18 / 38
収穫と課題
しおりを挟む
王都の北にある、ユグラルの森。
ポーションの素材となる薬草・毒草などは豊富にあるが、CやDといった中級クラスの魔物が出るため、俺とリミヤだけではどうしても踏み込めなかった場所だ。
しかし今、俺とリミヤは初めてその森に来て、素材調達を行っている。
もちろんそれが可能になっているのは……先を行く、B級冒険者アーガスのおかげだ。
「ユグラルの森か……あそこだったら、ほとんど魔物に出くわさないな」と、行先を決める話し合いのときに言っていたアーガス。
その言葉通り、森に入ってから随分と歩いたのに、まだ一度も魔物に出くわしてない。
『これくらい歩けば、魔物の数が極端に少ないロールの森でさえ、何らかの魔物の姿を見かけることがあるのに。
やっぱりアーガスのスキル……「威圧者」の力は、本物のようだ』
俺は迷いなく進んでいくアーガスの背中を見ながら、頼もしく思った。
『しかし問題は……』
後ろを振り返る。
まるで俺の影のようにぴったりと、背後にくっついてくる錬金術師の少女、リミヤ。
もちろん彼女が恐れているのは、いつ飛び出してくるか分からない厄介な魔物…………ではない。
先頭を行く仲間、アーガスである。
アーガスとの契約を交わしているときに、偶然、店に戻ってきたリミヤ。
(戻ってきた理由は、精製できる8つのポーションのついての説明を書いて見せてくれたリストに、一部誤りがあったことというものだったが、特に気になるミスではなかった)
そこで俺は彼女にアーガスを紹介し、『威圧者』についても説明した上で、今日の素材調達に望んだわけだが。
リミヤは初対面から、ずっとこの調子だった。
アーガスとは会話するどころか、まともに目を合わせることもできず、ずっと俺の後ろに隠れている。
『店が始まってからは、俺は店番をしないといけないし、二人だけで素材調達に行ってもらうおうと考えてたんだけど……この調子だと無理っぽいんだよなぁ』
俺は素材調達の間じゅう、ぐるぐると頭を悩ませ続けた。
「本当に、1回でこの額をもらっていいのか?」
薬屋まで戻ってきて、1日分の護衛報酬として事前に取り決めた金貨1枚を手渡すと、アーガスは眉間に皺を寄せて言った。
「もちろん。素材もどっさり調達できたしね」
俺の鞄の中には、50本分のポーションが出来上がっていた。ロールの森では、どれだけ頑張っても1日20本が限界だったのに、今日は簡単に2.5倍のポーションが精製できた。
まさかこんな量になると思っていなかったので、50本しか薬瓶を持っていなかったのだが、持っていく薬瓶の数を増やせばあと2、30本は余裕で精製できそうだった。
こんな具合で俺一人でも十分元を取れる状態だったが、それに加えてリミヤの両肩に下げた素材回収袋もぱんぱんである。
金貨1枚なんて、すぐにおつりの来る出費だ。
「分かった。じゃあありがたくいただいておく」
アーガスはそう言って、金貨1枚を腰に下げた巾着に収めた。
「こちらこそありがとう。じゃあ次もよろしくね」
「ああ」
そう言って、アーガスは夕暮れの街を、帰って行った。
『収穫だけでいったら、予想以上なんだけど……』
俺はため息をつきつつ、薬屋の中に戻った。
「リミヤ」
俺が声をかけると、彼女はびくりと肩を震わせた。
そして目にもとまらぬ素早さで、亀のように地面に丸くなった。
「こ、この通りですぅぅぅぅぅ、クビにしないでくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
『いや、しないけどさ……』
どうしたものかな、と、俺はぽりぽり頭を掻いた。
「アーガスの何が苦手なの?」
俺はリミヤを落ち着かせて、まずは話を聞いてみることにした。
ポーションの素材となる薬草・毒草などは豊富にあるが、CやDといった中級クラスの魔物が出るため、俺とリミヤだけではどうしても踏み込めなかった場所だ。
しかし今、俺とリミヤは初めてその森に来て、素材調達を行っている。
もちろんそれが可能になっているのは……先を行く、B級冒険者アーガスのおかげだ。
「ユグラルの森か……あそこだったら、ほとんど魔物に出くわさないな」と、行先を決める話し合いのときに言っていたアーガス。
その言葉通り、森に入ってから随分と歩いたのに、まだ一度も魔物に出くわしてない。
『これくらい歩けば、魔物の数が極端に少ないロールの森でさえ、何らかの魔物の姿を見かけることがあるのに。
やっぱりアーガスのスキル……「威圧者」の力は、本物のようだ』
俺は迷いなく進んでいくアーガスの背中を見ながら、頼もしく思った。
『しかし問題は……』
後ろを振り返る。
まるで俺の影のようにぴったりと、背後にくっついてくる錬金術師の少女、リミヤ。
もちろん彼女が恐れているのは、いつ飛び出してくるか分からない厄介な魔物…………ではない。
先頭を行く仲間、アーガスである。
アーガスとの契約を交わしているときに、偶然、店に戻ってきたリミヤ。
(戻ってきた理由は、精製できる8つのポーションのついての説明を書いて見せてくれたリストに、一部誤りがあったことというものだったが、特に気になるミスではなかった)
そこで俺は彼女にアーガスを紹介し、『威圧者』についても説明した上で、今日の素材調達に望んだわけだが。
リミヤは初対面から、ずっとこの調子だった。
アーガスとは会話するどころか、まともに目を合わせることもできず、ずっと俺の後ろに隠れている。
『店が始まってからは、俺は店番をしないといけないし、二人だけで素材調達に行ってもらうおうと考えてたんだけど……この調子だと無理っぽいんだよなぁ』
俺は素材調達の間じゅう、ぐるぐると頭を悩ませ続けた。
「本当に、1回でこの額をもらっていいのか?」
薬屋まで戻ってきて、1日分の護衛報酬として事前に取り決めた金貨1枚を手渡すと、アーガスは眉間に皺を寄せて言った。
「もちろん。素材もどっさり調達できたしね」
俺の鞄の中には、50本分のポーションが出来上がっていた。ロールの森では、どれだけ頑張っても1日20本が限界だったのに、今日は簡単に2.5倍のポーションが精製できた。
まさかこんな量になると思っていなかったので、50本しか薬瓶を持っていなかったのだが、持っていく薬瓶の数を増やせばあと2、30本は余裕で精製できそうだった。
こんな具合で俺一人でも十分元を取れる状態だったが、それに加えてリミヤの両肩に下げた素材回収袋もぱんぱんである。
金貨1枚なんて、すぐにおつりの来る出費だ。
「分かった。じゃあありがたくいただいておく」
アーガスはそう言って、金貨1枚を腰に下げた巾着に収めた。
「こちらこそありがとう。じゃあ次もよろしくね」
「ああ」
そう言って、アーガスは夕暮れの街を、帰って行った。
『収穫だけでいったら、予想以上なんだけど……』
俺はため息をつきつつ、薬屋の中に戻った。
「リミヤ」
俺が声をかけると、彼女はびくりと肩を震わせた。
そして目にもとまらぬ素早さで、亀のように地面に丸くなった。
「こ、この通りですぅぅぅぅぅ、クビにしないでくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
『いや、しないけどさ……』
どうしたものかな、と、俺はぽりぽり頭を掻いた。
「アーガスの何が苦手なの?」
俺はリミヤを落ち着かせて、まずは話を聞いてみることにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
333
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる