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その117
しおりを挟むきっと、私以外の2人も同じ様に思っている筈だ。
理解不能なのはお前の方だという目付きでクリス様を見ている。
その視線に気付いたクリス様は、
「な、何なんだ?皆のその目は」
とご不満そうだ。
「なぁ…クリスティアーノ。本当にローザリンデが泣いた理由をお前はわからないのか?」
と呆れた様にキャンベル医師が問うと、
「はぁ?お前にはローザリンデの涙の理由がわかると言うのか?」
と逆にクリス様は質問した。
「あぁ。ここでわかってないのは、多分お前ぐらいだよ。
ローザリンデはな…昔から…小さな時からお前の事が好きだったんだ。それこそ、お前が立太子する前からだ」
「はぁぁぁ?!何だそれは。
俺はあいつから困らせられた事しかないぞ?
お前の思い違いじゃないか?」
「好きな気持ちを素直に表す事ができなかったんだよ、ローザリンデは。
だから気を引きたくて、いつもお前にわがままを言ってたんだ」
「なんだそりゃ。子どもか!」
「だから、子どもの頃からだと言ってるだろ。確かに、好きな相手には良いアプローチではないが、ローザリンデも幼かったんだ。
そこは察してやれよ」
「お前はローザリンデからそれをハッキリと聞いた訳じゃないだろ?」
「確かに聞いた事はないが、普通、見てれば分かる。
小さな頃はよく3人で居たんだ。
ローザリンデがお前にだけよく突っかかっていってただろ?」
「あぁ。いつも面倒臭い奴だと思ってた。
あまり相手にされないお前を羨ましく思ってた程だ」
「僕は確かにその立ち位置がありがたかったけどさ。
ローザリンデの気持ちには気づいてたよ。
ローザリンデはいつもお前ばかり見ていた」
…ローザリンデ様は不器用な女の子だったのね。好きな人に意地悪しちゃうタイプの。
でも、全くクリス様には気持ちは伝わっていなかったみたいだわ。
「しかしだな。俺はあいつの気持ちなんか知らないし、俺もあいつを何とも思っていない。
それに、それを知った所で何も変わらん。
あいつは俺の幼い頃からの顔見知り。
それ以上でもそれ以下でもない」
「はぁ…。確かにお前がローザリンデの事を何とも思っていなかった事を僕はわかってる。
しかしだな…ローザリンデではそうではない。
現にローザリンデは婚約者すら決まってないだろう?お前の伴侶になる事を諦めていないからだと思うぞ。
家柄も良い。身分的にも問題ない。…となれば期待しても仕方ないさ。
そんなお前から、ドレスを選べと言われたら、そりゃあローザリンデは天にも昇る気持ちだったろうよ。
それを婚約者に贈る物だと言われたんだ。泣きたくもなるさ」
…そんなに長い間、ローザリンデ様はクリス様を想っていたのか…。
何処の馬の骨ともわからない女がノコノコやって来て、横からかっ拐うような真似をすれば、当然…面白くはないだろうな…。
私って、ローザリンデ様に恨まれているんじゃないかしら…そう思うとますます気が重くなった。
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