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「だけど、ずいぶん評判悪いだろう?」
「評判が悪いって、かわいいから女どもが嫉妬して虐めてるだけだろう」
「まぁ、それもあるだろうけど、母親が寝取り女だろ?しかも姉があれだ」
「あはは、逆にそれってさ、アイリーンだけじゃなくて、義母や姉とも仲良くできるってやつじゃね?」
「じゃあ、お前ねらってみたら?」
「でも、ちょっとかわいいからって、えり好みしてるんだろ?」
「馬鹿にした目で見てることあるよなぁ。生意気に」
「選べる立場じゃねぇって分からせてやりゃいいんじゃないか?」
「くくく。そうだな、じゃ三男とはいえ伯爵家の俺が、分からせてやろうか」
「アランディス、お前悪い男だなぁ。婚約したばかりだろ?ヘーゼル嬢が泣くぜ?」
「構やしないさ。アイリーンが俺を誘惑してきたって言えばヘーゼルは疑いもしないさ」
 男たちの足音が聞こえなくなるまで、生垣の影で身を固くする。
 何……。どういうこと?
 アイリーンはかわいいからモテているのではないの?
 いいようにからかわれているだけ?
 やだ。帰りたい。
 お父様は見て見ぬふり。令嬢には直接悪く言われ、令息には陰でいろいろ言われ……変な目で見られて。
 たくさん人がいるのに、みんなが敵で……。
 アイリーンはどうやってお茶会を乗り切っていたの?
 ねぇ、アイリーン。楽しそうにお茶会に出ていたでしょう?
 あれは本心じゃなかったの?
 それとも、たまたま今日はこんな風に扱われているだけど、ちゃんとお茶会には親しい人もいて楽しんでいたの?
 もっと……奥へ……人の目が怖い。
 客のいない所へ……。
 庭園の奥。背の高い色とりどりの薔薇に囲まれた場所に噴水があった。
 ほっと息を吐き出す。
 誰も花にも噴水にも興味がないのか人の姿はない。
 噴水の縁に腰掛ける。
 このまましばらく時間をつぶそう。
 いいえ、せっかくだから薔薇の花を楽しもう。
 気持ちを切り替えて、薔薇の花に目を向けると、一人の男性の姿が目に入った。
 赤毛の背の高いそれなりに整った顔の青年だ。
「ああ、こんなところにいたのかい。アイリーン」
 この声!
 先ほどアイリーンに分からせてやると言っていた声の主だ。
 確か……。
「アランディス様……」
 アランディス様はすたすたと何の戸惑いもなく私の方へと向かって歩いてくる。
 逃げよう。
 立ち上がった時には、すぐ目の前まで来ていた。
「アイリーン、こんな人気のないところでどうしたんだい?気分でも悪いのかい?」
「あの、大丈夫ですから……アランディス様は、その……婚約者のところへお戻りください」
 なんとか顔に笑顔を貼りつけてアランディス様に答える。
「ああ、僕の婚約の話を聞いてショックを受けたんだね?……ごめん。親が決めたんだ。断り切れなくて……。でも、愛してるのはアイリーン、君だけだよ。信じて欲しい」
 アランディス様が手を伸ばして私の手に触れた。



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お察し、アランディス、名前が覚えられない
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