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リットン領

リットン領に到着

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僕は輪車の窓から、リットン領の中央街を興味深く眺めた。ロービンのウェリントン領が落ち着きのあるヨーロッパっぽい街並みだとすると、リットン領はもう少し明るい感じだ。

建物は明るいベージュ色の煉瓦で統一感があって、屋根が暗色なのでコントラストがスッキリしている。街の通りは白っぽい石畳で、お店の扉が赤や、紺など、濃い色に統一されているので、見るからにお洒落な街並みだ。


「伯爵、リットンはもしかして旅人に人気のある街なのですか?」

僕が隣に座っている伯爵にそう尋ねると、伯爵はにっこり笑って尋ねた。

「マモルはどうしてそう思うのかね?」

僕はお店の看板の図柄を見ながら説明した。

「あの店も、この店も、あちらにある店も、似たような商品のお店ですよね。同じ様な物を売ってる店が多いってことは、領民が買いに来るというより、ここに訪れた旅行客が買っていくせいじゃないのかなって思ったんです。多分、あれが名物なんじゃないですか?えーと、貝の宝石屋さん?」


リットン伯爵はさっきよりももっと満足げに微笑んで言った。

「さすが、私の愛し子は賢いね。そう、リットン領はハーバンの海で採れる貝や宝玉を加工して装飾品を作っているんだ。王都からも業者が買い付けに来るほど人気があるよ。」

僕は海の宝玉と聞いて、もしかして真珠の事かなと思った。僕が死にかけたあの海岸以外にも海が広がっているんだろう。僕はお屋敷に着いたらその装飾品を見せてもらう事にして、窓からリットンの街を眺めた。


段々お店が減っていき、立派な邸宅が増えていった。閑静な街並みに木々が増えてきたと思ったら目の前に立派な門が現れた。護衛が門番に声を掛けると軋む重い音がして、ゆっくり左右に門が開いていった。

広い輪車路の左右にはあちこちに大小の噴水があって、僕の目を楽しませた。曲がった路の先に突然明るい色の石材の城が目に飛び込んで来た。城の装飾は細かな細工がされていて瀟洒な雰囲気がした。


僕は瀟洒な城と、リットン伯爵とのイメージがどうにも合わなくて、少し笑ってしまった。口元に微笑みを浮かべたまま、僕は城の執事たちの迎えを受けた。

リットン伯爵の人柄がそうさせるのか、従者たちは皆温かな雰囲気だった事にホッとした僕は、伯爵を見上げてささやいた。

「伯爵、僕ここで過ごすのがとても楽しみになってきました。」

伯爵はにっこり微笑むと、僕の頭を撫でたんだ。

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