82 / 117
第82話
しおりを挟む「もう君たちは夜会に戻れ。先ほど出た扉からなら、あまり目立たず入れるだろう。後の事は、私に任せて」
というライオネル殿下に、
「陛下に挨拶をしたら、もう僕達は戻らせてもらう。アメリア、行こう」
と立ち上がる旦那様に私も続く。
すると、
「アメリア嬢!僕は…やっぱり諦めきれない…」
と必死にすがるような視線で私を見るデイブ殿下。
私がそれに答えようとするも、
「アメリア。行くぞ」
と旦那様は私の手を引っ張るようにして部屋を出る。
私は振り返り小さく会釈をして旦那様に倣って部屋を出て行った。
「旦那様……」
私は旦那様と歩きながら、旦那様を見上げるも彼は前を向いたまま無言だ。…怒ってる?
私と旦那様は何の会話もないまま、会場へとたどり着くと、両陛下への挨拶を済ませ、夜会を後にする事にした。
正直、夜会を味わう余裕もなかった…。
すると、ユージーンが心配して旦那様に話を聞こうと駆け寄って来た。
「ウィル様、どうされました?」
と訊ねるユージーンに、
「別に、何も問題はない。アメリアが疲れたようだから、もう僕達は帰る。お前はゆっくり楽しんでくれ」
と旦那様は先ほどの一件には触れず、そう告げた。
「…ウィル…。わかった…話たくなったら話せ」
とユージーンが旦那様と話している時に、今度はモーリス先生がやって来た。
「おい!この前は大変だったんだからな!」
とモーリス先生は、ご立腹な様子。
「金は払ったろ」
と言う旦那様に、
「突然、気絶した男が魔法で現れたら驚くに決まっているだろう!」
…もしかしたら、あの時に私に声を掛けた男性の事かしら?
この調子だと無事だったのよね?
私は3人が話すのを眺めながらふと、気がついた。……扇子がない…。
「旦那様、先ほどのお部屋に扇子を忘れてしまったようです。取りに行っても?」
と私が声を掛けると、
「扇子?そんな物は放っておけ。必要ならまた買えば良い」
と旦那様は言うが、あの扇子もかなりの高級品。
そんな簡単に諦めるなんて私には無理だ。
「ここから、そう遠くありませんから。直ぐに戻ります」
と私は3人の元を離れて歩き出した。
後ろから旦那様が、
「アメリア、戻れ」
と言う声が聞こえるけど、無視よ。
だって、そんな勿体ない事出来ないもの。
と、私がもう少しで先ほどの部屋へとたどり着く…そう思った時、この世で会いたくない人ランキング1位の人物に出会ってしまった。
「アメリア、久しぶりね。とっくの昔に公爵様から追い出されてると思ったのに」
と、私の前に現れたのは、ライラックだった。
応援ありがとうございます!
12
お気に入りに追加
1,657
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる