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第拾壱話-仲間

仲間-17

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 一週間後
「そう言えばさ。一川ひとつかわさんの姿が見えないけど、どうしてるの?」
 今頃になって、一川警部が不在の事実に気づいた長四郎は絢巡査長に質問した。
「ああ、昔気質の働き方で休みなく働いていたんですよ。それが人事にバレて無理矢理の長期休暇取らされているんです」
「良い時代になったね。休みを取らせてくれるなんて」
「ホント。ホント」
 燐は相槌を打ちながら、コーヒーに口をつける。
「それで、あのジジィの汚職の捜査の方は順調なの?」
「ええ、順調みたいですよ。長さんが見つけてくれたあの手帳の解明がなされて今頃、賄賂を受け取った奴らの令状が発行されている頃じゃないですかね」
「頑張ったかいがあったね。長四郎」
「やかましいわ。何にもして無いくせに」
「あんだってぇ~」
 燐の怒りに触れた長四郎はお仕置きを喰らう。
「でも、凄い仲間意識ですよね」燐は長四郎にヘッドロックをかけながら、貴島のことについて話し始める。
「まぁ、苦楽を共にしてきた仲間だからこそ、分かるものもあるんじゃない?」
「苦楽を共にしてきた仲間かぁ~」
「あの静って女は、相当な役者なのかもな」
「どういう意味?」燐はその意味を尋ねる。
「ん? その仲間意識を利用して、貴島達に手を下させた。自分の手は一切汚さずに」
「全部、仕組まれてたって事ですか? 長さん」
 絢巡査長は、ヘッドロックをかけられたままの長四郎に質問する。
「そうかもしれないって言う俺の推理。そんでもって最後の狙撃の時は派手な服を着て標的の位置を教えるとは策士のやることだよな」と長四郎の回答を聞き、燐は静を見た時に抱いた違和感の答えが導き出され少しすっきりする。
「でも、仲間意識が強いって良いことですよね」
「どうかしたの? ラモちゃん」
 遠い目をする燐を見て、絢巡査長はその真意を聞く。
「いや、私にはそういうのいないなぁ~と思って」
「え~私達って仲間じゃないの?」
「あ、そういえばそうですね」
「ひっどぉ~い」
「えへへへ」
「そんな事よりさ、ラモちゃん。そろそろ外さないと長さん、死ぬよ」
 絢巡査長の忠告を受けて、長四郎に目を向けると白目を向いてグロッキーな状態になっていた。
「あ、やべっ!! やり過ぎた!!!」
 燐は慌てて、ヘッドロックを解除する。
「ラモちゃん、ほどほどにしないと長さん、死んじゃうよ」
「多分、こいつは死なないから大丈夫ですよ」
「そうかもねぇ~」
 絢巡査長はそんな会話も平凡な日常を楽しむ一つなのだと改めて実感するのであった。

第拾壱話・完
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