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シェリ嬢の回想3

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 中等部時代、天使のようなマットは、その当時、声も女の子のように聞こえなくもなかった。

「僕のことを意識してくれてるってことだよね!」
 跳ねるマットの声に、シェリは意識を向ける。少し離れたところにはマディーとマットがいた。
 マットは満面の笑みで、マディーはうつむいている。
 シェリは一瞬で理解する。
 尊い会話があの二人の間で行われているんだと。

 少し離れているせいで、すべての会話は聞こえない。
 二人の会話は尊いものだ。聞いてはいけない。
 そう思ったが、ついシェリは耳をそばだててしまった。
「……婚約したいって言ったら、覚悟を問われたんだ!」
 婚約。シェリはマットの覚悟を知った。少なくとも、男性同士での結婚は認められてはいない。だが、マットはそれほどまでにマディーを愛しているのだろう。

 マディーがうつむく。
「か、覚悟って?」
 マディーも二人の関係が一般的に認められないのは理解しているんだろう。だが、二人の関係が認められるかもしれない可能性があることに、すがりたいのかもしれない。

 マットが遠くを見た。難しい条件が出されたのかもしれない。シェリは聞き漏らさないように集中した。
「まだ婚約には早いんじゃないかって」
 なんだ。
 シェリは拍子抜けした。
 マディーもホッとしている。マットの両親はどうやら寛容らしい。

「で、それのどこが覚悟を問われたことになるんだ?」
 ホッとしたマディーの問いかけに、マットが悲しい目をマディーに向けている。
「だって、愛し合っている僕らをすんなりとは認めないってことでしょう?」
 シェリはハッとする。

 マットは今すぐにでも二人の関係を大っぴらにしたいのかもしれない。それほどまでにマディーのことを愛しているのだ。
 尊い。
 その尊さに、シェリは心が満たされた。
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