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透けるマモル
伯爵side王宮からの呼び出し
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「伯爵、すぐに大聖堂の方へいらして下さいとの王宮からの緊急の呼び出しです。」
緊張感を滲ませた私の従者が、書斎をノックすると返事を待たずに扉を開けた。私は従者の無作法を咎めもせずに、直ぐに上着を羽織って輪車まで足早に急いだ。
「いよいよかもしれん。もし、マモルがこちらに戻って来たのなら、まずここで養生させる手筈だ。準備は良いか?」
家令はやはり緊張と興奮を滲ませた顔を上げて頷いた。
「滞りなく準備は万全でございます、伯爵。マモル様が無事にこちらの世界へいらっしゃる事をお祈りしております。」
私は頷くと従者と共に輪車に乗り込むと、急ぎ王宮の敷地内にある大聖堂へと向かった。私は時々竜人化したロクシーに話を聞いていたし、近々ユニコーンが完全体になると予測はしていた。
しかし実際に今、目の前に時が迫っていると思うと、心の鼓動はいつになく騒いだ。誰にも言っていなかったけれど、マモルが完全な状態でこちらに戻ってこられるのかという疑念もあった。
マモルにとって故郷でもある向こうの世界で完全体になっているだろうマモルが、私たちの世界を選んでくれるのかという懸念もあった。少しの迷いがマモルにあったのなら、それはどんな結果になるのか考えるのも恐ろしかった。
最近のロクシーの緊張ぶりもその考えに拍車を掛けていた。最初の頃に自分の番を取り戻すために払ったロクシーの犠牲は、日に日に痩せていく姿を見るに、無理を押しているのは明白だったからだ。
ただ、皇太子が婚姻で隣国から得た魔法生成術によって、ロクシーに頼っていた魔力の増幅がマシになって、ロクシーの姿にも余裕を感じる様になった。
それと同時に大聖堂でユニコーンの実体化が加速していった。日を追うごとに、あのマモルに契約か、騎士達の命かと強引に契約を迫った話を思い出して、話を聞いていた私や実際に対峙したリチャードは、緊張を感じていたのも確かだ。
アレは我々の手に負えるものではないのは明らかで、マモルか、ロクシー頼みなのだから。そんな事を考えているうちに輪車は大聖堂側の車止めに到着した様だった。
輪車から降りると、輪車を引いて来たトカゲたちも落ち着かなげに興奮していて、空気の違いを感じているのかもしれなかった。私は迎えに来ていた騎士に促されて、急ぎ大聖堂へと向かった。
心なしか月あかりに照らされた大聖堂の塔付近で、滲む様な白い光が漏れ出して見えた。私はごくりと喉を動かすと、早る気持ちを感じながら、大聖堂の中へと足を踏み入れたのだった。
緊張感を滲ませた私の従者が、書斎をノックすると返事を待たずに扉を開けた。私は従者の無作法を咎めもせずに、直ぐに上着を羽織って輪車まで足早に急いだ。
「いよいよかもしれん。もし、マモルがこちらに戻って来たのなら、まずここで養生させる手筈だ。準備は良いか?」
家令はやはり緊張と興奮を滲ませた顔を上げて頷いた。
「滞りなく準備は万全でございます、伯爵。マモル様が無事にこちらの世界へいらっしゃる事をお祈りしております。」
私は頷くと従者と共に輪車に乗り込むと、急ぎ王宮の敷地内にある大聖堂へと向かった。私は時々竜人化したロクシーに話を聞いていたし、近々ユニコーンが完全体になると予測はしていた。
しかし実際に今、目の前に時が迫っていると思うと、心の鼓動はいつになく騒いだ。誰にも言っていなかったけれど、マモルが完全な状態でこちらに戻ってこられるのかという疑念もあった。
マモルにとって故郷でもある向こうの世界で完全体になっているだろうマモルが、私たちの世界を選んでくれるのかという懸念もあった。少しの迷いがマモルにあったのなら、それはどんな結果になるのか考えるのも恐ろしかった。
最近のロクシーの緊張ぶりもその考えに拍車を掛けていた。最初の頃に自分の番を取り戻すために払ったロクシーの犠牲は、日に日に痩せていく姿を見るに、無理を押しているのは明白だったからだ。
ただ、皇太子が婚姻で隣国から得た魔法生成術によって、ロクシーに頼っていた魔力の増幅がマシになって、ロクシーの姿にも余裕を感じる様になった。
それと同時に大聖堂でユニコーンの実体化が加速していった。日を追うごとに、あのマモルに契約か、騎士達の命かと強引に契約を迫った話を思い出して、話を聞いていた私や実際に対峙したリチャードは、緊張を感じていたのも確かだ。
アレは我々の手に負えるものではないのは明らかで、マモルか、ロクシー頼みなのだから。そんな事を考えているうちに輪車は大聖堂側の車止めに到着した様だった。
輪車から降りると、輪車を引いて来たトカゲたちも落ち着かなげに興奮していて、空気の違いを感じているのかもしれなかった。私は迎えに来ていた騎士に促されて、急ぎ大聖堂へと向かった。
心なしか月あかりに照らされた大聖堂の塔付近で、滲む様な白い光が漏れ出して見えた。私はごくりと喉を動かすと、早る気持ちを感じながら、大聖堂の中へと足を踏み入れたのだった。
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