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第7話
しおりを挟む「どういう事なの?!」
母が私の執務室へと怒鳴りこんで来たのは、セドリックと共同事業について、討論をしている時だった。
執事は母を止めようとしたのだろう。母の後ろでオロオロとしながらも、
「侯爵は仕事中で御座いますので…」
と母の腕を掴もうとする。
その手を母は思いっきり振りほどくと、
「どういう事かと訊いているのよ!!!」
と私に向かって金切り声を上げた。
耳が痛い。
セドリックは目を丸くして、彼女を見ている。
私も久しぶりに見る彼女の姿に唖然とした。
何とまぁ…派手な化粧に派手なドレス。
相手の男の趣味なのか?それとも少しでも若く見られたいが為か?
どちらにせよ、せっかくの彼女の美しさを、かき消すような出で立ちだ。
私はその姿を見て、つい眉間に皺が寄っていたらしい。
向かいに座るセドリックは私の方へ顔を向けると、そっと私の眉間に手を伸ばし深く刻まれた皺を手で伸ばすように撫でた。
私はそのセドリックの振る舞いで、自分がかなり酷い顔をしている事に気づいた。
私は小さくため息をつき、
「何がどうしたと言うのです?主語が無ければ、貴女が何を言っているのかわかりません」
…本当は分かってる。父の資産に手をつけられなくなった件だろう。
しかし、私はあえて、正解を口にはしなかった。
「何って!!わかっているでしょう?あの人の財産は夫婦の財産よ!私には使う権利があるわ!!」
と母は私に向かって吠えた。
「今のオーヴェル家の収入は領地経営のみ。お父様が王宮で働いていた時とは違うのです。
お父様の医療費だって馬鹿になりません。
父の資産は父の為に使うべきだと…そう考えただけです。
貴女には生活に困らないだけの物を差し上げているでしょう?何故、そんなにお金が必要なのです?」
私は理由を知っている事を隠し、母へと訊ねる。
もちろん、彼女の散財でオーヴェル家が傾く程ではない。領地経営も順調だし、私の出資している事業も、どれも上手くいっている。
たが、彼女が男に貢ぐ金を、私は稼いでいる訳ではないのだ。
領民からの税だって、そんな訳のわからない男に貢がせてなるものか。
彼女だって、まさか、セドリックの前で、男に入れあげてるから金が必要だとは言わないだろうが。
私の言葉に母は、
「私にも付き合いがあるの。同じドレスで顔を出す訳にはいかないし、手土産だって、今、王都で話題な物を…と思えば、それなりにお金が掛かるものなの!
仕事にしか能のないあなたには分からないでしょうけど!」
私、今さらっとディスられたわ。
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