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第3章

ファンタジーって凄い

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 リスたちに連れられて森の中の道無き道を進む。

 ていうか今の状況を他の人が見たらどう思うんだろうか?
 森の中を大量のリス型魔物を引き連れて歩く幼女……うん。やばいわ。

 幸いと言っていいのか、周りには人の気配はない。魔物の気配はそこら辺にウヨウヨあるんだけどね。てか魔物多いな?!森って大体こんなもんなのかな?

 だけど、なんでかは分からないけど、デカい反応の魔物は近づいて来ようとしない。かなり遠くにいる。しかもそっちに近づいたら離れてく。つまり逃げてるというか、避けてるってことだよね?何故?

『おそらく、マリーナ様の魔力を感覚で察知し、格上であると認識しているからでしょう』

 か、格上って…あれ、じゃあこの子達は?

『魔力を感知できる魔物は魔法が使えます。逆に言えば魔法が使えない魔物は察知出来ません。なので気にせず近づいてきます』

 なるほど。つまりこの子達は魔法が使えないのね?

『そういうことです』

 理解したわ。ていうかこの森の魔物って魔法が使えるのが多いのね。

『そうですね。だからこそマリーナ様を避けていますので』

 ……待って。第一に魔物に避けられる私ってどうなのよ。

『誇ることではあるのですよ?』

 いや、別にそんなこと誇りたくないからね!?

『しかし今後も同じような場面に遭遇するかと』

 だよねぇ…はぁ。なんか複雑。魔物は寄ってきて欲しくはないけど、逆に逃げられるって言うのもなんか私が人外みたいで……

『そもそも人ではありませんから』

 うるさーい!私はまだ認めてないからね!?

『……そうですか』

 あ!今呆れたでしょ?!

『……』

 いや無言やめて!?怖いよ!ていうかどうやって無言を表現してるのよ!?

『そういうものですので』

 ……なんか人間味おびてきたね。

『恐縮です』

 いや、褒めた訳じゃあ……

「キキッ!!」

 ハクと会話している間に、目的の場所へと着いたらしい。
 着いたのは……ただの森?

「ここなの?」

「キキッ!」

 問いかけると頷きながら鳴いたので、ここなんだろう。だけど、周りには木しか見えない。

「どこにあるの?」

 そう聞くと、オレンジ色の子はいきなり走って目の前の木によじ登った。
 え、どういうこと?

 私が理解出来ないでいると、おもむろにその子が木の肌を齧り出した。

「えぇ!?何してるの?!」

 いくら雑食だからって木の皮はだめじゃない?
 そう思ったけど、どうやら違うらしい。現に齧った木の皮は下に落ちていってるから。齧るというより…削る?

 しばらくそれを続けていると、傷付けたところから少しづつ樹液が滲み出てきた。その色が……真っ黒だった。

「え、まさかこれ?」

「キキッ!!」

 そうだよ!と言うふうに鳴き返してくれた…けど、樹液なの?

 ……いや、ここはファンタジーの世界なんだ。コンソメだって木の実だし。だから醤油が樹液ってことも有り得る…はず。

 意を決して滲み出てきた樹液を、指につけて舐めてみる。

「おおおぉぉー!!醤油だーー!」

 紛れもなく醤油だよ!疑ってごめん!ファンタジーって凄い。

「まさか樹液が醤油だなんてねぇ?絶対気づかないよ」

 木の肌を傷付けてみないと分からないんだもの。そもそもそんな発想もしないしね。これは聞いてよかった!
 早速採取することに。

「えっとー…ゴムの木みたいな感じでいいのかな?」

 ゴムの木から樹液をとるときみたいな傷を付けていく。地面に矢印が向いてるような傷ね。
 その先にひとまず鍋をおく。だけど醤油を入れる容器がない。

「うーん…ここの土からビンって創れる?」

『可能です。ただ、透明なガラスにはなりません』

 別に透明じゃなくていいから、それでいいや。
 地面に手をついて、イメージを固める。
 大きさは…そこまで大きくない、牛乳瓶くらいのが5本くらい。一升瓶くらいのが10本くらいあったらいいかな。

「よし!ちゃんとできた!」

 できたビンは磨りガラスで出来てるみたいだった。ただ、それだとちょっと強度が心配だなぁ…

『……でしたら強化魔法をかけてみては?』

 強化魔法?だけどそれって時間経過で消えない?

『生物ではない物体に施した強化魔法は基本消えません。簡単に言うなら、属性を付与するようなものです』

 おお。なるほど。
 早速強化魔法をかける。落としても割れないくらいの強度に強化するイメージで。

 一瞬だけビンが光ったけど、見た目は変わらなかった。まぁ出来てないならそれはそれでいっか。

「おお。もう溜まってる」

 鍋になみなみになるまで醤油が溜まっていた。直ぐに別の鍋に入れ替えて、溜まった醤油をビンに詰めていく。

「あ、ビン足りない」

 思ったより量が多かった。ビンを追加で創りつつ、詰めていく。ついでに多めにビンは創っておく。またなにかに使いそうだからね。

 また鍋がいっぱいになったら、空になった鍋と入れ替えて、ビンに詰めるという流れ作業をしばらく続けていると、だいぶ量が手に入った。てか樹液多いな!?まだ出てくるよ。

 さすがに傷付けたままじゃ可哀想なので、回復魔法をかけておく。すると一瞬で傷がふさがった。よし、これで大丈夫。

「キキッ?」

 もう終わり?とでも言うように、最初の白色の子が首を傾げてきた。

「うん。もう十分!それに日も暮れそうだしね」

 そう告げると、途端に悲しそうな顔になった。いや、そう見えるってだけだけど。

「ま、またくるから。ね?」

 そう言うと、なんか話し合いを始めたみたい。なんで?


 しばらくそれを眺めていると、どうやら終わったらしく、私の方を向いてきた。

「どうしたの?」

 すると、最初に近づいてきた白色の子が出てきた。そしてそのまま私の足元に駆け寄ると、足を登って私の肩に乗っかった。え、どういうこと?

「もしかして……連れていけって?」

 肩に乗った白い子に問いかけると、ブンブンと頭を縦にふった。さっきの話し合いはそのことを決めるため?

「でも、いいの?」

 ここを離れれば、しばらく会えなくなるかもしれない。
 そんな思いで尋ねると、そんなこと平気よ!とでも言うように、フンスッと鼻息を荒く吐いた。あ、そうですか……もう決定なんですね……

「じゃあまたね?」

「「「「キキッ!!」」」」

 私が手を振りながらお別れを告げると、みんな小さな手を振って送り出してくれた。
 やばい。写真撮りたい。作ろうかな。

 そんな馬鹿みたいなことを考えながら、私は森をあとにした。

















 ………肩にリスちゃんを乗っけて。あ、ハクに聞いたら女の子だったのよ。
 ………どうしようか、この子。


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