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第拾話-詐欺

詐欺-4

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 長四郎と燐が更衣室に戻ると、聞き込みを終えた絢巡査長が部屋を出ようとしているタイミングと被った。
「絢ちゃん、悪いんだけどもう少しだけ付き合ってくれない?」長四郎はすぐ様、願い出た。
「構いませんけど」
「よしっ、絢ちゃんのOKは出た。質問しな」
 長四郎はそう言って、尾多に質問するように促す。
「そうね。貴方、この聖人ぶっている胡散臭い人のマネージャーさんで良いんですよね?」
 燐はそう尾多に質問した。
「はい。マネージャーの尾多と申します」
「では、尾多さん。あなた、45分ぐらい前までジャケット着ていませんでした? それにシャツも変わっているように見えるんですけど?」
「え?」メイド服姿の女子高生から思わぬ質問を受け、変な返答をしてしまう尾多。
「ですから、着替えましたよね?」
「そ、そうですけど。それが何か?」
 周りに居る舞台スタッフのモブ高校生達も不思議そうな顔で燐の質問に耳を傾ける。
「率直に言います。貴方が殺したんじゃないんですか?」
「ラモちゃん!」
 率直すぎる質問に長四郎は、激昂し相手に掴みかかろうとする相棒を止める杉下右京みたく制す。
「でも、着替えているなんて怪しいじゃん!」燐は長四郎に制されていてもめげなかった。
「私のジャケットやシャツにジュースがかかってしまって急遽、着替えたんですよ」
「ほら、あの人だってそう言っているでしょ。ラモちゃん」
 絢巡査長もそう言って燐を宥めようとするが「で、でも」と燐は一歩も引き下がる感じは見せず絢巡査長が長四郎に助けを請おうと長四郎が立っていた所に視線を移すと、そこに長四郎の姿はなかった。
「あれ、長さん?」辺りを見回すと長四郎は尾多の体臭を嗅いでいた。
 その光景を見てモブ高校生達はドン引きし、オンジンも目を開き長四郎のこの行動を凝視する。
「うん、良い匂いだ。血生臭いが微かに感じるな」匂いをかぎ取った長四郎はそう感想を述べた。
「私、血生臭いですか?」
「ええ、血生臭いですねぇ~絢ちゃん、死体に刺し傷等がないか確認してもらえる?」
「あ、はい」絢巡査長はすぐ様、死体近くに居る一川警部に連絡を取る。
「一川さん、死体に刺し傷みたいなのってありませんか?」一川警部にそう質問をし、すぐに死体を確認したらしく「えっ、あるんですか!?」と絢巡査長の驚きの声が部屋に居る全員の耳に入った。
「という事みたいです」長四郎は淡々と尾多に言う。
「という事みたいですって・・・・・・・」
「申し訳ないですが、そのジュースがかかったとされるジャケット、シャツ見せて頂けないでしょうか? 貴方が返り血を浴びて着替えた可能性があるので」
「それは・・・・・・・」
 目を右往左往させながら困り果てる尾多に、燐は「早く見せなさいよ。見せたら、あんたの無実が証明されるんだから」と急かす。
「尾多さん、見せたらどうです?」そう言ったのはオンジンであった。
 オンジンにそう言われた尾多の顔は一気に青ざめた。
「す、捨てた」
「捨てたぁ? どこに?」
「忘れた」長四郎の質問に尾多は即答する。
「仕方ない。そういう事だから、絢ちゃん。全捜査員を使ってゴミ箱を調べさせよう」長四郎は冷静に伝えると「分かりました」とそう返事をし、電話の向こうに居る一川警部にその旨を伝えようとした時、尾多は長四郎を突き飛ばして更衣室から逃亡しようとする。
 が、ドアの近くに居た燐の華麗な投げ技を受け床に叩きつけられた尾多は悶絶しながら絢巡査長に確保された。
 この見慣れない光景にモブ高校生達とオンジンは只々、固まるだけであった。
 それから間もなくして、ゴミ箱内を捜索していた坊ちゃん刈りの鑑識捜査員が、血が着いたジャケットとシャツを発見した。
 そして、尾多はへケべケこと本名・赤海 寸あかうみ すん殺害容疑で緊急逮捕となった。
 文化祭は中止となり、生徒達は悲しそうな顔をしながら後片付けに徹するのだった。
 翌日、何故か長四郎は警視庁へと呼び出された。
 呼び出された理由も知らず、長四郎は命捜班の部屋に入る。
「お、来てくれたね。名探偵!!」一川警部は嬉しそうに長四郎を迎え入れる。
「今日はどうしたんですか?」用件を尋ねると「昨日の事件についてなんやけど」と昨日の事件についてのそれからについて一川警部は説明し始めた。
「あの逮捕した尾多の供述がどうもあやふや何よね?」
「と言いますと?」
「うん。最初はムカついたから殺したって言ってね。何にムカついたか、そん理由を聞いたったい。そしたら、よく分からんって言いよってね」
「よく分からないですか。あの男って、マネージャーをしていましたよね? 仕事関係でトラブルがあったんじゃないですか?」
「今、絢ちゃんがそれを聞き出しとうと」
「そうですか。それで、俺にどうしろと?」
「その被害者との関係を調べて欲しいんやけど」
「良いんすか? 俺で」
「人手回してもらえんし。事件解決に導いたのは長さんやから」
「俺じゃなくて、ラモちゃんですけどね」
「なんしか、調べてくれんね」
「了解です」
 長四郎は早速、捜査に取り掛かった。
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