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第42話
しおりを挟む試験の日まで、私とグレイは毎日一緒にお勉強をいたしました。
私の貴重な時間を割いてまで勉強を教えたのですから、グレイには是非とも良い成績を取っていただきたいものです。
私の方はと言うと、殿下の事を考えると全問正解というわけには参りません。
全ての教科で、1つ2つは間違いを作って、殿下のトップを守らなくては。
試験が終わると、直ぐに殿下が私の側までやって来て、
「アナベル。今日から王太子妃教育は再開だろう?」
「そのつもりだったのですけれど…。今日予定していた言語学の講師の先生が体調不良で今日はお休みと言われましたの。
なので、王太子妃教育は明日から再開ですわ」
「そ、そうなのかい…?な、なら今日の予定は…」
そう私に殿下が話そうとした瞬間、
「ルシウスぅ。ねぇ、メリッサのお手伝いして欲しいんだけど」
と何故かバジル男爵令嬢が、教室へ入って参りました。…今までは入り口で声を掛けるだけでしたのに…。あらあら、周りの皆様の冷たい目!
しかし、バジル男爵令嬢はそんな事、全く気にしていないようですわ。鋼の心臓ですわね。
殿下も流石にその行いには驚いたのか、
「メリッサ、ここは上位貴族の教室だ。君は入ってきてはダメだ」
「え~っ。そんなの誰も教えてくれなかったもん!」
…教えられなくても、皆様ご存知なのですわよ…なんて言えば悪役令嬢への道まっしぐらですわ。危ない、危ない。
私は立ち上がると、
「殿下も生徒会の予定があるのではないですか?」
とバジル男爵令嬢の行いには、 目を瞑り殿下に訊ねると、殿下は、
「あ、あぁ。まぁ。でも…急ぎの用ではないのだが…いや、しかし…」
となんとも歯切れの悪い感じ。
「私、グレイと約束がありますので、此処で失礼させていただきますわ」
と私が言うと、
「また、アンダーソン殿と?はとこだか、幼馴染みだか知らないけど、少し親密過ぎるのではないか?」
そう殿下の言う声に被せるように、
「でもぉ……メリッサはお2人ってとってもお似合いだと思いますよ!」
と嬉しそうに私に言った。
…身分の高い者に低い者から勝手に話しかけてはいけないのですよ?…なんて此処で言ったら、またもや悪役令嬢まっしぐらですわ…危ない、危ない。
私は、
「ありがとうございます」
と顔の筋肉を総動員させて、微笑んでみせた。
下手をすればこのバジル男爵令嬢を前にすると、呆れて口がポカーンと空きかねない。殿下の前で間抜け面を晒すなんて、真っ平御免ですわ。
すると、殿下は、
「アナベル、『ありがとう』とはどう言う意味?お似合いって言われて嬉しい訳?」
と今まで見た事のないような、険しいお顔です。
…お顔が険しくても…全然損なわれない美貌。す・て・き♥️
なんて言ってる場合じゃありませんわ。
何故殿下が少し怒ってらっしゃるのか、わかりませんし、質問の意味もわかりませんけど…
「いえ…特に意味はありませんけど…褒められたのだと思いましたので、一応お礼を」
「そ、そうか…なら、いいんだが…」
そう殿下が呟くと、
「ねぇ、ルシウスったらぁ。メリッサのお話し聞いてた?メリッサのお手伝い、お願い」
と首をコテンと傾けました。
…多分、殿方が見たら…可愛いと思う仕草でしょうね…でも、女の私から見たら、あざといとしか思えませんわ。
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