【完結】俺は遠慮します。

連行されました

そんな俺の事情には関係なくテストは始まる訳で…

「それじゃあ、今から答案用紙を配るぞ～今から喋った奴はカンニングとみなすぞ～」

一年生最後の定期考査。なんの思いれもないけど、なんだか寂しく感じるのは、寮長がいなくなるからってことにしておこう。

「用紙は行きわたったな？それじゃあ、始め！」

裏返していた問題用紙をひっくり返して問題を解いていく。案の定、出てくる問題は予想していた物ばかりで難なく解いていく。俺はこんなテストよりも気が気じゃないことがあるんだよ！

もう学校生活すべてが気が気じゃない。だって、会長と輝樹先輩がどこで何してくるかって考えたら怖い！周りの視線が怖い！

「そこまで！後ろから答案用紙を集めてこい。」

現実逃避してたらテストがいつも間にか終わっていた……明日もあるんだけどねッ！

「栄人クーン！来ちゃった♪」

だから、あんたは俺の彼女かっての。どこかで見たような登場をしたのはお久しぶりの会計だ。
最近全然合わなかったから存在を忘れていたとか言ったら怒るかな？

「どうしたんですか？明日もテストありますよ？」

「う～～ん、そうなんだけど…どっかの誰かさんに聞き捨てならないことを聞いたら居ても立っても居られなかったって言うか～ちょっと栄人クン借りてくね～」

尊と徹に許可を取り、連行される俺。え、俺の許可って要るくない、普通。しかも、尊にしろ徹にしろ面倒そうだからって素直に差し出すな！

「いやぁ～ごめんね？テスト期間中に時間貰ちゃって～」

そう思うなら今すぐ返してください、俺の時間。

その後も一人でべらべらしゃべる会計に引っ張られて着いた先はなんと屋上。この学園屋上なんてあったんだ。

「とうちゃーく！ん～気持ちいいねぇ～」

「そうですね。テスト真っ只中じゃなかったらもっと気持ちよかったかもしれませんけど。」

「ごめんってぇ～……だって会長から告白したって聞いて焦っちゃったんだもん…」

「え、今何か言いました？」

「いんや～何にもぉ～」

「それで？ただおしゃべりしに来ただけじゃないんですよね？」

そうだったら一回殴る。マジで。

「もっちのろんだよ～あのねぇ～……」

それから先の言葉が待てども待てども出てこない。

チラリと会計の方を見ると、顔を真っ赤に染めて俯いている。なんで顔まで赤いのが分かるかって？耳まで真っ赤だから。

これは、黙って待った方が良いのだろうか。それとも何か言った方が…

「あの、オレ…栄人クンのことが…栄人クンのことが好きなんだ。初めて本気になれたんだ。遊びもやめて、勉強も生徒会の仕事も頑張ってカッコいい所見せたいって思ったのも、俺だけ見てほしいって思ったのも、この人じゃなきゃダメだなって思ったのも…全部初めてで…どうすればいいか分からなかったけど、この気持ちに嘘はないから…あの、オレとお付き合いしてくれませんか？」

いつもの飄々とした会計の姿はなく、顔を真っ赤にさせて必死に言葉を紡ぐ会計は新鮮で…

本気なんだろうなって信じたくなった。

でも、俺は決めたから…




「会計…いや颯先輩、本気の気持ちってやつを疑ってないんですけど、ごめんなさい。」

「…ぁ……その好きな人がいるの？」

「いえ、そういうわけでは…」

「…未練がましくてごめん。理由を聞いてもいい？」

「颯先輩のことは先輩として好きです。でも俺、恋愛的な意味で好きじゃ二人と付き合うことが失礼だと思って…」

「じゃあ、俺のこと恋愛的な意味で好きになったら付き合ってくれるってこと？」

…まぁそういうことになる、な…

さっきまでのしおらしい様子とは打って変わって、すごい勢いの会計にタジタジになる。

「そう、ですね…」

「分かった、なら仕方ないね！でも俺諦めないから。良い男になるから見ててね♪」

そう言った会計の顔は、夕日が陰影を付くり…どこか吹っ切れた様子の表情は綺麗だと思った。