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クールで、謎めいてる……?

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それで不自由もなかったし……と言い訳するみたいにディエゴが言えば、露店のおじさんは納得したように笑い出した。

「なぁるほどなぁ! ディエゴはモテるから、用心してたのは賢いかも知れねぇなぁ」

「あ、やっぱモテるんですね」

思わず聞き返したら、屋台のおじさんは大きくうんうんと頷いた。

「そりゃあモテるさ。この顔にこの体だろ? Aランク冒険者な上に愛情深いって言われる狼獣人だ。そりゃあ男も女も釣り放題だ。そこらのお嬢さん方なんざ、クールで謎めいてて素敵! とか言ってたぞ」

「クールで、謎めいてる……?」

「まぁ今日だいぶ印象は変わっただろうがなぁ! 番にゃデレデレだもんなぁ!」

がっはっは、と笑う店主さん。僕はもう、顔を赤くして俯くしかなかった。

番じゃない! と否定しようかとも思ったけど、僕はもう自分の中に芽生え始めた気持ちに気づいてしまっている。

ディエゴの家に戻って落ち着いたら、ちゃんとディエゴにも伝えなきゃって思ってたから、『番』の言葉を強硬に否定する事なんて出来なかった。

ちなみにディエゴは何も言わない。『番』と言われる度に、肯定も否定もしないで嬉しそうに相好を崩し、しっぽがご機嫌に揺れる。それが言葉よりも雄弁にディエゴの気持ちを伝えていた。

恥ずかしい。でも可愛い。

「そうだオヤジ、この辺でいい家具屋って知ってるか?」

「家具屋……ああ、なるほど、新居用か」

得心がいった顔で屋台のおじさんがちらっと僕を見る。ディエゴはしっぽをフリフリさせながら僕の肩にぽんと手を置いた。

「新居ってわけじゃねぇんだけど、俺ん家って椅子もねぇからさすがにラスクに悪いと思って」

「椅子もねぇのか、そりゃ難儀だ。よっしゃ、お前が愛想尽かされねぇように、腕のいい職人の店を紹介してやらぁ」

「助かる」

耳をぴくぴくさせながらディエゴは真剣におじさんの話を聞いている。

なんかもう居た堪れなくて、僕は頬の赤みが引かないままにその屋台をあとにして、ディエゴに手を引かれるままについて行くのみだ。

気にしない事に決めたって言っても限度があるんだよ……!

慣れない状況に内心テンパる僕と、終始ご機嫌でしっぽがゆらゆら可愛いディエゴ。だいぶ感情に落差がある。

それでも歩いていれば目的地には着くわけで、僕らはいつの間にかたくさんの家具が並ぶ店へと辿り着いていた。

「うわ、意外とオシャレ……」

無骨な椅子とか並んでるのかな、と思ったら竹や籐で編んだ椅子だとか、背もたれとかのデザインがかっこいい椅子だとか色々なものが売っていた。店の奥にはテーブルはもちろん箪笥やランプ、植木鉢からソファ、棚までなんでもある。

僕は一気にウキウキした気持ちになった。
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