れる音がする。今の一瞬で何回刺されたの…?
「残念だったなぁ!これでお前もお終いだ。」
な、んで……。
気が遠くなり力も入らない。
[緊急対応措置…私の指示に従ってください。]
ヘルプさん…ごめん…よく聞こえない…。
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