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第1章 ミリアナ・レインフォール

第2話 アバター現界

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 ―――気がつくと、確かに私は、イベント会場のステージに立っていた。大型スクリーンを背景に、アバター『ミリアナ・レインフォール』そのままの姿で。大勢の人々が、私を驚きの目で見ている。

 うん、間違いない。顔はわからないけど、装備とか背格好とか…あと、エルフ特有の長耳が視界に入る。…え、なにこれすごい、拡張現実AR技術の応用とか?

「…そんな、なぜ、こんなことが…!?」

 あれ、『ファラウェイ・ワールド・オンライン』の社長さんだよね? なんでびっくりしているの? 運営の仕込みなんじゃないの??

「おい、マジか…?」
「え、本当にアバターが現実化したの?」
「お前、ちょっと触ってこいよ」
「お前が行けよ! エルフスキーだろ!?」

 会場が困惑でざわつき始める。いや、一番困惑してるのは私なんだけど。ていうか、お触り禁止!

 埒が明かないので、驚きっぱなしの運営社長さんに近づく。

「えっと…これ、どうなってるんでしょうか?」
「私にも、全くわからない…夢を、見ているようだ」
「でも、ワールドアナウンスが言ってましたよね?『現実世界に転移できるようになった』って」
「確かに、そうなんだが…」

 そんな会話をしているところに、作業端末を持った技術スタッフらしき人が近づいてきた。

「今、管理AIを調べたのですが、開発した覚えのないプログラムモジュールを発見しました。ですが、完全にブラックボックス化していて、何がどうなっているのかさっぱり…」

 えー、それじゃあ、運営にもわからない現象ってこと? オカルトだよ!?

「えっと、霧雨きりさめ美奈子みなこさんですよね? ちょっと試してほしいことが…」
「ちょっ…! 本名言わないで下さいよ!」
「あ、ああ、すみません」

 周りには一般参加者だけでなく、マスコミ関係者もたくさんいる。『ファラウェイ・ワールド・オンライン』は世界規模で楽しまれているVRMMOだから、初の最終クエストクリアの様子は海外中継もされていた。ワールドワイドなリアバレは勘弁。

「それでですね、『ステータスオープン』と言ってくれませんか? ゲーム内と同じように」
「えー、リアルでそれは厨二っぼい…」

 私の右眼が疼くっ!? ってのと同じだよね。はずかしー。

「いや、その格好で既に…」
「はうっ。わ、わかりましたよ。『ステータスオープン』」

 ぶおんっ

「嘘おっ!?」
「間違いない! 霧…いえ、あなたは現実でも『ファラウェイ・ワールド・オンライン』と同じことができるんですよ!」
「えええ…じゃあ、とりあえずファイアボールぶっぱなしてみます?」
「シャレになってないのでやめて下さい。とりあえず、ログアウトを」

 ステータス画面はメニュー画面も兼ねているので、ログアウトボタンが右下に表示されている。ぽちっと。

 何度も経験した、体全体の存在感が消える感覚に襲われる。
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