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第十一章 慌ただしき日々。そして、続かぬ平穏。

第179話 一つ一つ片付けますかねぇ。②

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    (今日も難題が山積みだねぇ。一つ片付ければ、一つ新しく増えるし。
朝から頭が痛いよ。でも、放って置くわけにもいかないしね。まあ、愚痴っても仕方ないので、始めますかねぇ。)

    まずは、領内に新たな不審者が入ったらしい件から手を着ける事にする。

    「〈マップ表示・オン〉。」

    目の前にツールの町の拡大図が映る。縮尺を調整して町全体が映るようにする。
続いて不審者の洗い出しだ。

    「〈サーチ・闇ギルドの関係者〉。」

(ふむ、一月放って置いたら、また現れたか。正にGと同じだな。四人か。早速消毒消去してやる。)

    「〈マルチロック〉〈スタン〉〈マルチロック〉〈パラライズ〉。」

    まずは、動けなくさせる。マップ上の赤い光点は止まったまま、動かなくなった。
 赤い光点に〈鑑定〉をかけて、闇ギルドのメンバーであることと、犯歴を確認の上で、通告の為に魔法をかけた。

    「〈マルチロック〉〈テレフォン〉。あーあー、私の声が聞こえるかな?」

    四人に問いかけるが、四人同時に喋って来るため、『誰だ』位しか意味を聞き取れ無かった。しまったな(笑)。

    「私はこの町の領主のツール伯爵のオオガミだ。闇ギルドのメンバーが四人いることが分かったのでね。始末することにしたよ。生まれ変わって真人間になれよ。じゃあな。〈マルチロック〉〈ワームホール〉。」

    何か向こうで叫んでいるが、〈テレフォン〉を打ち切ってマップを確認すると、四つあった赤い光点が消えた。

(ピロ~ン♪『魔導の極み』により、〈魔力感知〉〈魔力操作〉が上がりました。)

(お、久々に上がったな。それに、まずは第一段階終了と。さて次にかかりますか。)

    「〈サーチ・ツール伯爵家以外の密偵〉。〈マップ表示〉国外の密偵は青で表示。」

(思ったよりは少ないが、一ヶ月もしない内に、もう次の密偵が送り込まれているとはな。え~と、全部で十三人か。鑑定して身元を確定するか。)

    鑑定の結果、五人がクロイセンからの密偵で、国内の貴族からが六人で、初めて聞く名前の国から二人いた。それはフォレスター王国という。一応マーカーを付けておくとしよう。
    国内の貴族からは、六人とも家の領地の南に隣接するケアンズ侯爵家から送られてきた密偵達だ。

(さて、こいつらをどうしたものか。正直消してしまっても密偵だから表立って文句は言えないだろうが、わざわざ同じ国のお隣さんとの仲を悪くするのも悪手だし、ここは警告だけにしておくか。)

    「〈マルチロック〉〈スタン〉。」

    一つの光点が動かなくなったのを確認してから〈テレフォン〉で六人のリーダーと鑑定であった者に話し掛ける。

「あーあー、聴こえているかな?」

(何者だ?)

「私かい?私はこの町の治安を守る者さ。ケアンズ侯爵家の密偵君。」

(ッ?!、どうしてそれを知っている?)

「だから治安を守る者だと言っただろう。この位の事を調べられずに治安は守れないさ。」

(・・・それで何用だ。この体が動かなくなったのも、お前の仕業か?)

「正解。用件は警告だよ。勝手に他の貴族の領地に密偵を送るのは感心しないね。仲間の五人と直ぐに出て行って下さい。家の領内のどこにいても、わかりますので領内から速やかに退去してくださいね。でないと、次は警告なしで攻撃することになります。ケアンズ侯爵様に知りたいことは、ツール伯爵家に正式に問い合わせて下さいと伝えてください。答えるかは分かりませんが。では、警告しましたからね。〈マルチロック〉〈キュア〉。」

〈テレフォン〉を切ると、マップの光点を注視する。
動けるようになったのか、他の五つの光点と集まっている。相談でもしているのだろうか。
まあ、こいつらは一段落着いたので、帝国からの密偵をどうするか考える。

    クロイセン帝国の密偵は五人いるが、鑑定の結果、ハミルトン隊長達と同じく奴隷の者が四人、リーダーと鑑定で出た者は、クロイセン帝国の正騎士だった。
    おそらく、前回ハミルトン達の時は、皆奴隷の者だけでここに送り込まれていた為に、何かの理由で逃げられたか殺されたとでも思ったのかもしれない。監視と統率のため正騎士が着いてきているのだろうと予想出来た。

    まずは、監視役の騎士をどうにかしないとな。
彼らは今、宿屋の部屋に固まっている様なので何かの相談でもしているみたいだね。まずは、話してみるか。
「〈マルチロック〉〈スタン〉〈マルチロック〉〈テレフォン〉。」

鑑定で帝国騎士と分かっている光点が止まったままになる。

「あーあー、聞こえるかな、クロイセンの騎士殿?」
「き、貴様、な、なにも、のだ?」
「うん、しっかり麻痺しているね。私はこの町の治安を預かる者だ。現在戦争中の敵国の騎士が、ウェザリア王国の奥深くのツールに何用かな?」
「・・・・。」
「そうですか。答える気は無い様ですね。分かりました。敵国の騎士が言えない理由で王国に潜入しているという事で、敵対行為と見なして抹殺します。後腐れなく消えて下さい。では、さようなら。〈マルチロック〉〈ワームホール〉。」
「お、おい。し、沈む。助けてくれー!」

〈テレフォン〉を切って、マップから光点が消えたことを確認する。

    (えーと、これで監視役はいなくなったわけだ。さて奴隷の方々に、事情説明しないとね。)

    マップ上で、慌ただしく動く残っている四つの光点に対して、魔法をかける。

「〈マルチロック〉〈スタン〉〈マルチロック〉〈テレフォン〉。あーあー、私の声が聞こえているかな?体が動かない事で慌てずに、まず私の話を聞いて欲しい。私はこの町の領主のオオガミだ。今、目の前でクロイセン帝国の騎士を魔法で消したのは見ただろう。君達を監視する者はいなくなった。そこで相談だが、もし私が君達にかけられている、隷屬魔法を解呪出来るとしたら、帝国から私の部下に鞍替えしないか?ああ、勘違いしないでくれよ。部下にならなくても、隷屬魔法は解いてやるから、行きたい所があるならそこへいけば良いし、どう選択するかは君達の自由だ。私は今領主屋敷にいる。皆と相談してその気なら会いに来て下さい。では、解呪を始めるね。〈マルチロック〉〈ディスペル〉〈マルチロック〉〈キュア〉。」 

    マップ上には、動けるようになったのか、四つの光点が動き出した。一ヶ所に集まり、相談でもしているのかな。

    (さて、何人が味方になってくれるかな?)


 
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