酒かすと米ぬか

 主人公は、作家という職業に固執して生きるしかない不器用な男だ。この男は妻帯者で子供もいるが、家族からみればはた迷惑な奴であった。おおよそ愛とは無縁な生き方をしてきたせいで、十年も前から男は痺れを切らした妻から別居を言い渡されている。四畳半のぼろアパートに引きこもり来る日も来る日も小説だけを書き続けていた。定職にも就かない穀潰しとして。 
 四十代も後半になり世間の風当たりはますます冷たい。それでも男は取り憑かれたように筆を執る。それは今日も明日も変わらないかに見えた。隔絶された世界で孤独だけが慰め、といった様子で。
 そんな折りに妻が倒れたという連絡がもたらされる。
 これは男が筆を擱(お)くまでの、物語。

 ――丁年(ていねん)、字引を相棒に。転がる無数のちり紙、失敗作の山に埋もれて。

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