本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

文字の大きさ
15 / 42
第1章

妖精族

しおりを挟む
「よ、妖精……!」

「な、なんだそれは?」


 国王陛下は、ルドルフ殿下に尋ねる。

「ルドルフ、妖精族というのはなんだ? 人間じゃないのか?」

「魔族ですよ」

 ルドルフ殿下は律儀に答えた。

「神話の時代、人間族と魔族の間で争いが起こった。それを憂いた神は魔族と人間族の住む領域を2つに分け、交わらないようにした」

「そんなことは知っている!」


 国王は偉そうに言った。

「そうではなく、違う場所に住んでいるはずの魔族がなぜこの世界に存在するのだ!」

「すべての魔族が人間と交流を絶ったわけではありませんよ」

 と、殿下。

「彼女」

「フィオーネよ」

「失礼――フィオーネさんのご先祖である妖精族は、人間と交流して生きていく道を選んだんです」

「その妖精族が、なぜ人間のふりをして」


 私は面倒になって来たのでその疑問には答えず、

「じゃあ、給料分の財宝はちゃんと確保させてもらうわね」


 と、片手をあげて振り下ろす。


 どこからともなく、モクモクと真っ黒な分厚い雲が生まれ、この城を包み込んだ。

 嫌な雲だ。


 そう、雷を生み出しそうな。


「な、なんだあれは!」

「魔法か!?」

「でも、あんな大きな雲を一瞬で」

「あんなの不可能だ」


 と、騒ぐ群衆。

「だから、私は妖精族だって言ってんじゃん」


 私は指をパチンと鳴らす。


 すると――。


 ドゴォォォォオオオオオオオオ!


 大きな稲光とともに、鼓膜が破れそうなほど大きな音。


 天井から次々と雷が落ち、王座の間に無数の穴が開く。


「きゃぁぁぁぁああああああああああ!」


 人々の悲鳴が不協和音と化した。


 まさに、阿鼻叫喚。

「さて、宝物庫はどこかなあ」


 私は床に空いた穴を覗き込む。


 向こう側から、怯えた人間どもの顔が見えて面白かった。


 宝物庫はたいていどの国でも、王座の間の近くにある。

 おそらく、有事の際に守るべきものが一緒くたになっていた方が、兵士たちも楽なのだろう。


「あっ」

 私は空けた1つの穴を凝視する。

「見ぃつけたあ」


 その穴の向こう側には、たくさんの宝箱が設置されていた。


 ビンゴだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...