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帰路と捕虜
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「血を一滴も流さず見事な策だった」
そうウィルバートは終えた後に言った。その表情は浮かない。
「勝った割に複雑そうな顔をしてるわね?コンラッド王子のことも心配しなくて大丈夫よ」
「リアン、後から少し話がある」
「なんの話?」
私はとぼけ、気づかないふりをした。ウィルバートはそろそろ気づく頃だろうと思っていた。でもその話はまだ後になる。今はすることが残っているのだから。
捕虜となったコンラッド王子は私の姿を見ると苦笑した。
「やはり……リアン王妃……」
「えっ?バレた!?」
「そのエメラルド色の眼はごまかせないですよ。ウィルバートらしくない戦の仕方だと、最初に気づくべきでした。いや……すでに前回来国したときから?もしやそれ以前から?あなたは……この戦いの準備をしていましたね?そうでなければこんな用意周到な戦はできないものです」
コンラッド王子もいずれ一国の王となるべく者のだから、バカではない。ジッとこちらを見ている。
「ダレン副将軍が先に城の様子を見に行く。そして彼が策に嵌まれば初陣である王子など浮足立って、次の策へとどんどん嵌っていくだろうと……それも計算通りだったんですか?」
私は静かにそうよと頷いた。
「キングを守るのはクイーンだと言ったはずよ」
「コンラッド……リアンの策を起用したのはオレだ。恨みに思うなら、オレにしろ。血を流さずに終えたかった。その方が禍根が残らない。我が国に手出しをしないというならば、捕虜等は解放すると約束しよう。石像の者たちも解呪する」
憧れの獅子王ウィルバートをコンラッド王子は見た。
「ウィルバート……戦に負け、恥を晒して生きるよりも……ここで首をどうか……」
コンラッド王子が申し出た事にウィルバートは目を見開く。
「それが必要で、そうしなければならない時はオレがすると約束しよう。だけど………」
「必要ないわ」
私は言い切る。
「エイルシア王国はあなたの国と事を大きくしたいわけじゃないわ。ただ……そうね。この国へ不可侵の約束をとりつけたいわね。後は賠償金?けっこう戦費かかったから、その費用はぶんどろうと思うのよ?交渉のテーブルにあなたの父王を座らせたいのよ。協力してくれるわよね?」
「リアン、王妃はぶんどるとか言わないだろ!?こっちは攻められたほうなのに……まるで盗賊じゃないか?」
ウィルバートか半眼になっている。コンラッド王子は迷っている。決断できるように、私は笑いかけて冗談っぽく言ったのだった。
「コンラッド王子、私にチェスを負けたのだから、一つだけ望みを叶えてくださるんでしょう?」
コンラッド王子の目が見開いた。忘れていたのかしら?私とチェス勝負をしたことを。
「生きてほしいの。そして私達の国を守ってくださらない?あなたは今、この瞬間から必死で王になることを目指し、ウィルバートの国には手を出さず友好国としてつきあっていく……そうしてくださることが私の望むことよ」
コンラッド王子は一瞬無言となり、そして笑った。
「この王妃様には敵わないですね。ウィルバート……普通ではない妃を……唯一無二の妃を手に入れて羨ましくなってきましたよ。わかりました……敗戦の将にどこまでできるかわかりませんが……」
二度と敵に回したくないと私に言ったコンラッド王子の顔はどこか清々しく決意を込めたものがあった。
そしてウィルバートはずっと私に何か言いたげな視線を送っている。
そうウィルバートは終えた後に言った。その表情は浮かない。
「勝った割に複雑そうな顔をしてるわね?コンラッド王子のことも心配しなくて大丈夫よ」
「リアン、後から少し話がある」
「なんの話?」
私はとぼけ、気づかないふりをした。ウィルバートはそろそろ気づく頃だろうと思っていた。でもその話はまだ後になる。今はすることが残っているのだから。
捕虜となったコンラッド王子は私の姿を見ると苦笑した。
「やはり……リアン王妃……」
「えっ?バレた!?」
「そのエメラルド色の眼はごまかせないですよ。ウィルバートらしくない戦の仕方だと、最初に気づくべきでした。いや……すでに前回来国したときから?もしやそれ以前から?あなたは……この戦いの準備をしていましたね?そうでなければこんな用意周到な戦はできないものです」
コンラッド王子もいずれ一国の王となるべく者のだから、バカではない。ジッとこちらを見ている。
「ダレン副将軍が先に城の様子を見に行く。そして彼が策に嵌まれば初陣である王子など浮足立って、次の策へとどんどん嵌っていくだろうと……それも計算通りだったんですか?」
私は静かにそうよと頷いた。
「キングを守るのはクイーンだと言ったはずよ」
「コンラッド……リアンの策を起用したのはオレだ。恨みに思うなら、オレにしろ。血を流さずに終えたかった。その方が禍根が残らない。我が国に手出しをしないというならば、捕虜等は解放すると約束しよう。石像の者たちも解呪する」
憧れの獅子王ウィルバートをコンラッド王子は見た。
「ウィルバート……戦に負け、恥を晒して生きるよりも……ここで首をどうか……」
コンラッド王子が申し出た事にウィルバートは目を見開く。
「それが必要で、そうしなければならない時はオレがすると約束しよう。だけど………」
「必要ないわ」
私は言い切る。
「エイルシア王国はあなたの国と事を大きくしたいわけじゃないわ。ただ……そうね。この国へ不可侵の約束をとりつけたいわね。後は賠償金?けっこう戦費かかったから、その費用はぶんどろうと思うのよ?交渉のテーブルにあなたの父王を座らせたいのよ。協力してくれるわよね?」
「リアン、王妃はぶんどるとか言わないだろ!?こっちは攻められたほうなのに……まるで盗賊じゃないか?」
ウィルバートか半眼になっている。コンラッド王子は迷っている。決断できるように、私は笑いかけて冗談っぽく言ったのだった。
「コンラッド王子、私にチェスを負けたのだから、一つだけ望みを叶えてくださるんでしょう?」
コンラッド王子の目が見開いた。忘れていたのかしら?私とチェス勝負をしたことを。
「生きてほしいの。そして私達の国を守ってくださらない?あなたは今、この瞬間から必死で王になることを目指し、ウィルバートの国には手を出さず友好国としてつきあっていく……そうしてくださることが私の望むことよ」
コンラッド王子は一瞬無言となり、そして笑った。
「この王妃様には敵わないですね。ウィルバート……普通ではない妃を……唯一無二の妃を手に入れて羨ましくなってきましたよ。わかりました……敗戦の将にどこまでできるかわかりませんが……」
二度と敵に回したくないと私に言ったコンラッド王子の顔はどこか清々しく決意を込めたものがあった。
そしてウィルバートはずっと私に何か言いたげな視線を送っている。
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