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第拾弐話-監禁

監禁-12

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 絢巡査長は表裏の捜査を続けていく中で、気になる事を発見した。
 それは、逮捕歴のある患者の7割が再犯をしているという事であった。
 しかも、全ての事件において寛解の方向にあると診断された患者ばかりなのだ。
「斉藤君、これどう思う?」
 絢巡査長が声を掛けると、「あっ! はい!!」と机に突っ伏して寝ていた齋藤刑事は跳び起きる。
「ここに載っている人達をどう思う?」
「失礼します」資料を受け取った齋藤刑事は目を通す。
「どう?」
「言いたい事としては、再犯しているのがどれも表裏の患者って事ですかね?」
「それ以外にもあるでしょう」
「え?」再び、資料を読む齋藤刑事。
「分からないの? 二重と似た症状だとは思わない?」
「そうですね」
「という事は、共犯は表裏の可能性が高いって事じゃない」
「これらの事件、全てに表裏が関わっているっていう事ですか?」
「今回の事件の起点も表裏にあると思うんだけど」
「そうですかね・・・・・・」何とも言えない絢巡査長の推理に、戸惑う齋藤刑事を他所に絢巡査長はこれからの捜査方針を伝える。
「私はこれから長さんの所に行くから、斉藤君は表裏の方をお願い」
「分かりました。二重の方はどうしますか?」
「そっちは応援を出してもらいましょう。捜一から」
「課長に相談します。任せてください」
「宜しくぅ~」
 絢巡査長はカバンを手に取ると、長四郎の事務所に向かった。

 一川警部が目を覚ますと、目の前に黒ずくめの男が立っていた。
「だいぶ寝ていたみたいだな。どうだ、突き付けられた現実は? 残り時間、34時間。どうやら、お仲間はここの場所を特定できないようだな」
「目覚め一発目の言葉がそれじゃ、モテないよ」
「そうか。それより、命乞いしないのか? 34時間しかないんだぞ」
「34時間もあるけん。そげん急がんでも、大丈夫」
「いつまで余裕をこいてられるのかな?」
 一川警部の腹にパンチを決め込む。
「もう殴られすぎて、痛みも感じなくなってきたばい」
「チッ!!」男は悔しそうに舌打ちをする。
「そんな事より、トイレに行きたいんやけど」
「我慢しろ」
「勘弁してよ。もようしてから、どんくらい時が経ったと思っとうと」
「分かった。漏らされても困るからな」
 男は一川警部を椅子から立たせるとトイレへと連れて行く。
「あ~すっきりした。助かったばい」
 一川警部は男に礼を言うと同時に、男の顔面にパンチを決め込み走り去る。
 だが、男達から受けたダメージが効いているらしく思うように走れなかった。
「きつかぁ~」
 一川警部は苦しそうにしながら、必死に出口に向かって走り続ける。
 出口に差し掛かった時、一川警部の身体に衝撃が走り意識を失う。
「やれやれ、危うく逃げられるところだった。今回は今までの中で一番楽しいゲームだから、こんな形で終わるのは御免だ」
 もう一人の男は、一川警部の身体を引きずりながら監禁部屋へと連れて行くのだった。

「おはようございまぁ~す」
 絢巡査長は挨拶しながら事務所に入ると、地図と睨めっこしながら一川警部の居場所を特定しようと頑張る燐、ソファーに横たわって眠る長四郎。
「あ、絢さん。おはようございます」
「この様子じゃあ、成果なしな感じだね」
「すいません」
「ラモちゃんが謝る必要はないよ。私の方も表裏が事件に関わっている証拠を見つけてないから」
「大変そうですね」
「うん。でも、表裏が今回の事件にも関わっている可能性があることは分かったんだけど」
「それって関わっていた犯罪歴のある患者が再犯していたとか、そんな感じ?」
 目が覚めた長四郎の第一声はそれであった。
「その通りです。長さん」
「やっと、起きたの? もう8時間も経ったんだけど」
「よく寝たから、元気千倍バイキンマン」
「つまんな」燐のその言葉に同調するように絢巡査長も「うん、つまらないです」と冷めきった目で長四郎を見る女性二人。
 そんな二人に見つめられながら、寝ぐせで跳ねた髪の毛をちょんちょんと突く長四郎なのであった。
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