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その48
しおりを挟む私は2人には明日から来て貰うようにお願いした。
先に殿下を上手いこと丸め込まなければ、また癇癪を起こすかもしれない。
殿下の地雷が何処にあるかわからないからだ。
私が喜びを噛み締めながら部屋へ戻っている途中、曲がり角を曲がった先に、クリス様が居るのが見えて、思わず角に隠れた。
いやいや、お礼を言うつもりだったのだから、隠れる必要はない。
最近の癖でつい隠れてしまったが、私がお礼を言う為にその角を曲がってクリス様の方へ行こうとした、その時、クリス様ともう1人の騎士が話している声に混じって「シビル…」という名前が聞こえて、ギクりとする。
私の話?
私は思わずまた、曲がり角に身を隠すと、2人の会話に耳を傾ける。
盗み聞きなんて、無作法なのは承知の上だが、気になるものは、気になる。
私は耳を澄ませた。
「あぁ。彼女はいずれ此処を辞めて貰う。もちろん、ゲルニカにも行かせない」
と言うクリス様の声が聞こえる。
彼女が誰を指すのか……確定はしてないが、さっきの名前と、『ゲルニカ』の地名から、私の事ではないかと推測出来た。
え?私、クビ?
もしかして、新しい侍女の2人は、私の後任?
私はてっきりこれから3人でミシェル殿下に仕えるのだと思っていた。新事実に驚愕する。
私…何かやらかしたんだろうか?
最近、クリス様を避けていたから、不敬と思われたとか?
私がクビになったら、実家への仕送りと、此処でのお給料はどうなるのだろう?
一応、借金はアルティア王国が払ってくれた筈だから、そこは心配しなくても良いよね?
もしかして、クビになったら、その分返せなんて言われないよね?
今の実家の状況がわからないけど、妹を学園に通わせて、良い縁談を取り付けるには、まだまだお金は必要な筈だ。
クビになるなら退職金って出るのかな?
それなら、そのお金を持ってアルティアに戻る?いや、ダメだ。もう王宮では働けない。
それ以上にお給料が良い働き口って…あるかな?
私はその場で1人、悶々と考え込んだ。
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