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遭遇
しおりを挟む「あ、栄人。ちょっといいか?」
ホームルームも終わり、帰り支度を終えた俺を呼び止めたのは担任。
「なんですか?」
「ちょっと頼まれごとをしてほしくてな…」
いつもより歯切れの悪い様子の担任に、何事かと思う。まぁ、帰ってもすることないし頼まれてやろう。
「この資料を図書室へ返しておいてくれないか?すまん。」
本当に申し訳なさそうに言うから、本心なんだろう。
「分かりました。じゃあ、さようなら。」
「あ、待て。また今度学食で好きなもん奢るから考えとけ。」
それは報酬と言うことか。嬉しいけど、なんでそんな時まで上からな物言いなのかと思って笑いそうになる。さすがホスト教師と言うところか。
担任について考えているとあっという間に図書室へ着く。静かにドアを開け中に入る。放課後の今は利用者は少ないのかカウンターにいる生徒以外に人影は無さそうだ。カウンターで返却の手続きを行い、その資料があった本棚を探す。って言っても本の背表紙に張ってあるカテゴリー番号とかに沿っていくだけなんだけど。
無事に本棚を見つけて返すと、このまま帰るのも勿体無いと思い図書室内を物色する。
金持ち学園なだけあって本の品ぞろえ?が凄い。これならワンチャンBL本も…まで考えて頭を振って考えを払拭する。
俺も大分影響されてきてるな。一緒に住んでないのに母さんの影響力の絶大さに改めて驚く。そして恐るべき執念。
また、母さんがBL本送って来てるだろうしわざわざここで危険冒してまで読む意味もない。そう思って図書室を後にする。
放課後の生徒が少ない校舎は危険がいっぱい。
例えば…
「あっ、やぁんっ…まって、まってぇイッちゃうからっ!」
「あぁ、俺も…ック!イクぞ!」
「イク、イクっ!やあああぁぁぁぁぁッ!」
こんな風にいつどこで誰がヤッているのか分かんないから、遭遇頻度が高くなる。
因みに今のは空き教室内での情事です、はい。
俺は人の情事を見て楽しむ趣味はないから、さっさと先を急ぐ。
「……あ、体操着忘れた…」
なんと今日着た体操着を教室に忘れてきてしまうという痛恨のミス。
教室に誰もいないことを願いながら、教室へ向かう。これはフラグじゃないから!今のはフラグ立ってないから。
「んんっ!あぁっ、はぁ…はぁあん!」
フラグ立ってました。ついでに回収しました。なんて効率的!…って、どうしよう。体操着ぐらい明日でもいいって思うかもしれないけど、なんか臭くなりそうで嫌じゃん。
でも、この雰囲気の中入る勇気は俺にはない。
しかも、よく見たら片方は委員長じゃん!ちょっと見たくなかったかも……
あぁグッバイ俺の体動着……
「……何のぞき見してんの?」
「ッ!!!」
いきなり耳元で聞こえたイケヴォにびっくりして叫びそうになるのを何とか我慢する。今叫んだら体操着を諦めた意味がないからな。
「って尊かよ!」
「なんだよ、俺じゃダメなのかよ。」
いや、今の状況的に誰でも嫌だわ。
「それでなんで栄人はのぞき見してんの?えっち」
「うるさいな。したくてしてるわけじゃないし。今日着た体操着を忘れたの思い出して来たら、誰かさんたちがおっぱじめてただけだ。」
「…なるほど。俺が取って来るよ。」
何と!ここに勇者が!なんて良い奴!いや…でもさすがに悪いな。
「いやそれはさすがに悪いよ。諦めて明日にするよ。」
「別に俺気にしないし、いいよ。まぁ萌えを中断させるのは気が引けるけど、俺が入ることでいいスパイスになるんじゃないかと思って…んふふ」
こいつはあくまでそこなんだな。気を使って損した。
「それなら頼む。」
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