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第58話

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夜会まであと半月程となった。

「ねぇ、ローラ。私、全く失念していたのだけど、夜会って…どのようなドレスを着たら良いのかしら?」
と私が衣装部屋で今日のデイドレスを選びながら、訊ねると、

「奥様、女性はそんな心配は無用ですよ!男性に任せておけば良いのです」
と背中を優しく叩かれた。

そうか…。旦那様だってずっと婚約者が居たのだ。女性にドレスやアクセサリーを贈った経験ぐらいあるのだろう…そう、イメルダ様に。

そんな事を考えていると、私の胸の奥がツキッと少し痛んだ気がしたが、私はそれに見て見ぬ振りをした。きっと気づいてはいけない感情だから。



私は特訓の為、旦那様と一緒に王都へ通う日々だ。それは今日も。

「…大丈夫なのか?」
と私を王都の屋敷へと連れて来た旦那様が訊ねる。

きっと夜会の事だろう。

「はい。オーデル夫人とメイナードのお陰で、少しはましになりました。足腰も鍛えられましたし」
と私が笑えば、

「そうか。あまり無理をするなよ」
と言って旦那様は直ぐ様また転移魔法で王宮へと出かけて行った。

あれからまた月の物が来てしまった。
子作りは頑張っているのだけれど…。

私がそれをモーリス先生に言うと、

『妊娠しやすい期間はあくまで目安です。
個人差がありますし。それに…出来にくい体質の方もいらっしゃいます。
あまり思い詰めないで下さい』
と言われてしまった。頭ではわかっているのだが…。

私はきっと焦っているのだ。この居心地の良い場所から追い出されたくなくて。

そんな事に子どもを使おうとしている私に、神様が呆れてしまっているのかもしれない。




「随分と姿勢も良くなりましたね。今日はここで終わりにしましょう」
とオーデル夫人に言われ私は、

「夫人のお陰です。ありがとうございました」
とお礼を述べた。

「すみませんね、急用でいつもより早い時間にお暇しなくてはいけなくて…」
とすまなそうにする夫人に、

「いえ。いつも私に時間を割いて下さっているんですもの。ご用の時には遠慮なく仰って下さい」

今日は、急遽オーデル夫人に用事が出来たという事で、いつもよりかなり早い時間に講習は終りとなった。

私は旦那様と一緒に公爵領へと戻るので、旦那様の仕事の終りを待つことにする。

…空いた時間に何をしようかしら?そう考えていると、ロバートが誰かと言い争っているような声が玄関から聞こえる。

…どうしたのかしら?

私は気になって玄関の方へと向かい、ロバートと言い争っている人物に目が釘付けになった。


……イメルダ様?!
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