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【ディエゴ視点】選ぶのも楽しい

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「うわぁ~こんなに品揃えのいいお店、初めてだ……!!」

ラスクの目がキラキラ輝いてる。

「少なくとも僕の住んでいる街にはこんなに大きな家具屋さんはないよ。すっごい色々あるんだな、ほらランプシェードとかまでカッコいいのがある」

「喜んでくれて良かった。港町だからな、船用の家具もあるし、もしかしたら他国から入って来てるのもあるのかもな」

「なるほど! 確かにそれはそうかも。こっちにはシンプルなデザインのもあるもんな」

店先にあったのは繊細な彫りが施されていたが、こっちにあるのはむしろ無骨で重厚感がある、頑丈そうなテーブルセットだ。

「へーこんな実用的なデザインの物もあるのか。頑丈そうでこれもいいな」

「奥にも細かいのが結構ある。見て来てもいいかな」

頷いたらラスクは跳ねるような足取りで店の奥に走って行った。

やっぱり市場に連れてきてよかった。道を歩いてる時の視線やら噂は正直目も耳もいい俺にとってはうるさい事この上ないが、『番』って言われてるからまぁいいかとも思う。

しかも嬉しいことに『番』って言われてもラスクは否定しないでいてくれる。恥ずかしがってはいるけど、これってもしかして、ラスクも番って言われてもいいって思ってくれてるんだろうか。

そうだったら本当に嬉しい。

俺に番ができればうるさく擦り寄ってくるヤツも減るかもしれないし、なにより番になる事ができたら、ラスクとずっと一緒にいてもいいんだって思えるだろうから。

「ディエゴ、これ見て! めっちゃカッコよくない!?」

ラスクが指差す先をみたら、シンプルな形状ながら背もたれや座面は籐で編まれている、ゆったりと座れそうな椅子があった。

そして店の奥に、物静かなちょっと神経質そうな男がいるのも見える。もしかしてこの店の店主なのか?

「店主、椅子に座ってみてもいいだろうか」

「あ、ああ。もちろん」

男が頷いたから、俺はラスクに椅子をすすめる。

「ラスク、座ってみるといい。椅子は座り心地も大事だろう」

「そうだな。でもディエゴの家の椅子なんだから、ディエゴの感覚の方が重要だろ」

「まぁ……本当はそうなんだろうけど、今まで椅子がなくても気にならなかったくらいだしな。ラスクが気に入った椅子の方が俺は嬉しい」

「あはは、それもそうか」

笑いながらラスクが籐椅子に身を預ける。そのまま俺を見上げてくるのが、なんとも言えず可愛かった。

「どうだ?」

「ウッドデッキにはこれくらい深く座れる椅子の方が良さそう。なんかこのまま寝てもいいくらい気持ちいい」
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