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本編●主人公、獲物を物色する
ぼくはお祝いパーティを見物する
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ぼくの隣でリウイが顔面偏差値を正式認定されてから、どんな感じになったのかを適当に説明するね。
まぁ、驚かされたが。リウイも一緒だという所を除けば概ね予定通りだったよ。
認定後、少し休憩してから。
認定時に立ち会っていない貴族達を相手に、国王陛下が認定宣言をした後、ぼくとリウイの顔面を披露した。
玉座の前に、両翼のように用意された席に座するぼくとリウイの元へ、順繰りに貴族達がやって来て挨拶及び自己紹介を行うのを黙って見守るだけの作業だ。
いや、作業とすら呼べないな。ぼくとリウイは一言も口を開かず、頷くだけなんだ。
ここでも神子であるリウイへの反応の方が大きかった。
まぁそうだろうなと予想していたし、寧ろ逆にそういうもんだと思えば、ぼく一人が注目を浴びる事を防いでくれた気さえする。
貴族の列が無くなれば、そのまま神殿に移動だ。
ぼくとリウイは別々な馬車を用意されていて、ぼく達は移動中に話す事も出来なかった。
神殿に着いてからまた少しだけ休憩時間があったが、恐らくこれは王族の方々が到着するのを待つ時間だったんだろう。
だが、ここでの控室も、ぼくとリウイは別々に用意されていた。
ぼく達に話をさせないぞ。という誰かの意思でも働いているんだろうかと、勘ぐりたくなるぐらいだ。
大礼拝堂にぼくとリウイが足を踏み入れた時、既に陛下を始め王族の方々と、神殿側の準備は出来上がっていた。
そして、顔面を奉納するぼく達。
奉納……と言っても、ぼくが見た事のある神像の前で、両手を自分の顔の前にかざしてから、掌を天井に向けて、それから……。といった具合に、決められた動作をするだけの簡単な作業だ。
一つ一つの所作に意味付けがされているらしいが忘れた。一連の動作を間違えずに行えただけでも褒めて欲しい。
最後に、有難い祭器を抱えた神殿長が、神への報告とお礼を述べる。
これで顔面の奉納式も終了だ。
式の終了宣言の時に、主神でもある『格好良い』のサトゥルー神と、『麗しい』のリュージィ神の神像が光り輝いて、神殿関係者を含む参列者達がどよめいていたが。
リウイの報告の時と同様に……ぼくが知らないだけで、どうせこれも予定の範囲内なんだろう。
そして、今。
ぼくは、顔面偏差値奇跡ランク認定のお祝いパーティ会場にいる。
会場を見渡せるような位置だが、比較的端の方にある大きな大きな一人掛けのソファに腰掛けて。一人で。
名目上は単なるお祝いの宴という事で、建前上は無礼講とされている為、パーティが始まってから姿を現したぼくとリウイの周りには人々が集まって来た。
始めは遠巻きに。ぼくがにこやかに振る舞うと、それなりの地位で自分の顔面に多少の自信を持っている者達が寄って来て。
後は一気に群がられた。
ぼくはぼくなりに頑張って対応しようとしたんだが、如何せん、とにかく人が多い。いや、ライブ会場のような何百人、何千人という程の規模じゃないが。
アドル的なぼくも、サトル的なボクも、あっという間に疲れてしまった。
しかも最近になって気が付いたんだが、ぼくはあまり……。かなり、だな……。人付き合いというか、会話が上手くないんだ。
話題が乏しいのも然る事ながら、相手の話を引き立ててやる事もなかなか難しい。
はぁ……。会話のスキルが欲しい。知らない人とでも場を盛り上げるような、会話スキルが。
ぼくは転生者なんだから、そういうチートを授かっても良さそうなもんじゃないか。
貰えたのは顔面だけ。
……こんな事なら、『格好良い』にして貰う時にもっとお願いして、他にも色々な特典を授けて貰えば良かった。アドルには出来なくとも、世野悟になら。面倒がらなければそれぐらいの交渉は出来ただろうに、自分が面倒臭がったからとは言え、口惜しい。
話が逸れたね。
とにかく疲れてしまったぼくは、休憩したいという希望を申し出た。
奇跡ランクのぼくがそう言い出せば、追いすがれる者はいない。正確には、追いすがろうとする馬鹿は、他の常識人達がどうにかしてくれる。
こうしてぼくは今、ゆっくりと壁の花になっている。……相当に派手派手しい花だという事は、自分でも分かっているが、ね。
陛下との食事会でお祝いパーティの事を聞かされた時には、自分がこんなにゆったりと休めるなんて思ってもみなかった。ずっと人々に囲まれている光景が目に浮かんだぐらいだった。
それが、リウイとお披露目のタイミングが重なったお陰で、実際にはこの通り。
周囲を見回してみると、ぼくをちらちらと気にしている者が何人もいるようだが。
奇跡ランクのぼくが休んでいる時に声を掛けるのは、よっぽどの猛者しかいない。
ぼくは和やか、かつ賑やかな会場の雰囲気を楽しんでいる素振りで、じっとリウイの方を見た。凄い人だかりで殆ど姿が見えないが。
ぼくがこんな風にのんびり出来ているのは、もう一人の奇跡ランクで、しかも神子と呼ばれるリウイがずう~っと愛想を振り撒いているからだ。
引っ切り無しに話し掛けられ、それに笑顔で答え、また別な人にも応対するリウイ。
常に人に囲まれており。……つまり。
ぼくが話し掛けるような隙が無い。
あの人混みを掻き分ける根性が、ぼくには無い。
――― リウイの方が里村より、社交性が高そうだな。
……本当に。かなり対人スキルが高そうだ。五分の一ぐらい貰えないかな。
まぁ、驚かされたが。リウイも一緒だという所を除けば概ね予定通りだったよ。
認定後、少し休憩してから。
認定時に立ち会っていない貴族達を相手に、国王陛下が認定宣言をした後、ぼくとリウイの顔面を披露した。
玉座の前に、両翼のように用意された席に座するぼくとリウイの元へ、順繰りに貴族達がやって来て挨拶及び自己紹介を行うのを黙って見守るだけの作業だ。
いや、作業とすら呼べないな。ぼくとリウイは一言も口を開かず、頷くだけなんだ。
ここでも神子であるリウイへの反応の方が大きかった。
まぁそうだろうなと予想していたし、寧ろ逆にそういうもんだと思えば、ぼく一人が注目を浴びる事を防いでくれた気さえする。
貴族の列が無くなれば、そのまま神殿に移動だ。
ぼくとリウイは別々な馬車を用意されていて、ぼく達は移動中に話す事も出来なかった。
神殿に着いてからまた少しだけ休憩時間があったが、恐らくこれは王族の方々が到着するのを待つ時間だったんだろう。
だが、ここでの控室も、ぼくとリウイは別々に用意されていた。
ぼく達に話をさせないぞ。という誰かの意思でも働いているんだろうかと、勘ぐりたくなるぐらいだ。
大礼拝堂にぼくとリウイが足を踏み入れた時、既に陛下を始め王族の方々と、神殿側の準備は出来上がっていた。
そして、顔面を奉納するぼく達。
奉納……と言っても、ぼくが見た事のある神像の前で、両手を自分の顔の前にかざしてから、掌を天井に向けて、それから……。といった具合に、決められた動作をするだけの簡単な作業だ。
一つ一つの所作に意味付けがされているらしいが忘れた。一連の動作を間違えずに行えただけでも褒めて欲しい。
最後に、有難い祭器を抱えた神殿長が、神への報告とお礼を述べる。
これで顔面の奉納式も終了だ。
式の終了宣言の時に、主神でもある『格好良い』のサトゥルー神と、『麗しい』のリュージィ神の神像が光り輝いて、神殿関係者を含む参列者達がどよめいていたが。
リウイの報告の時と同様に……ぼくが知らないだけで、どうせこれも予定の範囲内なんだろう。
そして、今。
ぼくは、顔面偏差値奇跡ランク認定のお祝いパーティ会場にいる。
会場を見渡せるような位置だが、比較的端の方にある大きな大きな一人掛けのソファに腰掛けて。一人で。
名目上は単なるお祝いの宴という事で、建前上は無礼講とされている為、パーティが始まってから姿を現したぼくとリウイの周りには人々が集まって来た。
始めは遠巻きに。ぼくがにこやかに振る舞うと、それなりの地位で自分の顔面に多少の自信を持っている者達が寄って来て。
後は一気に群がられた。
ぼくはぼくなりに頑張って対応しようとしたんだが、如何せん、とにかく人が多い。いや、ライブ会場のような何百人、何千人という程の規模じゃないが。
アドル的なぼくも、サトル的なボクも、あっという間に疲れてしまった。
しかも最近になって気が付いたんだが、ぼくはあまり……。かなり、だな……。人付き合いというか、会話が上手くないんだ。
話題が乏しいのも然る事ながら、相手の話を引き立ててやる事もなかなか難しい。
はぁ……。会話のスキルが欲しい。知らない人とでも場を盛り上げるような、会話スキルが。
ぼくは転生者なんだから、そういうチートを授かっても良さそうなもんじゃないか。
貰えたのは顔面だけ。
……こんな事なら、『格好良い』にして貰う時にもっとお願いして、他にも色々な特典を授けて貰えば良かった。アドルには出来なくとも、世野悟になら。面倒がらなければそれぐらいの交渉は出来ただろうに、自分が面倒臭がったからとは言え、口惜しい。
話が逸れたね。
とにかく疲れてしまったぼくは、休憩したいという希望を申し出た。
奇跡ランクのぼくがそう言い出せば、追いすがれる者はいない。正確には、追いすがろうとする馬鹿は、他の常識人達がどうにかしてくれる。
こうしてぼくは今、ゆっくりと壁の花になっている。……相当に派手派手しい花だという事は、自分でも分かっているが、ね。
陛下との食事会でお祝いパーティの事を聞かされた時には、自分がこんなにゆったりと休めるなんて思ってもみなかった。ずっと人々に囲まれている光景が目に浮かんだぐらいだった。
それが、リウイとお披露目のタイミングが重なったお陰で、実際にはこの通り。
周囲を見回してみると、ぼくをちらちらと気にしている者が何人もいるようだが。
奇跡ランクのぼくが休んでいる時に声を掛けるのは、よっぽどの猛者しかいない。
ぼくは和やか、かつ賑やかな会場の雰囲気を楽しんでいる素振りで、じっとリウイの方を見た。凄い人だかりで殆ど姿が見えないが。
ぼくがこんな風にのんびり出来ているのは、もう一人の奇跡ランクで、しかも神子と呼ばれるリウイがずう~っと愛想を振り撒いているからだ。
引っ切り無しに話し掛けられ、それに笑顔で答え、また別な人にも応対するリウイ。
常に人に囲まれており。……つまり。
ぼくが話し掛けるような隙が無い。
あの人混みを掻き分ける根性が、ぼくには無い。
――― リウイの方が里村より、社交性が高そうだな。
……本当に。かなり対人スキルが高そうだ。五分の一ぐらい貰えないかな。
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