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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話
44.前世の物語と不幸令嬢(トリス視点)
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「嘘だ、嘘だ、嘘だ」
俺は『キヅタの塔』のルーのための部屋の中で、信じられない現実を目の前に慟哭した。俺だけのものであるルーを奇妙な月の国の男が連れ去ったのだ。
破壊された窓と足元に転がる愚かな者達の死骸を蹴飛ばしながら張り裂けそうなほど叫んだ。
「ルーをかえせぇぇええええええ」
しかし、誰もその声に返すものはない。
(こんなのはおかしい。ルーは明日完全に俺だけのルーになるはずだったのに……)
明日のためにルーに着せる特別な服も準備していたのに、宝石も、何もかも準備していたのに……。
何故こうなったのか、何故こんな事態になったのか荒れ狂うままに俺は手に持った刃物を振るう。そして、ルーが寝ていたベッドの上に座る。先ほどまでこの中にいたルーのぬくもりがまだ残っていた。
それだけではない。ルーの匂いも残っていた、あの狂おしい白百合のような香りだけが残っている。
「ははは、ここにいたのに、お姫様はルーはここにいたのに!!!!!!」
喉が裂けるほど叫んで泣きながら、無我夢中でベッドに刃を刺した、何度も何度もまるで誰かをめった刺しにでもするみたいに。
そうして刺していた時、違和感がある場所があった。気になってその場所を調べて一枚の手紙を見つけ出す。
「これは???」
(ここは俺とルーだけの聖域だ。それなのになんでこんなものがあるんだ?)
疑問に思いながら、ひらいたらそれはレミーナからルーに宛てた手紙だった。その内容を読んだ瞬間全てを理解した。
レミーナがルーを攫ったんだ
「あの女だ、元々ルーがあの女の婚約者だとは知っていた、けれどあの女がルーを俺から奪ったんだ、俺の俺だけのルーを、許さない。絶対に!!」
親類で妹のように思っていた。妻にしたのはルーとの仲を永遠に引き裂くためだった。孕ませてしまえばそれで全てはうまくいくと思っていたが、だめだ、そんな優しい手段ではだめだ、完全に排除しなければいけない。
(ルーを取り返すには殺すしかない。殺せばルーは壊れて堕ちて俺の手を取ってくれる、そうしたら永遠にここで今度こそふたりで過ごすんだ)
頭の中にルーが見せたことのないような甘い瞳を自身に向けている幻影が浮かぶ、この愛らしいルーを手に入れるにはレミーナは殺さなければいけない。
俺は海の国の騎士を呼ぶ、そしてふたつの命令をする。
ひとつは、ルーを探し出して、見つけ次第必ず保護すること、そして絶対に怪我などさせてはいけない。
もうひとつは……
「レミーナを見つけ次第……捕まえろ。抵抗した場合は生死は問わない」
俺は『キヅタの塔』のルーのための部屋の中で、信じられない現実を目の前に慟哭した。俺だけのものであるルーを奇妙な月の国の男が連れ去ったのだ。
破壊された窓と足元に転がる愚かな者達の死骸を蹴飛ばしながら張り裂けそうなほど叫んだ。
「ルーをかえせぇぇええええええ」
しかし、誰もその声に返すものはない。
(こんなのはおかしい。ルーは明日完全に俺だけのルーになるはずだったのに……)
明日のためにルーに着せる特別な服も準備していたのに、宝石も、何もかも準備していたのに……。
何故こうなったのか、何故こんな事態になったのか荒れ狂うままに俺は手に持った刃物を振るう。そして、ルーが寝ていたベッドの上に座る。先ほどまでこの中にいたルーのぬくもりがまだ残っていた。
それだけではない。ルーの匂いも残っていた、あの狂おしい白百合のような香りだけが残っている。
「ははは、ここにいたのに、お姫様はルーはここにいたのに!!!!!!」
喉が裂けるほど叫んで泣きながら、無我夢中でベッドに刃を刺した、何度も何度もまるで誰かをめった刺しにでもするみたいに。
そうして刺していた時、違和感がある場所があった。気になってその場所を調べて一枚の手紙を見つけ出す。
「これは???」
(ここは俺とルーだけの聖域だ。それなのになんでこんなものがあるんだ?)
疑問に思いながら、ひらいたらそれはレミーナからルーに宛てた手紙だった。その内容を読んだ瞬間全てを理解した。
レミーナがルーを攫ったんだ
「あの女だ、元々ルーがあの女の婚約者だとは知っていた、けれどあの女がルーを俺から奪ったんだ、俺の俺だけのルーを、許さない。絶対に!!」
親類で妹のように思っていた。妻にしたのはルーとの仲を永遠に引き裂くためだった。孕ませてしまえばそれで全てはうまくいくと思っていたが、だめだ、そんな優しい手段ではだめだ、完全に排除しなければいけない。
(ルーを取り返すには殺すしかない。殺せばルーは壊れて堕ちて俺の手を取ってくれる、そうしたら永遠にここで今度こそふたりで過ごすんだ)
頭の中にルーが見せたことのないような甘い瞳を自身に向けている幻影が浮かぶ、この愛らしいルーを手に入れるにはレミーナは殺さなければいけない。
俺は海の国の騎士を呼ぶ、そしてふたつの命令をする。
ひとつは、ルーを探し出して、見つけ次第必ず保護すること、そして絶対に怪我などさせてはいけない。
もうひとつは……
「レミーナを見つけ次第……捕まえろ。抵抗した場合は生死は問わない」
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