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今後の方針
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1000枚の金貨を手にしてしまった俺が、その一部を持って訪れた場所。
それは、商人ギルドだった。
受付に現れたのは、3年前から変わらず俺の担当職員であるラード。
いくら解毒ポーションを安く買われていることを訴えても、面倒臭そうに「他の薬屋に契約を変えたところで一緒だ」と繰り返すだけで全く話を聞いてくれなかった張本人だ。
「本日はどういった御用で?」
俺の方をちらと見るなり、男はため息を吐くように言った。
「ポーションを卸している薬屋との契約を、解除したいと思ってきました」
するとラードは、3年前に相談を持ちかけたときと全く変わらぬ口調で言った。
「あなたみたい相談、山ほどされるんですよ。
でもね、契約している薬屋を変えたところで状況は変わりませんよ?
買値が安いとか人間関係がどうだとか、不満が色々とあるのは分かります。でもそんなの、どこに行ったって一緒ですからね。結局別の薬屋と契約したって、そこでまた同じようなことを不満に思うだけですよ。
そうやっていろんなところにふらふら移ったところでね、いいことは何一つありません。契約先の信頼を損ねるだけです。
契約してくれる店のあるうちが華ですよ。あなただって、どの店からも買い取ってもらえなくなったら困るでしょう?」
「えっと、すみません。今日は契約先を他に変えて欲しいという相談じゃないです」
「は?」
肩掛けかばんの中から、巾着を取り出してテーブルの上に置く。
どさっ。
ラードは、面倒臭そうに巾着の中を覗く。中に入っているのが金貨だと気が付いた途端、顔色が変わった。
「ええ、えっと。このお金は、あなた……様の?」
「ええそうです。今の薬屋との契約を解除して、自分で新たに店を開こうと思っているのですが。
これくらいあれば足りそうですか?」
「しょ、少々お待ちください!!」
男は慌てて中にすっ飛んでいった。
商売系のギルド職員は、こちらが金を持っているかどうかで大きく態度が変わると聞いたことがあるけれど。どうやらその噂は本当らしい。
ラードがせかせかと戻ってきた。
隣に連れてきた上司らしき人が、低い姿勢で俺に話しかけてきた。
「申ー----し訳ございません!!!! わたくし、ギルド長のムスタフでございます。詳しいお話を聞かせていただきたいので、こちらのお部屋へよろしいでしょうか??」
まさかギルド長じきじきに応対してくれるとは。持ってきたのは金貨500枚だったが、効果は抜群だ。
「あ、はい。よろしくお願いします」
俺は金貨の入った袋をかばんにしまい、ギルド長の後に続いた。
ラードの前を通るとき、奴はにへらにへらと媚びるような笑みを浮かべてきた。
今までの失礼な態度を、慌てて取り戻そうとしているのがよくわかる。
俺はにっこりと笑みを返した。
今さら態度を変えたって、この3年の恨みは消えないからな。
俺の表情が好意的でないと感じ取ったらしい。ラードの顔は、見事に引きつっていた。
通された個室には、赤い、いかにも高級そうな絨毯が敷き詰められていた。
ソファを勧められて座ってみると、ベッドにしたくなるぐらい沈み込んだ。温かいハーブティーを出される。嗅いだことのない華やかな香りが、鼻腔をくすぐった。
それからギルド長直々に、今の薬屋との契約解除の書類を作製してくれる。この商人ギルドで今まで受けてきた応対とは、180度異なる丁寧さだった。
それが終わるとギルド長ムスタフは、おずおずと口を開いた。
「では、今後のことについてお伺いしたいのですが……」
それは、商人ギルドだった。
受付に現れたのは、3年前から変わらず俺の担当職員であるラード。
いくら解毒ポーションを安く買われていることを訴えても、面倒臭そうに「他の薬屋に契約を変えたところで一緒だ」と繰り返すだけで全く話を聞いてくれなかった張本人だ。
「本日はどういった御用で?」
俺の方をちらと見るなり、男はため息を吐くように言った。
「ポーションを卸している薬屋との契約を、解除したいと思ってきました」
するとラードは、3年前に相談を持ちかけたときと全く変わらぬ口調で言った。
「あなたみたい相談、山ほどされるんですよ。
でもね、契約している薬屋を変えたところで状況は変わりませんよ?
買値が安いとか人間関係がどうだとか、不満が色々とあるのは分かります。でもそんなの、どこに行ったって一緒ですからね。結局別の薬屋と契約したって、そこでまた同じようなことを不満に思うだけですよ。
そうやっていろんなところにふらふら移ったところでね、いいことは何一つありません。契約先の信頼を損ねるだけです。
契約してくれる店のあるうちが華ですよ。あなただって、どの店からも買い取ってもらえなくなったら困るでしょう?」
「えっと、すみません。今日は契約先を他に変えて欲しいという相談じゃないです」
「は?」
肩掛けかばんの中から、巾着を取り出してテーブルの上に置く。
どさっ。
ラードは、面倒臭そうに巾着の中を覗く。中に入っているのが金貨だと気が付いた途端、顔色が変わった。
「ええ、えっと。このお金は、あなた……様の?」
「ええそうです。今の薬屋との契約を解除して、自分で新たに店を開こうと思っているのですが。
これくらいあれば足りそうですか?」
「しょ、少々お待ちください!!」
男は慌てて中にすっ飛んでいった。
商売系のギルド職員は、こちらが金を持っているかどうかで大きく態度が変わると聞いたことがあるけれど。どうやらその噂は本当らしい。
ラードがせかせかと戻ってきた。
隣に連れてきた上司らしき人が、低い姿勢で俺に話しかけてきた。
「申ー----し訳ございません!!!! わたくし、ギルド長のムスタフでございます。詳しいお話を聞かせていただきたいので、こちらのお部屋へよろしいでしょうか??」
まさかギルド長じきじきに応対してくれるとは。持ってきたのは金貨500枚だったが、効果は抜群だ。
「あ、はい。よろしくお願いします」
俺は金貨の入った袋をかばんにしまい、ギルド長の後に続いた。
ラードの前を通るとき、奴はにへらにへらと媚びるような笑みを浮かべてきた。
今までの失礼な態度を、慌てて取り戻そうとしているのがよくわかる。
俺はにっこりと笑みを返した。
今さら態度を変えたって、この3年の恨みは消えないからな。
俺の表情が好意的でないと感じ取ったらしい。ラードの顔は、見事に引きつっていた。
通された個室には、赤い、いかにも高級そうな絨毯が敷き詰められていた。
ソファを勧められて座ってみると、ベッドにしたくなるぐらい沈み込んだ。温かいハーブティーを出される。嗅いだことのない華やかな香りが、鼻腔をくすぐった。
それからギルド長直々に、今の薬屋との契約解除の書類を作製してくれる。この商人ギルドで今まで受けてきた応対とは、180度異なる丁寧さだった。
それが終わるとギルド長ムスタフは、おずおずと口を開いた。
「では、今後のことについてお伺いしたいのですが……」
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