58 / 117
第58話
しおりを挟む夜会まであと半月程となった。
「ねぇ、ローラ。私、全く失念していたのだけど、夜会って…どのようなドレスを着たら良いのかしら?」
と私が衣装部屋で今日のデイドレスを選びながら、訊ねると、
「奥様、女性はそんな心配は無用ですよ!男性に任せておけば良いのです」
と背中を優しく叩かれた。
そうか…。旦那様だってずっと婚約者が居たのだ。女性にドレスやアクセサリーを贈った経験ぐらいあるのだろう…そう、イメルダ様に。
そんな事を考えていると、私の胸の奥がツキッと少し痛んだ気がしたが、私はそれに見て見ぬ振りをした。きっと気づいてはいけない感情だから。
私は特訓の為、旦那様と一緒に王都へ通う日々だ。それは今日も。
「…大丈夫なのか?」
と私を王都の屋敷へと連れて来た旦那様が訊ねる。
きっと夜会の事だろう。
「はい。オーデル夫人とメイナードのお陰で、少しはましになりました。足腰も鍛えられましたし」
と私が笑えば、
「そうか。あまり無理をするなよ」
と言って旦那様は直ぐ様また転移魔法で王宮へと出かけて行った。
あれからまた月の物が来てしまった。
子作りは頑張っているのだけれど…。
私がそれをモーリス先生に言うと、
『妊娠しやすい期間はあくまで目安です。
個人差がありますし。それに…出来にくい体質の方もいらっしゃいます。
あまり思い詰めないで下さい』
と言われてしまった。頭ではわかっているのだが…。
私はきっと焦っているのだ。この居心地の良い場所から追い出されたくなくて。
そんな事に子どもを使おうとしている私に、神様が呆れてしまっているのかもしれない。
「随分と姿勢も良くなりましたね。今日はここで終わりにしましょう」
とオーデル夫人に言われ私は、
「夫人のお陰です。ありがとうございました」
とお礼を述べた。
「すみませんね、急用でいつもより早い時間にお暇しなくてはいけなくて…」
とすまなそうにする夫人に、
「いえ。いつも私に時間を割いて下さっているんですもの。ご用の時には遠慮なく仰って下さい」
今日は、急遽オーデル夫人に用事が出来たという事で、いつもよりかなり早い時間に講習は終りとなった。
私は旦那様と一緒に公爵領へと戻るので、旦那様の仕事の終りを待つことにする。
…空いた時間に何をしようかしら?そう考えていると、ロバートが誰かと言い争っているような声が玄関から聞こえる。
…どうしたのかしら?
私は気になって玄関の方へと向かい、ロバートと言い争っている人物に目が釘付けになった。
……イメルダ様?!
応援ありがとうございます!
12
お気に入りに追加
1,657
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる