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【ディエゴ視点】面白いテーブルセット

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「そうか、じゃあこの椅子をふたつと、あと家の中で使うやつも必要だな」

「そうだね。でもローテーブルだったよね」

「ローテーブルっつうか、適当な高さだけどな」

「でもさ、ディエゴは街に居ないことの方が多いだろ? いきなり二セットも買うのはなんか勿体ない気も」

俺は普段があまり金を使わないから金ならある。別に構わない、と言おうとしたら、さっきから置物みたいにつったってた店主がおどおどしつつ声をかけてきた。

「あの、やっぱりAランク冒険者のディエゴさん……?」

「ああ」

「それなら、おすすめがあるんですが」

そう言って出してくれたのは、ごく普通のシンプルなテーブルと、今ラスクが座っている籐椅子に似ている、少しスリムな籐椅子だった。

「実はこれ、折りたたみができるんで、あちこち持ち運んだりマジックバッグへの出し入れが便利だって冒険者の間で人気の品で」

「へぇ」

店主がささっと折りたたんで見せてくれる。テーブルも椅子もまるで魔法みたいに薄っぺらくなって、確かに便利そうだ。

「ディエゴ! これ、すごくいいじゃん」

「そうだな。ラスク、座ってみてくれ」

「うん! あ、使い方もう一回教えて貰ってもいいですか?」

店主から使い方の説明を受けているラスクは、急にばっと振り返って俺をキラキラの瞳で見つめた。

「ディエゴ! これ凄い! 背もたれの角度が変えられる!」

「は?」

「ほら、この棒を差し込む場所を変えるだけで、背もたれの角度が変えられるんだよ!」

「最終的にまっすぐ平らにして簡易ベッドにもなります」

「すげ……」

うきうきした様子で椅子にすわり、ラスクはさらに感歎の声を上げる。

「座り心地も文句なし! この椅子、最高!」

「へへ、そんなに褒められると嬉しいな。実はこのテーブルセット、オレが開発したんです」

「天才!」

照れる店主をラスクが思いっきり褒める。

う、羨ましい……俺もラスクにあんな尊敬のまなざしで見つめて欲しい。

「よし! 買おう」

俺が宣言するとラスクが目を丸くした。

「決断早っ」

「そんだけ気に入ってるなら即決だろ」

さっと金を払って、さっとマジックバッグにしまって、店主に礼を言って外に出る。

「いいのが買えて良かったな!」

嬉しそうなラスクを連れてまた市場を歩くと、露店が物珍しいらしいラスクは本当に楽しそうにキョロキョロと辺りを見回している。こんなに興味津々な顔をラスクを見るのは俺も珍しくて、その顔を見るのがとにかく楽しかった。

「やっぱり食べ物の店が多いね」
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