本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

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第1章

王座の間

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 私は王座の前に強引に連れていかれ、頭を地面に押しつけられた。


「痛っ」

 私が思わず悲鳴をあげると、兵士はゴミを見るような目で私を睨みつける。


「黙れ。ブス」


 ふと視界に入ったのは、相変わらず王座で神のようにふんぞり返っている国王と、心配そうな顔で私を見つめるルドルフ殿下。

 そして――。


 不思議な衣装を着ている、見知らぬ少女。


「これはこれは」


 仰々しく嫌味ったらしい発言をしたのは、国王。

聖女様ではございませんか。一体どうされたのですか? ここまでわざわざお越しいただけますとは、夢にも思いませんで」


 ハハハハと、私を小馬鹿にする一同。


 いや、呼んで無理やり連れてこさせたのはあんたでしょうが。


 だが、その辺に関してツッコミを入れるタイミングは与えられなかった。


 国王は片手を振って、誰かを呼ぶ。

 すると、広間の端に待機していた1人の兵士が現れ、粗末な麻袋を私に向かって投げつけた。

「うわっ」


 私は驚いてそれを避ける。


 ガッシャーン。


 嫌な音を立てる麻袋。


 ――まさか。

 嫌な予感がする。


「なぜ受け止めなかったのですか?」

 と、袋を投げつけてきた兵士。

「聖女様のお荷物なのに」


 あー……。

 最悪だ。


 今のガッシャーンは、恐らく私の魔法具が粉砕した音だろう。


 小さくため息をついた。

「それで、一体なんのご用ですか?」

 私は努めて冷静に尋ねる。

「私をまるで罪人のように扱い、私物を壊し、一体どうしたいのですか?」


 私の放った「罪人」という言葉に、何が面白いのか爆笑する国王。

「ハハハハハッ。わかっておられるのなら、結構結構」

「は?」


 突然、国王から笑顔が消え失せ、私を鬼のような形相で睨みつける。

「お前は罪人だ。偽聖女め。さっさとこの国から出ていけ」

「は?」


 いやいやいや、怒涛の展開過ぎるんですが。


「なんという、陛下の素晴らしい温情なのでしょう」


 大臣のうちの1人が、歌でも歌うかのようにまどろっこしく気持ち悪い言い方をする。

「本来なら、この女を死刑にすべきところなのに。陛下はご慈悲をくださったというわけですね」

「そうだ。わしの慈悲に感謝すると良い。偽聖女」


 なるほど。

 どうやら、こいつら本当に私を追放したいらしい。


 私は1呼吸置き、少女の方を顎でしゃくる。

「それで、彼女は一体どなたなのですか?」


 少女は困惑した表情を見せる。

「お前のような罪人の質問に答える義務などない」

「いや、ですから。はっきりおっしゃってくださいませんか?」


 まるで私が悪女みたいにおっしゃっているが。

 要は、私が用済みになったということでしょ。


「彼女、聖女様なんでしょう?」

「……ふん。どうやら、見る目だけはあるようだな」


 どこまで経っても上から目線だ。


 国王陛下は気色悪い視線を「聖女」に向け、私に言う。

「その通りだ。この方は本物の聖女。彼女が来てくれたからには、お前のような偽物をこの城にのさばらせておくわけにはいかない――さあ、さっさとこの国から出ていけ!」


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