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クローゼットを開く。
一人で着られるドレスは昨日着てしまった。
「あ、これ……」
袖が取れていて直してアイロンをかけたドレスも一人で着られるタイプのドレスだ。薄い黄色い色。
着替えて、髪を整える。とはいえ、カツラだとばれないようにするため凝った髪型にもできない。まぁ一人じゃどうにもならないから地毛でも一緒だっただろうけれど。
それから見様見真似の化粧。徹夜だったので、気を抜くと眠気に襲われる。
お父様と一緒に向かったのは、子爵家主催のお茶会だ。
主催者に挨拶すると、早々にお父様は私のことは忘れてしまったかのように、周りの参加者に話しかけていく。
「いやぁ、実はうちのアイリーン、侯爵夫人のジョアン様に気に入られましてねぇ」
「え?アイリーン嬢が?接点がありましたかな?」
「アイリーンが作ったハンカチに目が留まったようで。そりゃもう、うちの娘は刺繍が得意で」
「ほう、だが、刺繍が得意というなら、うちの娘だって負けておりませんぞ」
「どうですかなぁ。ありきたりのハンカチでは目に留まることなどでないと思いますけどねぇ」
お父様がそう言いながら私が刺繍をした濃紺色のハンカチを出して見せている。
「こ、これは……」
「驚くでしょう?センスがいいと言いますか。これでなんと先日は侯爵様のお屋敷に御呼ばれして1泊したほどですよ」
「それは、本当に気に入られたのでしょう」
お父様がそこで、わざとらしく物を取り落とした。
「おっと、失礼。出がけに手紙を読み返していてポケットに入れっぱなしになっていたようだ」
どうやら、侯爵家の紋のはいった手紙を落としたみたいだ。
……そうか。
急に予定になかったお茶会に出席するのは、このためだったのか。
侯爵家に気に入られているというのをアピールしたかったのだ。
ジョアン様は、徹夜で刺繍をさせたお父様をあまりよくは思っていなかった。見せびらかしている刺繍も、徹夜でさせたことが伝わらなければいいけれど……。
「デザインもさることながら、刺繍の腕も確かですな」
「でしょう、娘はこの繊細な刺繍を一晩で仕上げてしまったんですよ」
お父様の自慢話が続いている。けれど、私にはとても聞いていられない。
私の自慢をしているようで、侯爵家に好かれる娘を持っている自分を自慢したいだけだというのがすぐに分かってしまった」
お父様から距離を取ると、すぐに令嬢に行く手を阻まれる。
そしてあっという間に5人の令嬢に囲まれた。
「また、凝りもせず平民の子がのこのことやってきたの?」
「あんたさ、いい加減にしなさいよ。アランディス様に色目を使ったでしょう!彼はヘレーゼの婚約者なのよ?」
誰?
アランディス様?ヘレーゼ?
一人で着られるドレスは昨日着てしまった。
「あ、これ……」
袖が取れていて直してアイロンをかけたドレスも一人で着られるタイプのドレスだ。薄い黄色い色。
着替えて、髪を整える。とはいえ、カツラだとばれないようにするため凝った髪型にもできない。まぁ一人じゃどうにもならないから地毛でも一緒だっただろうけれど。
それから見様見真似の化粧。徹夜だったので、気を抜くと眠気に襲われる。
お父様と一緒に向かったのは、子爵家主催のお茶会だ。
主催者に挨拶すると、早々にお父様は私のことは忘れてしまったかのように、周りの参加者に話しかけていく。
「いやぁ、実はうちのアイリーン、侯爵夫人のジョアン様に気に入られましてねぇ」
「え?アイリーン嬢が?接点がありましたかな?」
「アイリーンが作ったハンカチに目が留まったようで。そりゃもう、うちの娘は刺繍が得意で」
「ほう、だが、刺繍が得意というなら、うちの娘だって負けておりませんぞ」
「どうですかなぁ。ありきたりのハンカチでは目に留まることなどでないと思いますけどねぇ」
お父様がそう言いながら私が刺繍をした濃紺色のハンカチを出して見せている。
「こ、これは……」
「驚くでしょう?センスがいいと言いますか。これでなんと先日は侯爵様のお屋敷に御呼ばれして1泊したほどですよ」
「それは、本当に気に入られたのでしょう」
お父様がそこで、わざとらしく物を取り落とした。
「おっと、失礼。出がけに手紙を読み返していてポケットに入れっぱなしになっていたようだ」
どうやら、侯爵家の紋のはいった手紙を落としたみたいだ。
……そうか。
急に予定になかったお茶会に出席するのは、このためだったのか。
侯爵家に気に入られているというのをアピールしたかったのだ。
ジョアン様は、徹夜で刺繍をさせたお父様をあまりよくは思っていなかった。見せびらかしている刺繍も、徹夜でさせたことが伝わらなければいいけれど……。
「デザインもさることながら、刺繍の腕も確かですな」
「でしょう、娘はこの繊細な刺繍を一晩で仕上げてしまったんですよ」
お父様の自慢話が続いている。けれど、私にはとても聞いていられない。
私の自慢をしているようで、侯爵家に好かれる娘を持っている自分を自慢したいだけだというのがすぐに分かってしまった」
お父様から距離を取ると、すぐに令嬢に行く手を阻まれる。
そしてあっという間に5人の令嬢に囲まれた。
「また、凝りもせず平民の子がのこのことやってきたの?」
「あんたさ、いい加減にしなさいよ。アランディス様に色目を使ったでしょう!彼はヘレーゼの婚約者なのよ?」
誰?
アランディス様?ヘレーゼ?
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