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第9話

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「クロエ様、少しよろしいでしょうか?」

数日後、ナラが少し暗い表情で私の所へやって来た。

この感じは2人で話したいのだろう。

私は人払いをしてナラと向かい合う。

「どうしたの?何だか思い詰めてるみたいだけど」
という私に、

「私の思い過ごしなら良いのですが…」
とナラは前置きをして話し始めた。

「実は最近、ジュリエッタ様の様子が…」

「ジュリエッタが?お父様の面倒を看てくれているのでしょう?」

「はい。それはもう、よく働いて下さっています。体を拭くのも着替えも全てジュリエッタ様が。
お陰で私達の出る幕はないほどです。
前侯爵様にいつもずっと話しかけていらっしゃって…いじらしい様子にこちらも胸が痛くなる時が」

ナラはジュリエッタのサポートとして、父に付いてくれている。
私が依頼したのだけれど、ジュリエッタの様子を私に報告する役目も与えていた。

「ナラがそういつも言ってくれていたから、私も安心していたの。ジュリエッタに何が?」
私は少し不安に思いながら訊ねた。

ジュリエッタはジュリエッタだ。
もしかするとこの王都に戻って来て、また彼女の悪い癖が顔を出してしまったのだろうか?

「ただ、最近ジュリエッタ様が2時間程お出かけになっているのは、御存知でしたか?」


「ええ。ジュリエッタが教会のボランティアに出掛けても良いかと許可を貰いに来たから、承諾したわ。
まさか…嘘なの?ちゃんと侍女と護衛を付けて行かせてるのだけど?」

「いえいえ!それは嘘ではありません。ジュリエッタ様はある教会の孤児院に通っておいでです。
そこでは、子ども達のお世話の手伝いを。それは間違いではありません」

そう聞いて私は少しホッとする。

「では…何が問題なの?」
と私が訊ねれば、

「私の思い違いであれば良いのですが…その教会に…ある男性がいらっしゃいまして…」

『男』と聞いて、私は嫌な予感に顔を顰めた。
ナラは私のその様子に少し困ったような表情になりながらも、

「男性はその孤児院出身の方の様で。その男性も手が空く時間があれば、子どもの面倒を見る為に孤児院に顔を出しているらしいのです。随分と寄付もされているようで」

私はそこまで聞いて、

「その話を信じるのなら、その男性におかしな所はないみたいね。ジュリエッタはその男性と仲良くしているのかしら?」

「はい。一緒に付いて行っている侍女の話では、男性の方が随分と熱心にジュリエッタ様とお話をされている様で」

「では、ジュリエッタも満更ではないと?」

ジュリエッタと言えば…惚れっぽい事で有名だ。私の中で。
嫌な予感しかしない。

「いえ…ジュリエッタ様はその男性のアプローチに少しお困りの様です。邪険にする事はありませんが、2人きりにならないよう気をつけていらっしゃいます」

あれ?それなら問題なくない?
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