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魔王

北の柱

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『グラートさんは精霊王だったんですか?』
『いや、あれから長い年月を経て王になった。ヴィエトも風の精霊王をやっておるぞ。』

長い年月…何千年も経っているからね。私にとってはついこの間の事だけど。

『シュピルツァの…エルフの皆さんを助けてくれたんですね。ありがとうございました。』
『懐かしい気配を感じたのでな。あの魔王とやらに狙われているのかも知れんと思わず助けてしまった。まさか本当にミナだったとは思わなんだ。』

私が過去の世界から消滅してからの話とか、色々聞きたい事はあるけどまた今度ゆっくり話をしたいと思う。

みんなのいる家に戻って話の続きをしよう。

「ミナさんは…グラート様とはどういった関係で?」

戻ってくるなりアイルアーヴさんに聞かれた。
さっきのやり取りが聞こえていたのかな?

「ええと、ずっと昔に契約しました。」
「契約…!?」
「ヴィエトさんとも契約していますよ。」
「風の精霊王…!?」
「はい。昔ちょっと…。」
「宝具を使わずに……」
「あー…父上母上、この子は色々おかしいから深く考えない方がいい。今は精霊王を使役しているとだけ認識してくれれば。」

ルーティアさん、色々おかしいは酷くないですか?

「いやそれだけで充分混乱するよ。」
「精霊王を使役だなんて……」

アイルアーヴさんとエストレリアさんが落ち着くまで少し休憩になった。

「きゅ、休憩するんだろっ?はなっ…離してください!」
「落ち着くまでこうしているわ。」
「エスト、次は私の番だ。ルーティアを渡しなさい。」

微笑ましい光景なんだけど…何だろう、少し前に似た光景を見た様な気がする。

休憩の間に村の中を散歩してみる。
この村の中の食料事情は安定しているみたいで全員元気だ。
病気が蔓延している様な事もなく衛生状態も良好。
私達の支援は必要ないかな。

戻ってきたら2人とも落ち着きを取り戻していたので話を再開することに。
ルーティアさんも普通に椅子に座っていた。

「それでは魔王を倒して柱を破壊してしまおうと思うのですが、柱の近くに味方はいますか?」
「いないはずだよ。」
「ハーフデビルの部隊はかなりの数がいましたね。」

そうすると大魔法で吹き飛ばすのは良くないか。

「《レイブラスター》で狙撃しようか。余程の事がない限り防がれたりはしないと思うし。」
「はい。魔王が分散した時の事だけ気を付けておいた方がいいですね。」

アイルアーヴさんとエストレリアさんとは魔王が個別に動き出した場合の対応を打ち合わせする。

シュピルツァの皆さんにはレイファードの部隊が展開してきた時に対応してもらうのと、魔王の1体を対応してもらう事になった。

装備が十分ではなかったのでインベントリの中で作って配っておいた。

アイルアーヴさんは無限矢筒とオリハルコンの矢を、エストレリアさんにはオリハルコンとグランフィリーズの合金で作った長剣を渡しておいた。

「この矢があればあの魔王とも戦えそうだ。」
「ありがとうございます。使わせていただきますね。」

大きな魔王については私が優先的に対応する事に。他の2体は他のみんなで対応してもらうことになった。

「部隊の編成に半刻もらえるかな。編成がすみ次第すぐに展開するからね。」
「私とアイルは皆さんと一緒に行きます。」

私達も戦闘の準備をしよう。

「…て言ってもやる事はいつもと同じだし、一人で無理せず連携重視で宜しく。」

リオさんの言う通りで、私達のやる事はいつもと変わらない。魔法による攻撃で柱を破壊、魔王が出てくればその都度対応。始める前に全員に飛行魔法を付与して竜達にも支援してもらう。

「森の王と軍神か。一体の魔王を2人だけに任せて大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うぞ。俺が一対一でやれるんだから2人なら充分だろう。」

クロウさんの疑問にマサキさんが答える。もし危なそうなら応援に行けるようにしておこう。

「初手は私が撃つわね。それで破壊できない場合は魔王への対応後に柱を攻撃で宜しく。」
「分かりました。」

準備が整ったので柱に向けて出発する。

私達は飛行魔法で空から、エルフ、ダークエルフ、フェザーフォルクの混成部隊は地上から移動して部隊を展開させる。
その数およそ100。
半刻かかると言ったのは周辺の村に戻っていた全力を集める為だったらしい。
一時間程度で集められるのはスゴいんじゃないかな?

村からある程度離れた所で攻撃を開始する。
私は《フォルトゥナ》を作動させてオーバーブーストをリオさんに付与する。

「やるわよ。《レイブラスター》!」

巨大な光条が柱に向かって飛んでいく。

柱の目の前には一際大きな魔王が一体。4本腕に二対の翼、エストレリアさんが言っていた魔王だ。

《レイブラスター》が大きな魔王に命中した。

しかし、光条は魔王の前で拡散してあちこちに飛んでいってしまった。

「あれを防ぐなんて…きっと特殊なギフトを持っているわ。」
「私が迎撃します!」

他の魔王も現れてこちらに向かって飛んでくる。大きな魔王は柱の前から動かない。

《亜空間跳躍》で他の魔王達をやり過ごして大きな魔王の目の前に出る。

「その力は…貴様、我らの力を奪うというのは本当になのだな?」
「はい。あなた達は何故こんな事をするのですか?」

この魔王とは話が出来そうだ。少しでも情報を引き出せないかな。

「我はあの方に賛同する者。あの方は貴様の抹殺を目的としている。」

私を殺す事を目的にしている?

「それはいつからですか?私が魔王を倒しているからですか?」
「否。それはあの方の存在理由ではない。」

存在理由?つまり私を殺す為に魔王が生まれたった事?それってまさか…

「あなた達は転生者ですか?」
「否。」

転生者じゃないのなら心当たりは一つ。
…考えたくないけど。

「始めよう。」

4本腕の大きな魔王が動いた。
右側の2本の拳を振り抜いてくる。

私は《ラズルシェーニェ》を作動させて2本の腕を両手で受け止める。
触れただけで魔王の大きな拳は消滅する筈……って、消滅しない!?

よく見れば拳の一部分と腕や胴体、翼が少しずつ削れている。

何これ…?

[相手のギフトでしょう。攻撃は《耐衝撃》で防いでいますが打撃のダメージは通ります。気を付けてください。]

圧力で吹き飛ばされるような事はなかったけど受け止めた手がヒリヒリと痛む。

《ラズルシェーニェ》だけじゃ倒せないか…。使うしかないかな。

私は《シャイターン》を作動させた。
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