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再会

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「えっ」
「俺だよ、綾人あやひと。梨央は綾ちゃんって呼んでくれてたっけ」
「えっ……綾ちゃん!?」

──綾ちゃん!?

 えっえっ。綾ちゃん? マジで? 女子、ではなかったの……?

「そう! 俺、綾ちゃん」
「随分背が伸びたね。全然分からなかった……」
「だろう。うわッ」

 二人で話していたら、三吉君が綾ちゃんをベリッと俺から剥がした。

「んだよ修斗」
「五月蠅い」
「よし、挨拶済んだから仕事に戻るぞ」
「え~~、はぁい」

 ADさんに諭されて、しょぼんとした綾ちゃんが離れていく。

「梨央~またな~」
「うん、またね」

 手を振りながら、俺はどっっと疲れてしまった。

 まさかの再会。
 まさかの男。

 しかも俺よりずっとがっしりしてた。

 思い出の綾ちゃん、思い出のままそっと心の奥に仕舞っておくね……。

「あれが綾ちゃん? タイミング良過ぎ」
「はは、みたい。十年以上経ってるから全然違っててびっくり、というか、女子じゃなかった」
「うん」

 遠くを見つめる。綾ちゃんがADさんに叱られてヘラヘラしてる。大丈夫かな。そういえば、さっき何か違和感があったような。

「あ! 三吉君、綾ちゃんと知り合いだったの!?」
「ああ、昔から知ってる奴だけど、アイツが上渡君が言う綾ちゃんってことは知らなかった」
「そうなんだ。そうだよね」

 だよね。まさか、ガタイの良い成人男性が俺の思い出の女子だとは思わないよね。

「うわ~……。でも、また会えてよかった。今どうしてるかなって思ってたから」
「そうか」

 しっかり働いててえらい。真面目かどうかはちょっと分からないけど、大変な業界に挑戦するのはえらい。

「またゆっくり話したいな」
「そう」

 その時は三吉君も一緒がいいな。綾ちゃんと友だちらしいし、どうせならみんなで食事に行きたい。

「上渡さん、次のシーンですけど」
「はい」

 そういえば撮影中だった。いけない、仕事モードに戻さないと。

 今日は飲み会のシーン。会社の飲み会中俺が中畑さんにビール零されちゃって、洗濯するからって中畑さん宅に連れて行かれる回。ちょいちょいで中畑さんに何かぶっかけられてる高西。可哀想なスーツ。今日もクリーニング行きだ。

 ADさんに説明され、居酒屋のセットに入る。おお、ビール。ノンアルコールだけど、見た目が一緒だから本物にしか見えない。
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