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ターゲットは僕?

皇太子side驚きの予測

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私は、いや、私たちはすっかり茫然自失だった様に思う。最初に我に返ったのは流石の王だった。

「話はわかった。とりあえず細かい話は後で聞こう。今日はもう遅い。明日も学園はあるだろう?明日皇太子の方から、アーサー卿へ歯止めを掛けておこう。

流石にアーサー卿も王族には逆らえまい。皇太子頼んだぞ。では人間についての細かな話については、来週にでもマモル本人から聞くとしよう。それはそれでどんな話が聞けるか楽しみだ。」


そう王が言ったのが合図だったのか、私とリチャードは伯爵と連れ立って王の前を下がった。

「伯爵、とりあえずマモルの身の安全を第一に考えることにしよう。…実際、伯爵はマモルがどんな目に合うと思っているのかい?」

伯爵はしばらく考え込んでいたが、暗い顔で思い切った様に言った。


「私が侯爵家に失礼を承知で言うとすると、彼の方は狡猾で残忍な面が有ります。ですから、マモルを合法的に、例えば結婚という形で手に入れようとするでしょう。

そして手に入れた後は、マモルの知っている事などばかりではなく、身体の構造、そして流れる血まで獣人と人間との違いを徹底的に調べる事でしょう。


行き過ぎた研究者というものは得てしてそういうものなのです。そうなってはマモルが死ぬのも、生きることも、彼の方の手のひら、胸の内ひとつです。

この国の法律では、伝承の相手をどんなに痛めつけても罪には問えません。伝承ですから。法律は対獣人のみの罪を裁くものです。

私は恐ろしいのです。あの可愛いマモルがもしそんな恐ろしい目に遭ったとしたら。ただでさえ、マモルは全く違う国へと放り込まれて、心細く恐ろしい思いで生きてきたのですから。」


私は伯爵の言う事など、何一つ想像していなかったので、思わずゾッとして眉を顰めた。私はアーサー卿の何を考えているのか分からない、あの仮面の様な顔を思い浮かべた。

隣ではリチャードが強張った顔でクソっと悪態をついていた。伯爵は黙りこくった私達を見つめると、言った。

「しかし、これは最悪のケースです。これほど酷いことにはならないと私も思ってはいますが、伝承が目の前に現れたら、人生を賭けた研究者がどんな気持ちになるのかは…。

ですからどうか、アーサー卿が暴走することのない様に、ご協力をよろしくお願いします。」

私達に頭を下げる伯爵を前に、私とリチャードは目を見合わせると頷き合った。
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