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第弐拾壱話-海外

海外-16

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「それは、じ・か・い」
 長四郎が言うと同時に、燐のタイキックが尻に思い切り入る。
 勢い良く吹き飛ばされる長四郎はデモンに飛びかかる。
「うわっ!」
 デモンを地面に押し倒すと、デモンのポケットから何かが転がり落ちる。
「これは?」
 ミシェルはデモンに拾われる前にそれを手に取って、確認する。
「これ、何かのスイッチ」
 円筒の先についたボタンを押そうとするミシェルに「押しちゃダメ!!」と咄嗟に燐がそれを止める。
「どうして、止めるの?」ミシェルが真意を尋ねると、「これで仲間を呼ぶんです」と答える。
「確かに仲間を呼ぶための装置だ」デモンは焦る様子もなく答える。
「組織のだろ」
 痛む尻をおさえながら、長四郎が言う。
「何を根拠に?」
「言ったろ? 隠密行動していたって。そんでさ、俺の知り合いの知り合いにFBIの人間が居てな。そいつに聞いたんだよ。あんたの知り合いのFBI捜査官が居るのかをさ」
「そしたら、デモンなんて警察官は知らないってさ。勿論、同名の人で知っているって答えた人はいるけどね」
「そ、そんな事はない!」
「そうだろ。そうだろ。大概の人間はそう言う」
「本気で俺がアマンダを殺したとでも言うのか?」
「デモン、それは違うぜ。お前は実行犯じゃない。実行犯を手引きした存在だって事だ」
「手引き? 何を証拠に」
「証拠なら、ここに」
 燐はスマホを取り出して、ある音声を流す。
「俺が部下に命じて、アマンダを殺害させた。デモンから消すように依頼を受けたからな」
 その声は、自称幹部の男の声であった。
「彼、あっさりと司法取引に応じたらしいわ」
 燐にそう言われたデモンは「デタラメだ! 罠だ!!」と喚いて無実を証明しようとする。
「はいはい。それは警察署で聞くから、大人しくして」
「嫌だね」デモンはコートのポケットに手を突っ込み、ミシェルが持つ円筒のスイッチと同じ物を取り出してスイッチを押す。
「これでお前達も終わりだ」
 デモンは勝ち誇ったような顔をすると同時に、長四郎達を囲むようにぞろぞろと人間が出てきた。
「そうだな。終わりだな」
 長四郎は観念したように両手手を挙げる。
「良い子だ。すぐに楽にさせてやる」
 デモンがそう言った瞬間、デモンの身体に衝撃が走る。
 テーザーガンを身体に打ち込まれた。
「あーあ、楽になったのはお前の方だったな」
 長四郎が話し掛けると、デモンは苦しそうに「FBIを手引きしていたのか・・・・・・・」と聞くと「That’s Right.(その通り)」とだけ答えるのだった。
 それから二日後、長四郎と燐はサンフランシスコ国際空港に居た。
 今度こそ、日本に帰る為だ。
「Thank you for your help this time.(今回は、助けてくれてありがとう)」
 日本語の話せないリイルが二人に礼を言う。
「Your welcome.(どういたしまして)」燐がそう答える。
 英語の話せない長四郎は、不服そうにしているとミシェルが話しかけてきた。
「本当にありがとう。リイルの無実を証明してくれて」
「証明したのは俺じゃないし。でも、彼女も不運だったな。偶々、家に行ったら襲われて犯人に仕立て上げられそうになったんだから」
「そうね」
 アマンダが殺害され、クリスマスパーティーに参加する為に家を訪れたリイルは実行犯に多量の酸素を吸わされ、一時的に意識を失いその際に凶器を握らされた。
 デモンが寄越した警察官に発見され、そこで今回の事態に至った。
 飛行機搭乗のアナウンスが流れる。
「じゃ、行くわ」
「ええ、また」
 ミシェルと硬い握手を交わすと、長四郎は燐を連れて搭乗ゲートへと入って行った。

                                                   完
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