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第十五章 王都で貴族のお仕事。そして・・・。
第298話 やっとリヒトで一休み。
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「待てぃ!そこに進む車列はツール伯爵家一行とお見受けしたが、相違ないか?」
隠れて襲ってくるかと思っていたが、指揮官らしき男が、隊列を組んだ騎士達を従えて大声で問いかけてくる。
「相違無いと言えば、何とする?」
馬車から下りて、問いかけてきた相手にそう答える。
「相違無いなら、申し訳ないが、ここで死んで頂こう。」
「それは困るな。生憎とまだ生きてやりたい事があるのでね。手向かわせて貰うよ。レナード!」
「はっ!各位、抜剣迎え撃て。」
『おー!』
此方が剣を抜くと、相手側も一斉に剣を抜き、走り寄ってくる。
「〈火炎爆弾〉。」
こちらに走り寄ってくる集団の先頭に向けて、ソニアの魔法が発動する。見た目は野球の球位の大きさの火の玉だが、色が普通の赤ではなく、明るい黄色なのだ。
敵も、魔法とはいえ、拳程の大きさしかない火の玉なので、無視してそのままこちらに進もうとしたその時。
「ドッガーン!」
ダイナマイトが爆発したかの様に、直径二十メートル程の穴を地面に空けて爆発した。爆心地にいた十人程の騎士は爆発による爆風によって吹き飛ばされて宙に舞い地面に落ちた時には即死の様だ。
(おいおい、とても現地魔法とは思えない爆発力だね。威力を見ると通常の二倍の威力があるようだ。思わずソニアの顔を振り反って見ちまったよ。少しドヤ顔をしていたな。まあ見事に敵の足を止めたからね。では私も負けずに援護しますかね。)
「〈グラビティー〉五G。」
(ピロ~ン♪『魔導の極み』により、スキル〈暗黒魔法〉のレベルが上がりました。新しい呪文を覚えました。)
呪文が発動すると、途端に帝国騎士達は膝を曲げて、まるで重い鉄製のフルプレートメイルでも急に装着したかの様に、動きが鈍くなる。
「何をしている。さっさとかかれ!」
魔法を掛けられていないリーダーは苛立ったのか、しきりに切りかかれと発破をかける。
こちらの護衛の倍近い人数ではあるが、その動きはノロノロと亀で、とても正騎士とは思えない早さである。
こうなると、元々の速さに私の魔法で更に速さが強化されたウチの騎士には、対処出来る筈もなく、枯れ草を刈りとるように倒されていく。
予想外の展開に敵の指揮官は口を開けたまま、呆然としたいる。私はその男に向けて叫ぶ。
「おいおい後ろに隠れて、兵をけしかけるだけしか能がないのか?お前のその腰にある剣は飾りかい?」
「な、なにを!良いだろう。我が部隊はここで壊滅するようだが、せめてお前だけでも、道連れにしてやるわ。俺と一騎討ちしろ!」
「まあ、良かろう。相手をしてやるよ。」
インベントリィから、バスタードソードを取り出して腰に吊るす。
敵部隊は既に全滅していて、私と相手の指揮官をウチの騎士達が取り囲んでいる状態だ。相手の近くまで行くと、剣を抜いて向き合う。
「名前を聞いておこうか?」
「・・・帝国軍歩兵隊大佐ゲルハルト・ベルガー子爵。」
「私はツール伯爵兼王国軍将軍ショウイチ・オオガミだ。では、参る!」
名乗りをあげて、互いに剣を構える。いつもの半身の姿勢で相手の出方をまずは見る。
鑑定結果で、それなりに強いと出ていたが、確かに相手の発する剣気は中々強く、ウチの騎士団で言うと、ライガ位の強さを感じた。
思わず嬉しくなり、ニヤリと笑ってしまった。
侮られたと勘違いでもしたのか、顔を赤くして斬りかかってきた。
「チェイヤー!」
気合いと共に、騎士剣を振りかざして、叩き付けてくる。
中々の剣速で、確かにウチのビラ騎士では、立ち向かえないようだ。しかし、剣筋を見切り相手の左側に回り込んで回避する。
相手も剣を水平に払って、後ろに飛び退く。
「ほう、やるねぇ。良い反応をしている。惜しいな。どうだい、私に仕える気はないか?」
「はっ、戯れ言を言う。我が剣の師はザラ・メイル。お主に殺されたザラ帝国将軍だ。この話を持ち掛けられた時、目標がお前だと聞いて、私は自分から手を挙げたのだ。師匠の敵だ。そんなお前に仕えるだと?お断りだ!」
「そうか、ザラ将軍の弟子か。成る程、ならばこれ以上の言葉は要らないな。互いの剣で語るとするか。」
降伏させることは諦めて、倒しに行くことに、気持ちを切り替える。
〈舜歩〉で一気に間合いを詰めて斬り着ける。
いきなりの攻撃に、落ち着いて騎士剣で受け、二撃目も同じく剣で受け止められる。
「ほお、その腕前なら、技だけは既にザラ将軍を越えているね。」
「お褒めに預り恐縮だ。だが、手加減はせんぞ。」
互いに鍔迫り合いから、同時に引くと、再び構えをとる。
「では、ザラ将軍を倒した技であの世に行って貰うかな。」
「なにを?良いだろう。やってみるが良いわ。」
その言葉を聞きながら、全身に『気』を巡らせ、剣にも纏わせる。
「では行くぞ。」
間合いをジリジリ詰めながら、『気』を纏った〈舜歩〉を発動する。
一瞬私の姿を見失ったのか、反応が遅れるが、ギリギリで私の逆水平の払いを騎士剣を立てて受け止める。
私は構わす剣を払いきる。
『ギンッ!』
受け止められた剣は相手の騎士剣を無視したかの様に切り裂いて、そのまま相手の首を斬り飛ばした。師匠のザラ将軍と同じように、顔に驚いた表情を張り付けたまま転がっていく。
(ピロ~ン♪『武技の極み』により、『職業、魔法剣士』のレベルが上がりました。)
「バカだな。基本は回避だろうに。鉄の盾でさえ切り裂く斬撃を細い剣で止められる訳はないのにな。相手の力量を見誤ったね。師のザラと同じ間違いで死んだか。皆、見ていたな?覚えておけよ。相手によっては防御自体が隙になることを。よし皆、死体の片付けをするぞ。」
『はっ!』
味方に声をかけて、死体の処理を始める。相手が騎士なので、まだ使える武器や防具を剥ぎ取る。
「〈ディグ〉、〈ディグ〉、〈ディグ〉・・・。」
今回は人数が多いので、複数の穴を掘り中に死体を入れる。そして〈ピュリフィケーション〉で浄化してから埋める。
流石に、今日二度目なので慣れたものだ。しかし、面倒臭い事だが、やらないとアンデッドモンスターで甦ってしまうからね。やらざるを得んのだ。
その後、敵の襲撃は無く無事に馬車は進めたが、結局襲撃者の始末に時間をとられ今日中にリヒトへは到着は出来ずに、翌日の昼に着くことになった。
それにしても、いくら少人数とはいえ、百人単位の帝国人の国内への侵入に気が付かないなんて、少し危機感が足りないのではと思ってしまうな。今回のことは王宮に報告しないとね。また面倒な事になるかな。
隠れて襲ってくるかと思っていたが、指揮官らしき男が、隊列を組んだ騎士達を従えて大声で問いかけてくる。
「相違無いと言えば、何とする?」
馬車から下りて、問いかけてきた相手にそう答える。
「相違無いなら、申し訳ないが、ここで死んで頂こう。」
「それは困るな。生憎とまだ生きてやりたい事があるのでね。手向かわせて貰うよ。レナード!」
「はっ!各位、抜剣迎え撃て。」
『おー!』
此方が剣を抜くと、相手側も一斉に剣を抜き、走り寄ってくる。
「〈火炎爆弾〉。」
こちらに走り寄ってくる集団の先頭に向けて、ソニアの魔法が発動する。見た目は野球の球位の大きさの火の玉だが、色が普通の赤ではなく、明るい黄色なのだ。
敵も、魔法とはいえ、拳程の大きさしかない火の玉なので、無視してそのままこちらに進もうとしたその時。
「ドッガーン!」
ダイナマイトが爆発したかの様に、直径二十メートル程の穴を地面に空けて爆発した。爆心地にいた十人程の騎士は爆発による爆風によって吹き飛ばされて宙に舞い地面に落ちた時には即死の様だ。
(おいおい、とても現地魔法とは思えない爆発力だね。威力を見ると通常の二倍の威力があるようだ。思わずソニアの顔を振り反って見ちまったよ。少しドヤ顔をしていたな。まあ見事に敵の足を止めたからね。では私も負けずに援護しますかね。)
「〈グラビティー〉五G。」
(ピロ~ン♪『魔導の極み』により、スキル〈暗黒魔法〉のレベルが上がりました。新しい呪文を覚えました。)
呪文が発動すると、途端に帝国騎士達は膝を曲げて、まるで重い鉄製のフルプレートメイルでも急に装着したかの様に、動きが鈍くなる。
「何をしている。さっさとかかれ!」
魔法を掛けられていないリーダーは苛立ったのか、しきりに切りかかれと発破をかける。
こちらの護衛の倍近い人数ではあるが、その動きはノロノロと亀で、とても正騎士とは思えない早さである。
こうなると、元々の速さに私の魔法で更に速さが強化されたウチの騎士には、対処出来る筈もなく、枯れ草を刈りとるように倒されていく。
予想外の展開に敵の指揮官は口を開けたまま、呆然としたいる。私はその男に向けて叫ぶ。
「おいおい後ろに隠れて、兵をけしかけるだけしか能がないのか?お前のその腰にある剣は飾りかい?」
「な、なにを!良いだろう。我が部隊はここで壊滅するようだが、せめてお前だけでも、道連れにしてやるわ。俺と一騎討ちしろ!」
「まあ、良かろう。相手をしてやるよ。」
インベントリィから、バスタードソードを取り出して腰に吊るす。
敵部隊は既に全滅していて、私と相手の指揮官をウチの騎士達が取り囲んでいる状態だ。相手の近くまで行くと、剣を抜いて向き合う。
「名前を聞いておこうか?」
「・・・帝国軍歩兵隊大佐ゲルハルト・ベルガー子爵。」
「私はツール伯爵兼王国軍将軍ショウイチ・オオガミだ。では、参る!」
名乗りをあげて、互いに剣を構える。いつもの半身の姿勢で相手の出方をまずは見る。
鑑定結果で、それなりに強いと出ていたが、確かに相手の発する剣気は中々強く、ウチの騎士団で言うと、ライガ位の強さを感じた。
思わず嬉しくなり、ニヤリと笑ってしまった。
侮られたと勘違いでもしたのか、顔を赤くして斬りかかってきた。
「チェイヤー!」
気合いと共に、騎士剣を振りかざして、叩き付けてくる。
中々の剣速で、確かにウチのビラ騎士では、立ち向かえないようだ。しかし、剣筋を見切り相手の左側に回り込んで回避する。
相手も剣を水平に払って、後ろに飛び退く。
「ほう、やるねぇ。良い反応をしている。惜しいな。どうだい、私に仕える気はないか?」
「はっ、戯れ言を言う。我が剣の師はザラ・メイル。お主に殺されたザラ帝国将軍だ。この話を持ち掛けられた時、目標がお前だと聞いて、私は自分から手を挙げたのだ。師匠の敵だ。そんなお前に仕えるだと?お断りだ!」
「そうか、ザラ将軍の弟子か。成る程、ならばこれ以上の言葉は要らないな。互いの剣で語るとするか。」
降伏させることは諦めて、倒しに行くことに、気持ちを切り替える。
〈舜歩〉で一気に間合いを詰めて斬り着ける。
いきなりの攻撃に、落ち着いて騎士剣で受け、二撃目も同じく剣で受け止められる。
「ほお、その腕前なら、技だけは既にザラ将軍を越えているね。」
「お褒めに預り恐縮だ。だが、手加減はせんぞ。」
互いに鍔迫り合いから、同時に引くと、再び構えをとる。
「では、ザラ将軍を倒した技であの世に行って貰うかな。」
「なにを?良いだろう。やってみるが良いわ。」
その言葉を聞きながら、全身に『気』を巡らせ、剣にも纏わせる。
「では行くぞ。」
間合いをジリジリ詰めながら、『気』を纏った〈舜歩〉を発動する。
一瞬私の姿を見失ったのか、反応が遅れるが、ギリギリで私の逆水平の払いを騎士剣を立てて受け止める。
私は構わす剣を払いきる。
『ギンッ!』
受け止められた剣は相手の騎士剣を無視したかの様に切り裂いて、そのまま相手の首を斬り飛ばした。師匠のザラ将軍と同じように、顔に驚いた表情を張り付けたまま転がっていく。
(ピロ~ン♪『武技の極み』により、『職業、魔法剣士』のレベルが上がりました。)
「バカだな。基本は回避だろうに。鉄の盾でさえ切り裂く斬撃を細い剣で止められる訳はないのにな。相手の力量を見誤ったね。師のザラと同じ間違いで死んだか。皆、見ていたな?覚えておけよ。相手によっては防御自体が隙になることを。よし皆、死体の片付けをするぞ。」
『はっ!』
味方に声をかけて、死体の処理を始める。相手が騎士なので、まだ使える武器や防具を剥ぎ取る。
「〈ディグ〉、〈ディグ〉、〈ディグ〉・・・。」
今回は人数が多いので、複数の穴を掘り中に死体を入れる。そして〈ピュリフィケーション〉で浄化してから埋める。
流石に、今日二度目なので慣れたものだ。しかし、面倒臭い事だが、やらないとアンデッドモンスターで甦ってしまうからね。やらざるを得んのだ。
その後、敵の襲撃は無く無事に馬車は進めたが、結局襲撃者の始末に時間をとられ今日中にリヒトへは到着は出来ずに、翌日の昼に着くことになった。
それにしても、いくら少人数とはいえ、百人単位の帝国人の国内への侵入に気が付かないなんて、少し危機感が足りないのではと思ってしまうな。今回のことは王宮に報告しないとね。また面倒な事になるかな。
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